見出し画像

ジェイ・ボスロイドと札幌の4年半の軌跡 | Big respect Jay

朝ツイッターを開くと同時に、衝撃を受けた。
”ジェイ・ボスロイド選手と今シーズンで契約を満了”
正直、そろそろなのではないかとは思っていた。しかし、実際に公式にクラブから発表されると、ショックは大きかった。

昇格1年目の2017年、開幕から18試合を終えて、4勝4分10敗と厳しい状況に立たされていた札幌。そんな厳しい状況の中、ある選手の加入が発表された。その選手こそ、ジェイ・ボスロイドであった。幼少期をイングランドの名門アーセナルで過ごし、イングランド、イタリア、ウェールズ、タイのリーグを渡り歩いた、イングランド代表経験もあるスーパーな選手だ。

札幌加入の前年まではジュビロ磐田でプレーしており、2015~2016年までの2年間所属。いわたがJ2だった2015年は20得点を挙げ、得点王にも輝いていた。翌年J1でも14得点挙げており、Jリーグでの実績も十分。残留に向けたキーマンとして、活躍が渇望された。

加入発表は7月1日に行われたが、登録の都合上、初出場は7月29日のホーム浦和戦。3万人以上のサポーターがドームに駆けつけ行われた一戦は前半のうちに札幌が先制。浦和は退場や、交代カードがない状態での選手の負傷(ミシャ伝説の3枚替え)などがあり、後半開始すぐに9人に。そんな中、後半20分頃にキング・ジェイは赤黒の縦縞を身に纏い、札幌ドームのピッチに足を踏み入れた。投入直後から、チームに落ち着きをもたらす流石のプレーを魅せた。そして後半43分、小野伸二のクロスを、持ち前の身長を活かし頭で合わせゴールに叩き込んだ。このデビュー戦で決めたチームの勝ちを決定付けるゴールがキングの伝説の幕開けとなった。

その後も持ち前の得点能力の高さを発揮したジェイは、シーズン途中加入ながらも14試合10ゴールでチーム得点王という驚異的な数字を残し、残留に大きく貢献するどころか、完全に17シーズンの札幌の主役となった。

加入時には既に35歳とベテランの域に達していたジェイ。しかし、自身が言っていたように、年月が経つごとに熟成される赤ワインの如く、ジェイのプレーは円熟味を増していった。加入後、毎シーズンゴールを決め続けているというのは、この年齢の選手としては素晴らしい記録と言えるだろう。

加入当初は磐田時代の行動などもあり、問題児というレッテルが貼られていたジェイ。しかし、札幌で過ごした4年半の間はチームメイトともスタッフとも良好な関係を築き、札幌はジェイ自身の最長期間所属チームとなった。

ミシャが監督になってから若手選手が多く起用されるようになった。そのような中で、試合に出場すれば若いチームに落ち着きを与え。そして、普段の練習の中から若手選手に自分の持っているものを惜しみなく伝えるジェイの姿を、何度も宮の沢で見た。ピッチに立てば、KINGという呼称に象徴されるようにエゴを前面に出すプレーも多かった。ただ、試合中にエゴを出すことはストライカーとして必要なことだし、そのようなスタンスこそジェイの醍醐味と言っていいだろう。問題児のレッテルを貼られて加入したジェイだが、札幌ではチームの勝利に貪欲にこだわり、チームを強くする為にあらゆる面で積極的に貢献する、本当に素晴らしい選手だった。

ジェイとサポーターの間には、4年半の間で深い絆が出来た。ジェイは英国紳士らしく、とても丁寧にサポーターと接していた。コロナ禍以前、宮の沢で直接と接するときも、SNSで接するときも、常に積極的に、笑顔で、そしてリスペクトを持って接していた。ジェイは日本の人々や文化にも深い理解があった。

そしてサポーターもそんなジェイにリスペクトを持って接した。そんな両者の素晴らしい関係性が象徴的に現れたのが、2017年9月の磐田戦でゴール裏に掲げられた横断幕と、それに反応したジェイのインスタグラムの投稿だ。

JAY, Wishing the new arrival the best!
Hope this begenning is full of happiness.
SAPPORO CITY is behid you 100%!

「ジェイ、新たな命の誕生にご多幸がありますように!
この新たな始まりが幸せに満ちていることを願っています!
札幌市は、100%あなたたちの味方です!」

ジェイに息子が誕生したことを知った札幌サポーターが、このような内容の横断幕を掲げた。

これに対してジェイは次のように反応した

昨日ドームでこの弾幕を見たときとても感動をしました。僕と僕の妻ステッラから、心からありがとう! 札幌は素晴らしい街で、これはファンがどれほど特別なのかを示すもう1つの例です。

この一連のやり取りを見て、ジェイとサポーターがお互いにリスペクトを持ち接し、素晴らしい関係性を築いて来たのがわかるだろう。

プレー面も人間性もこんなにも素晴らしい選手が、札幌というチーム・サポーターを愛してくれたことがとても嬉しい。彼がいなければ今の札幌は絶対にない。それだけ偉大な選手だ。そして、彼が札幌に残した勝者のメンタリティーと偉大な記録は、札幌のDNAの一部として確実に残り続けるだろう。

Big respect Jay 48!
We are proud of the history we have created with you!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?