マガジンのカバー画像

連載小説【揺動と希望】

4
北朝鮮からミサイルが飛んできて、南海トラフ大震災が起こった日本がどう右往左往するか、そしてそのなかから新たな世界構築へ向かう思想が生まれるまでの物語。崩れゆく世界で根拠なき希望を… もっと読む
運営しているクリエイター

#揺動と希望

連載小説【揺動と希望】 1−4

【1-4】  私だけの世界はここにある。暮らし、楽しみ、哀しみ、退屈、静けさ、法螺、絹の肌触り、お日さま、水道の蛇口、深爪、苦悩の吐息、みんな私のもの。そう、赤ちゃんも三毛猫も仏頂面の彼も。  私は難民キャンプで生まれた。イランの西部の街、ホラムシャハルは爆撃の焼け野原だった。私は長いあいだ一人ぼっちだった。ジャスミンが来てくれなかったら私はあのままあそこでのたれ死んでいただろう。テヘランに移ったときはこれでお腹いっぱい食べれるのだという喜びしかなかった。  孤児院での