地域のカブトムシを絶滅させてしまった話

私は田舎の生まれで、夏はよく虫取りをしていた。

山に行けば木の蜜(樹液)を吸うカブトムシをたくさん捕まえられた。

自分の家の畑にいけば規格外ゆえに収穫されなかったスイカが腐り、そのスイカにカブトムシがたくさん群がっていた。

そんなこんなで保育園~小学校4年生くらいの頃は毎年大量のカブトムシを捕まえていた。その数は尋常ではなく、バケツ満杯とかが普通だった。しかも近所の農家のおっちゃんや私の祖父母も、私が喜ぶと思ってこれまた大量捕獲して私のもとに持ってくるのであった。

私はメスのカブトムシは好きでなく、オスだけ捕まえて/もらってメスはリリースしていた。私はメダロットもカブト派であった。ちなみにうちの地域ではクワガタムシは全然いなかった。

私の家にはどっかからもらってきた虫かご(おそらく私より上の世代の子供達が使っていたものをもらったのだろう)がたくさんあり、そこで大量飼育をしていた。メスもいたら繁殖させて累代飼育できたのに、と思うがガキだった私はただオスのカブトムシを集めることだけに執着していた。餌は昆虫ゼリーや果物のクズ。昆虫ゼリーは虫の体にはいいはずだが、100円ショップで安売りしてたやつなのでよくわからない。果物のクズはカブトムシによろしくないと聞く。でもガキなのでそのへんもよくわかってなかった。

私の数少ない友人たちもカブトムシ採集にハマっていて、彼らもたくさんのカブトムシを飼っていたように覚えている。彼らもオスのカブトムシだけを集めていた記憶がある。

そんなふうに毎夏過ごしていたのだが、ある夏、カブトムシが一切身の回りで取れなくなった。オスだけでなくメスもである。大人たちは異常気象でやられたのだろうと言っていた。私はそうかぁ~(よくわかってない)と思って思考停止して特に考えてなかった。

ところがである。最近読んだ本に地域絶滅という単語が載っていた。生き物たちは同種であっても遺伝子的な系統が若干違うのであり、遺伝的多様性を保護しなければならない、みたいな文脈だった。各地域で豊かな多様性を保つためにペットショップで買った魚を、その川に同種の魚がいるからといって放してはならない、みたいなものだと理解した。そして、その地域だけで絶滅する(その地域の遺伝的系統が消失する)のは地域絶滅であり、多様性保護的にいけない、のような感じであった(私は馬鹿なので解釈が間違ってたらすみません)。

私は思い当たった。カブトムシは異常気象でいなくなったのではなく、我々がオスばかり大量に採った結果、メスが交尾相手がいなくなって我が地域のカブトムシは地域絶滅してしまったのではないか、と。

遺伝的多様性的に非常にまずいことをしてしまったのである。カブトムシたちに大変申し訳無い。

夏になると近所のホームセンターでカブトムシが売っている。だいたいペアだ。このカブトムシたちを見るたびに、過去の愚行を思い出して恥ずかしい気持ちになる。すみません…。




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