自分が欲しいものだけ創る!(読書メモ)

noteへの投稿は最近ご無沙汰でしたが、備忘録として書かずにはいられないレベルの良書でした。

マーケティングに対する考え方が、今まで読んだ書籍のなかで最もしっくりきました。

正直なところ、マーケティングやブランディングは、表面的な理解で止まっていました。本格的に勉強しようと何度も試みたものの、専門的な理論や用語がどうしても小難しく聞こえてしまい、感覚派で支配された自分の脳内がその都度拒否していました(笑)

なので、本書に興味を持ったきっかけも、理論ではなく、事業の多角化に成功したスマイルズという企業でした。

ところが「はじめに」を数ページ読み進めると、見方が一変しました。マーケ関連の書籍を読んで引っかかってた点を、著者が痛快にぶった切ってたからです。

今の時代の価値は直感や感性から出発した方が本質を捉える可能性が高く、そうやって生み出した荒削りのアイデアをマーケティングや分析的な手法で洗練させていくのが賢明だと考えています。
知らない1,000人の誰かを理解することより、自分自身や近しい誰かを知ることの方が圧倒的に容易いはず。言い換えるならば、自分自身の欲求や行動の発意を理解せずして、知らない誰かの感情の機微を捉えるのは不可能に近いのではないかと思うわけです。

もう、この時点で元は取れた気分でしたが、本文中も気づき満載だったため、印象に残った内容をピックアップします。

ヒット商品は思いつきから

「売れるかどうか」より「欲しいかどうか」。シンプルですが本質的。

大きなインパクトを持ちうるものを作ってしまうのは、それがマーケティング的発想からではなく、思いつきから始まっている
「自分が欲しいものを創ろう」という発意がそこにあるかどうか。その違いがイノベーションを生み出せる企業とそうでない企業を分かつような気がします。

自分を基点にする

過去に上司から「お客さんの気持ちで考えろ!」と指摘されるたびに、「そんな簡単に他人の気持ちがわかるか!」と心の中で反論していた自分にとって、「N=1」理論は腹落ちしました。

人が生活を営むということは、その日の気分や体調、たまたまあった出来事などと折り合いを付けていくことでもあるので、なりゆきや思いつきで動くという不合理性こそが合理につながる。すなわち、顧客の心理の分析や行動シナリオの設定は不可能ではないにせよ、極めて困難であると言わざるをえないと考えています。
マーケティング以外の方法論で消費者の欲求や心の動き、商品選択の着眼点、購買のポイントといったものを精緻に捉えるためにできること。その足掛かりになるのが、他ならぬ自分自身だと考えています。
僕たちのどの事業でも、基点にあるのは「N=1」という考え方。自分や確実に存在している誰かを出発点として、「自分がお客様だとしたら、こういう商品がほしい、こういうサービスがあるとうれしい」という一生活者としての視点を重視するということです。

「課題」の設定が最重要

問題と課題の混在や解決策ありきの議論はまだまだ多いので、「課題=問題解決のアプローチ」という共通認識を作ることからですね。

スマイルズが最も重視しているのが「課題」の設定です。どんな企画であれ事業であれ、とにかく課題の設定が肝。それは問題の解決策を導くコンセプトともなるもので、課題の設定が斬新であれば、解決策もユニークなものになるからです。

ブランドは人

ブランドを人に見立て、友人のような共感的関係を築く考え方は、すごくわかりやすかったです。広く浅くより、狭く深く。

論理的関係は誰しもが等しく求める価値の一般性を備えやすいので、市場としてはシェアを大きく獲得できる傾向があります。しかしながら、顧客との信頼関係に論理性がある分、絶えずその行動の正しさや合理性を求められるという側面もあります。その期待値を裏切ったときの顧客の離脱可能性も高まります。
情緒的関係を構築しているブランドはニッチャーになりやすいものの、一方で何かあった時のリスク耐性は高いケースが多いように思われます。
「なんとなく好きだから」という結びつきは、裏を返せば嫌いになる理由も生まれにくい。期待値が不明確であればこそ、離れる理由にもならないということですね。
ブランドは人であると考えているので、コピーライティングも顧客との数多くの会話の中での一言だと考えています。すなわち、一度のコピーですべてのお客様に対してメッセージを届けようとはせず、その中の〝誰か〟にだけは届くものにしようと考えています。 

まとめ

改めて感覚派の自分にとって、マーケティングで引っかかってた点が解釈される一冊でした。

また同時に、自分が基点だからこそ、感性を磨き続ける必要性も痛感しました。普段の当たり前を疑うことや、直感を深堀することで、自分自身のアンテナを研ぎ澄ますイメージです。

本書は事例も多く読みやすい内容のため、マーケティングを学び始めるにはおすすめです。

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