400字映画感想「草の響き」

初出: zoomトークショー「相田冬二、映画を語る」に参加した際、私が提出した課題感想文です。 2021/10/22

「草の響き」は、恐ろしく残酷なほど精緻だ。

本作には心を病んだ当事者以外に、それを取り巻く人物も登場し、精緻に描かれる。
だから私は、手放しに本作を素晴らしいとらいえない。
寧ろ「恐ろしい」。

同じ苦しみを持つ鑑賞者が本作によって救われてほしいと、東出はインタビューや舞台挨拶で繰り返し語った。

救われてほしいと言われても、本作は決して「癒やし系」ではない。そして、「理想論」「綺麗事」が描かれているわけでもない。

危ういほどの生々しさを痛感する作品だ。
自分の半生をあらゆる角度から指摘されたようで、私は震えた。

実体験が作中で「再現」され、追体験が、一種の寄り添いのようにも感じ取られた。


舞台挨拶で東出は、そのラストを「肯定する」と言った。
自分が辛い経験をした人々や、周りの人が辛い思いをした人。支えて苦しんだ人、支えきれずに失った人。

誰もがその「肯定」に、意味を見出してほしいとおもう作品だった。


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