読むメッシ

スポーツ選手のCMには、独特の味がある。正直、CMキャラクターとして不器用であればあるほど、その味は増す。身も蓋もない言い方をすれば、それは「棒読み超ウケる」ってことでもあるんだが、それだけではない。そこには、一つの分野に異常に特化した存在へのロマンがある。

それとは別に、海外の有名人が日本でやるCMの味というのもある。これもやっぱ「棒読み」というスポーツ選手との共通点がある。なにせ基本日本語しゃべれないんだから無理もないんだけど(セガール除く)、だからこそこの棒読みには「こんな豪華な人に無理やり日本語を!」という贅沢感が生まれる。「本来ここにいるような人ではない」感と言い換えれば、日本のスポーツ選手にもあるが、まあ「こうやって活動資金稼ぐんだなあ」みたいな場合もあるしな。やっぱ特化のロマンのほうが大きい。

いやあ、それにしてもメッシのCMすごいな、今やってるやつ。「スカルプD」の。とにかく髭面のメッシが始終微笑みながらキョロキョロするだけだ、ほぼ。で、最後に「若者よ、未来を変えるメッシ」っていう、たぶん「変えるべし」と引っ掛けたダジャレを言わされるんだけど、この時のメッシが、元々そういう風に見えるような目の形なのか、事実そうしてるのか、明らかに斜め前方の「何か」を見つめながらしゃべってる。読んでる。…ように見える。

「カンペ読んでるぞ!」とか鬼の首取ったように言いたいわけじゃない。むしろ、そうだと思いたい、だとすれば素晴らしいって話だ。意味わからん外国語(をアルファベットに置き換えたやつか何か)を凝視して文字通りの「棒“読み”」を披露し、極東の島国で高額の出演料をかっさらう。撮影もバルセロナで、サッカーの合間に45分くらいで終わらせていてほしい。これは願望。それでこそメッシである。そうあってほしい。皮肉でもなんでもなく。

ふと、2ヶ月ほど前、「パイレーツ・オブ・カリビアン」の何作目だかの地上波放送の宣伝の最後にいきなりぶち込まれた、明らかに最新作のプレミアのレッドカーペットのどさくさで急に「これ読んで!」言われただけのジョニー・デップが「ミ…テネ…」って言わされてるやつを思い出したが、でもこれは一応、出演作の宣伝になってるからな。メッシはなんなら「スカルプD」が何か知らないから(願望)。さすがメッシだ。

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