『たこやき』 熊谷真菜・著
白ワインを片手に、たこ焼きを焼く。昔二人暮らしだった頃、彼が帰ってこない夜ひとり飯の定番はたこ焼きだった。再び一人暮らしになった今、好きなときに好きなだけたこ焼きが焼けるこの生活を愛している。
大阪出身の母は、たこ焼きを食事として認知していたが、たこ焼き機が食卓に並べられる頻度は1年に1度あるかないかで、大阪の一般的家庭と比べて少ない方だったかもしれない。
躾に厳しく、普段からぷりぷり怒っていることが多かった母が食卓にたこ焼き機を並べると、献立の決定権を持たなかった少女には