「読書会」

 
長いあいだ
本は独りで読むものと思っていた

話には聞いていた
「読書会」に誘われ
参加してみた
一つは女性が中心
公設の小さな部屋で
僅かな会場利用料も
都度の人数で割り勘
提案し合って本を決め
翌月感想を持ち寄る
平日午後のティータイム
時に手製の菓子も出て
本中心ながら
「井戸端」に花も咲く
長閑でつましく実直な
読み手の経験値は
読解に想外の視点や
深みをもたらした

一方は若者を中心に
某デニーズで
ドリンクバー代込みの会費制
課題図書もなければ
朗読もない
ハンドルネームでしか知らない
本繋がりの読み巧者、読書好きが
面白かった本を持ち寄り
テーブル中央に積む様は
本の市場のおもむき
話を聞き、手に取り
何冊どれを借りていくか
付箋の星印付きは返却も不要だ
金曜夜の独特の賑わいの店内で
閑けさが熱を帯び
哄笑が弾けていく

会に牽かれたのは
読み取り方の差異にもまして
自身では手に取りもしない
聞いたことも
見たことさえなかった作品に
読む契機を与えて貰えたこと
本への想いとともに
胸の裡、磨滅して萎み
窪みさえ消えかけのボールが
高く運ばれて青空に包まれる

長いあいだ
本は独りで読むものとばかり思っていた

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