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5/30 残酷だけど、社長は無理・・・

個人による事業継承が活況のようである。

中小企業庁のまとめによれば、「後継者がいない」と答えた中小企業の経営者は約127万社。そして東京商工リサーチによれば、日本では年間4万社もの中小企業が廃業しているという。廃業によるGDP損失は22兆円とも言われるらしい。

人生100年時代、会社に縛られず自分なりの生き方・働き方を選択する上で、自営業あるいは起業を選択するのは理解できる。

今回NHK「おはよう日本」で取り上げられていたのは事業承継の正負両側面だった。NHKらしい偏りの無い報道というやつだろう。

成功として取り上げられていたのは、
大手製薬会社を辞めて、調剤薬局を個人で買収した人(31歳男性)。
会社員時代のネットワークを使って、介護施設に対する薬の配達事業を始めたのだとか。それで売り上げは事業継承前よりも3倍になったとのこと。

一方で、警鐘を鳴らす意味で取り上げられたのはその手軽さゆえのリスクである。

紹介されていたのは、専門商社を辞めて金属加工メーカーを個人買収しようとした人(30代男性)。

「長年の夢だった経営に携われるので楽しみ」と語っていた男性。会社を辞めていたにも関わらず、直前になって銀行からの融資を断られたらしい。
理由は、銀行側が求めていたのは業績が低迷する会社を再建できる手腕であって、
買収を持ちかけた当人にはその力が無いと判断されたためのようである。
ご本人は、上手くいかないなんて全く思っていなかったという風に語っていた。
会社で培った専門知識が活かせると考えていたと。

何が失敗だったのだろう?

そもそも「サラリーマンは300万で会社を買いなさい」の著者・三戸政和氏はこう言っている。

業界大手企業でマネジメント経験があるなら、会社を買って社長になったほうが遥かにいい。

業界大手企業で、マネジメント経験がある人。さて、どれくらいいるだろうか?

次にホリエモンこと堀江貴史氏は三戸氏の著書に推薦文を書いているが、こう言っている。

キャリアを活かして社長として活躍し、最後は売り抜ける。

後継者がいなくて売りに出した経営者、その人には経営手腕が足りなかったのだろうか?その人よりも、サラリーマンとして働いていた人は経営能力が高いのだろうか?

サラリーマンと経営者の間にある超えられない壁

私もそうなのかもしれないけれど、仕事で結果を出したらそれは自分の能力が高いから、自分は凄いからと、どこか過信してしまうのではないだろうか?会社の看板があったから、優秀なスタッフに恵まれたから、運が良かったから。そういった要因に冷静に目を向けられなくなってしまうのだろうか。

サムネイルにしたのは、番組で取り上げられていた金属加工メーカーを買収しようとした男性の本棚である。NHKもこのカットを差し込むあたり、何か嫌らしい意図を感じてしまう。

私がそう思うのは、なんとなく、本当になんとなくだけども、私が大学生の頃の意識高い系の友人の本棚を思い出すから。ベンチャー企業や経営者という存在に漠然とした憧れをもち、事業を通じて何かを成し遂げたいというよりも経営者・社長になることが目的になってしまっていた友人。世の中にあるビジネス書・自己啓発書を読めば何かが変わるかも、レベルアップするかもと期待した友人。しかし、それが叶わず就職していった友人。

あくまで、私が勝手に友人と重ねたイメージです。
しかし、確実に言えるのはビジネス書を読んだ先に経営者の自分はいないということ。

俺は何者かに成れるはず!と思って大学生活を過ごして就職活動をしてみたけれど、世の中思うようにはいかなかった。しかし、社会人としてそれなりに働いてきて準備は整ったはず。世の中的にも追い風が吹いている。今なら、あの時出来なかった経営者になるという目的を達成できるかもしれない。そう思う同世代は多いのかもしれない。

世の中は勝手なことを言う。勝手なイメージも抱かせる。

けれど、自分はそこまで大きく変わらない。年月が過ぎ、その間懸命に働いていたからって、突然自分にスポットライトが当たったかのようにレベルアップはしていないのである。

残酷だよな。

でも、きっとチャレンジした分だけ大きくはなっているだろう。

それくらいの救いはあってもいい。


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