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読書ノート 「寝ながら学べる構造主義」 内田樹

 「まえがき」の「専門家のための解説書や研究書」と「入門者のための」それとの違いを解説する文章が俊逸。専門家のそれは、「内輪のパーティー・ギャグ」で「知っていること」を軸に積み上げ、専門的語彙と知見に溢れ、それなのに「なにか本質的なもの」については問われぬまま逸らされていると感じ、つまらない。

 それに対して「よい入門書」は、「私たちが知らないこと」から出発する。そして「専門家が言いそうもないこと」を拾い集めながら進む。故に面白いものに当たる確率が高い。

 「よい入門書」は「私たちがなぜそのことを知らないままで今日まで済ませてこられたのか」を問う。これは実にラディカル(根源的)な問いかけであり、その理由は「自分があることを『知りたくない』と思っていることを知りたくない」からであるとする。

 「無知というのは単なる知識の欠如ではありません。『知らずにいたい』というひたむきな努力の結果です。無知は怠惰の結果ではなく、勤勉の結果なのです」

 「ですから『私たちは何を知らないのか』という問いは、適切に究明されるならば、「私たちが必死になって目を逸らせようとしているもの』を指示してくれるはずです。例えば、医学の専門書にはさまざまな病気のさまざまな治療法が書いてありますが、『人はなぜ老いるのか』『人はなぜ死ぬのか』という問いは主題的には論じられません。だって、誰もその答えを知らないからです。そして、それこそが私たちがそこから目を逸らそうとしている当の問いだからです」

 重要なのは、大事な問いかけを取り出すこと、と内田は言う。

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