ウィーンに出張に行っていたアルベルトがわたしにお土産を買ってきた。アルベルトは相変わらずわたしに甘くあまやかしまくっており、私達の息子が生まれても、相変わらずだ。私のことを未だにひよこちゃんと呼ぶ。もちろん自分そっくりな息子にもメロメロだけど、アルベルトの一番の宝物は相変わらずわたしで１日一回は必ずわたしにそう言ってくれる。

フレッドは今までと変わらず親友で同士で時にお兄ちゃんでお母さんみたいな時もあるけど
素晴らしく有能な上司でもあり、それだけじゃなくてここまで来るのにものすごく大変でさまざまな出来事にも文句も一切言わなくてなのにいつも私を気遣ってくれ、一緒に乗り越えてきたかけがえのない大切なパートナーだ。

そしてバレンタインが近い。事あるごとに2人から贈り物をもらっているのでほしいなーと思うものが頭に浮かばない。

ひよこちゃんは今年のバレンタインデーに何かしたいこととか欲しいものはないの？
と朝食の席で聞かれた。

ジョッシュの朝の支度をしてくれていたフレッドママも席についた。

そうだおまえ欲しいものはないのか？

特に…

は？

え？

しいていうなら化粧品もうすぐなくなるから新しいのがほしいなーとかそのくらい？

他には？

うちのコの何か

ジョッシュの洋服？それおまえのじゃないだろ？

あー、ないわけじゃないけど…

なに？言ってみて？

推しのプレミア公開舞台挨拶に当たりたい。
あと推しのワールドツアーに当たりたい。
できたら推しの広報になりたい。もっと出世させたい…とか？

…

…

なんで黙るのよ？

推し…推しね…

推しかよ！！

なんか知らんがうちの旦那衆が憮然としてるのは気の所為だろうか？

ひよこちゃんは推しとどうにかなりたいの？

アルベルトはやや緊張気味にわたしに尋ねてきた

推しはあくまで推しで別に嫁にしてくれとか付き合いたいなんていってない

…ぶ、ははははははっ！！

フレッドが笑い出した

なによー。だってそうじゃん。
わたしにはこんなにグッドルッキングガイの旦那さんたちがいるんだからそんなのあるわけないじゃん

…

ちょ、ほんとだってば！！

はいはい。推しの広報ね、ま、それなら
MKHDの仕事になるしな？

でしょっ？わたしはじめて推しをみたとき思ったの！これ絶対出世するっ！！て

ほー。そうなんだ。

うん。だからわたし！推しが端役の頃からずっと追っかけてたのよ？まだ一行のセリフしかないときから見てたんだからっ！！

へえー

何だが含み笑いをしながら紅茶を飲んでるフレッドとまだ釈然としてません的雰囲気なアルベルト。

アルベルト、推しは推しだ。あれだ。目をつけて育てるゲームだと思え。どうせ俺達のが圧倒的優位な立場だ。だろ？

もちろんよっっっ！2人には頭が上がらないわ。

アルベルト。わたしとご飯たべにいこ？

2人で？

2人で。バレンタインデーだし？ね？
空いてる？なんか予定入ったりしてない？

大丈夫。空いてなくても空けるから。

ああそうしろ。チビの面倒はオレが見るから2人で食事にでも行ってこいよ。

いいの？

ああ。

あ、でもおれ、おまえの誕生日の前の日に出かけたいからその日空けといて？

そなの？

ああ。

いいよな？

もちろんさ。

それから私達は慌ただしく出勤の支度をして家を出た。今日はジョッシュはパパのアルベルトと一緒に仕事場に行くのだ。

じゃあジョッシュをお願いね？

わたしからジョッシュを受け取り抱っこしたアルベルトはもうめっちゃくちゃにかっこよかった。

子供抱っこしてるのになんでそんなバチバチに決まってるの？

ひよこちゃん。嬉しいこといってくれるね。
さあ、ジョッシュ、ママにバイバイしようね。

ジョッシュ、パパと一緒でよかたねー。
ジョッシュはパパが大好きなのでそれはもうごきげんだった。

なら俺達も行くか。
うん

三人暮らしが4人になって生活は慌ただしいけど家がすごく居心地よくなった。

車の中で私達2人の怒涛のおしゃべりタイムが始まる。

て、バレンタインデーて女子が男子になんかするんじゃなかったっけ？

おまえの母国ならそうだろ、
俺達の国なら逆だ

そっか

奥さんから俺達になんかしてくれても全然いいんだぞ？

なにか欲しいものとかしたいこととかあるの？そこのグッドルッキングガイは？

グッドルッキングガイwww
わたしの言葉に吹き出している

あー、そうだな。欲しいものはあるけどまだ先かな。

ふうん

あ、でもしたいことはあるぞ？

なに？

聞きたい？

一応。朝から聞いていい話なら

ははは

あたりでしょ？

ふっ

ああ、そうだ、誕生日前に出かけたいって
どっか行きたいとこあるの？

ある。

教えてもらえるやつ？

秘密。

やっぱりね（笑）

…オレ女の子がいいなー

ん？

いや、独り言。