もものかんづめを読んでみた

自室の本棚を整理していて見つかった本、それはちびまる子ちゃんの作者であるさくらももこ著の『もものかんづめ』だった。かつて中学校の図書館で適当に借りてきて、あまりの面白さに母が即座に購入してしまった名作ならぬ迷作である。

もものかんづめとは、さくらももこ氏によるエッセイである。エッセイだから、ただの感動や日常的な物だと思って読み始めると不思議と自然な笑いが込み上げてくるだろう。当時流行っていたキノの旅や死神のバラットなどのライトノベルを読んでいた私も、初めてのエッセイに笑いが止まらなかった。何故笑えるのか?それは文章の面白さもあるが、題材が他に類を見ない点がある。最初の話は、大抵は無難な事や印象的なシーンを話し始めるだろうが、もものかんづめは水虫の話からスタートする。作者は16歳の夏に水虫を見つけて、治すことに必死になって治癒する為に自己研究を行うのだ。16歳の夏と言えば、受験が終わった青春まっさかりで恋愛やお祭りやバイトなどの出来事を書くのだろうに、さくらももこは水虫のことをつらつらと書いているのだ。確かに水虫は治りにくいし、作者が16歳の頃である1980年代では今みたいに水虫用の市販薬も数少なかっただろう。しかし、初めてのエッセイの最初の話題を16歳の夏の思い出として水虫になったことを書く人など後にも先にもこの作品しかないだろう。他にも食品売り場でのバイトやOL時代の忘年会の話など、日常を面白おかしく書かれている。一言で言えば、まる子ちゃんやコジコジのような日常のふんわりとしつつもブラックな部分を描くさくらももこワールドの原液が『もものかんずめ』なのだ。

疲れた時や笑いたい時、下らない話を読みたい時でも構わない。それほど、もものかんずめは笑いで元気を与えてくれる作品なので、ぜひ読んでほしい。

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