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寿司日乗492〜498

2024年4月1日(月)晴れ

朝、起きてラジオをつける。用事で外出すると近所の桜が咲いていた。去年末まで所用で13年間よく通っていた渋谷の桜丘辺りを歩くたびに春を感じていたけれど、それも今年からはなくなったと思うと少し寂しい。同じく13年間渋谷のあの一帯の変容する様を見てきた。都市開発ばかりしている東京には決まった顔がないですね。まぁ土地や街、都市の風景はそれぞれ思い出の中にあるものなんだろう。2011年から2023年の鶯谷町へ向かう道順沿いの全てが私にとっての渋谷の風景。

用事を済ませて最寄駅にあるカレー屋で昼飯。
隣に座る大学生集団の中に「今の時代は…」を執拗に使う男の子がひとり。彼が観ている今と私が見ている今にある隔たりを感じながら完食。同じ時代を生きていたとて同じ景色を見ているわけではないのだと感じるも、彼らの会話には未来へ対する明るさもなかった。大人、マジでしっかりしなければと思う。「少年よ、大志を抱け。いや、抱けるような世の中にしていかないと…」独りボヤき帰宅、夜まで作業。
開けていた窓から隣のお宅の晩飯支度途中のいい匂い。窓を閉める時、外塀にいた猫も匂いを嗅いでいた。

2024年4月2日(火) 晴れ

ガザ地区、包囲されている人達に食料を届ける活動をしていた外国人救援チームをイスラエル占領軍が殺害したというニュースを見た。また医療施設は組織的に破壊され、悲惨な状況を目にする度にハラワタが煮え繰り返る。非人道的な状況を見るたび祖父や当時のお爺お婆達に語ってもらった戦争体験を思い出し、人とはなしあうなど。日本は石油・天然ガスの供給を中東地域に依存しているわけで経済・生活という側面から見ても他人事ではない。流通が滞らないことは当たり前ではない。ご飯が毎日食べられることも。
いつもと変わりなく暮らしている世界の情勢より目の前の日々、自分の生活で手一杯の人も、私も含め市井の人にとっても戦争は突然始まるように見えのかもしれないがそんなことはない。知らない間に小さなほころびが大きな亀裂を生み、人間が恐ろしい生き物に変容する。目を背け続けた結果突然足をとられて慌てても既に遅い。今こうしている間にも国民が明日も安全に暮らしていけるような情勢ではない明るくない。
終日自身のことをやりながらも深く陰々滅々とした日。

2024年4月3日(水) 雨

暗い気持ちで起き、それでも腹は減っているので飯をたべ、海外ドラマを観たあとは終日作業。
23時前、どうしても皿うどんが食べたくなり作る。缶ビールを1本飲んで初めて1日の句点を打てます。「あ、今日もお疲れ様です」独り言。 

2024年4月4日(木)曇り

朝、起きて掃除など済ませて、6日振り風呂に入る。家から出ないと風呂が遠のく。が、洗顔も歯磨きも手拭いで身体を拭くのは日々のことなのに、なぜ風呂が嫌なのか。風呂上がりのあのさっぱりとした気分の良さを知っているのに。
友人との約束があり新宿。高島屋の地下で弁当を吟味し、歩いて新宿御苑まで。久しぶりに外へ連れ出してくれた友人に感謝しながら入場行列に並ぶ。10年以上前はフラと行き、のんびりできた御苑も入場料は200円から徐々に値上がり500円になり、飲酒も禁止になっていた。まぁ、そんなもんだろう。
芝に座り、弁当を食べ互いの制作状況など話していると「これ、ミシオちゃんに」友人から手渡されたのはエリザベス。エリザベスとは向田邦子が妹に頼み編んでもらっていた変わった形のニットのこと。「これ着てさ、いい文章書いて、曲作ってね」何でもない日、突然の贈り物にワタクシ号泣。友人が時間を使いエリザベスを編んでくれた事を思い、また涙。いい仕事をしよう。誰が為でなく自身の為。気持ちを強くする。

そのまま新宿馴染みの店に移動し友人と早めの晩酌。馴染みの皆様も交え安らぐひととき。

2024年4月5日(金) 晴れ

正午前に起きる。洗濯機を回している間に昼飯の準備。のち、7日大阪でのトークイベント兼ソロライブなのでリハ。バンド埋火で演奏していた曲をさらう度に「よくこんな曲作ったな……」と感嘆するところもある。30歳あたりまでは歌詞と旋律を同時に作っていた。なぜ、それができたのだろう。
「バンド」だったからだろうと思う。サウンドが完成していく過程含め。

夜、アーバン。今夜は満員御礼。久しぶりの方からなんと!という方まで皆様ご来店ありがとうございました。店への行きしな、スピッツのジュテームが頭の中で流れていたので開店早々にうたう。なんとも、いいうた。

2024年4月6日(土) 晴れ

大阪へ。
新幹線に乗車する際、楽しみなのは弁当。
弁当をじっくり時間をかけ選ぶ。だいたい買うものは決まっているが、やはり幕の内弁当は東と西で味も内容も違うのでとりわけ楽しみ。
今回は豚カツ弁当。私は貧乏性なのでメインの豚カツよりも付け合わせの細々したものが実は1番好きでして、キャベツの酢漬けなんか入っていると「ワォ!」と小声で言います。嬉しい。

新大阪着。友人の個展に顔を出し、久々に会う友人知人と談笑のち天下茶屋へ。大変世話になった方の祝いごと。大阪のスンバラシイ音楽家の方々とも久しぶりに会うなど。
数年しか住んでいなかったが大阪で出会った人、出来事、すべて私の財産であり、大阪で暮らした20代後半がなければ多分、今の私もないと年々強く思うようになっている。何処で暮らそうと、誰と出会おうと、たいして変わらないと思っていた時もあるがそんなことはない。どちらもが人生を変えるくらい、大切な出来事。
店を出ると小雨。難波まで電車に乗りあとはホテルまで歩く。知っている道や店がいろんな街にあることにふと嬉しくなる。

2024年4月7日(日)晴れ

大阪2日目。大阪FOLK old book storeトークイベント&ライブ、リハ前まで北浜のホテルにて少し作業などしつつゆっくりしながら安住紳一郎のラジオアーカイブをひたすら聴く昼。

夜、トークイベントとライブ。普段他人が何を考え想い、項垂れたり喜んだりするのか、しているのか。世の中のげんなりしてしまう出来事や怒り、悲しみなど、話すうちに私と他者は本当に大差なく、ひととはなすことや聞くことが年々自分にとって大切なことのひとつになっている。興味の矛先が広がっていてその反動が今やるべきこと、やりたいたことに如実に影響している。
ご来場頂いた皆様、ありがとうございました。

終演後、皆で晩酌。
途中、友人から連絡あり後ろの方でワイワイしている喧騒の流れてから「おいでや〜!みしおさ〜ん!」など、野次も含めて聞こえてくる。
みんな、色々あるけどちゃんと生きとんねん。
(急に関西弁)

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