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詩 ウォッチ・ウォッチャー

時計の箱を買いまして
時計をしまう箱でして
天板は透明なガラス その他は黒色
また無駄なカネを使ったかといわれれば
これは実益と趣味 両方に沿ったもの
コレクションの腕時計がすっきりと
五本ばかり収めてあるような この箱です
たいしたコレクションではございません
ほとんどは安物の いや何を安物というかにもよりますが
やれオメガ やれロレックスなど
そんなものではないということで
いちばん高いものは あのときプレゼントされた
お洒落なブランドの一本でありましょう
箱の上から ガラス越しに眺めます
大切な順に並んでおります
いちばん端の 大切なのがプレゼント
ああ 最近はつけてないなあと
つけてあげないと いかんなあと思いますので
今日はそいつをつけようと
箱のふたを開けてみたらば
他の時計たちが騒ぐのです
ぼくをつけて あたしをつけてと叫びますから
やかましいわいボケェ
今日つけるもんは決まっとるけえのう
心を鬼にしてそのように叱りつけ
いちばん大切な一本をとり出して 腕につけ
思い出に浸るようにして じいっと見て
秒針がこちこち ぐるぐる回るところを
なんとはなしに見ているうちに
分針 時針も ぐるぐるとすばやく回り出し
時空の理論物理学的公式が崩壊したらしく
この世界も ここまできましたか
どうやら宇宙は終わるらしいので
終わってるのはお前じゃあ というつっこみは抜きで
宇宙・完
などと供述しているとのことです



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