無香料

暖かい日差しと冷たい風のコントラストが、浮ついた気持ちへと手を引く。レースカーテンが揺れる窓から見上げる空は青一色で眩しい。少しだけ目を細めた。

眠っている彼は無防備そのもので、つい触れたくなって手を伸ばす。顔を近づけて首にキスをしてみたけれど、傷は残さなかった。手のひらから指を一本持ち上げると簡単に動かせるのに、わたしが力を抜くと程なくして重力に吸い込まれていく。彼も例外なくそれには従順らしい。

命を吐き出すような柔らかい寝息に耳打ちして、そのついでに唇で耳たぶに触れた。鈍感な彼はきっと世の中の些細な配慮に気付くこともないのだろう。わたしはそんな配慮、するつもりもないんだけど。

「ねえ、ラブホテルのボディーソープがどうして無香料なのか、知ってる?」





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