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空掘天使

ねえありさんもぐらさんあなたたちは土を掘るのが仕事でしょ
おいしい食べ物を見つけるためね、それが働くということね
人間も食べ物を育てるために土を掘るけどね

じゃがいもにんじんだいこん育てるために
人間は土を掘るとき機械を使うけどあなたたちにとっては迷惑やんね

その上、人間て同じ土に穴あけて深く広く掘って水やコンクリート詰めて建物作っちゃう

今からする話は人間を責めないよ。それは私の仕事ではないからね

うん、もぐらさんも人間も、とにかく土の上でも下でも生きているものはすべて、土を掘るのが得意でしょ

でも私のような小さい天使は空を掘る

こればかりは天使の特権になるかなあ晴天の時には空を掘るのも楽ちんよ抜けるような青空は本当に抜けるほどせっせと掘れる

雲がない青空ほど軽いの、重たくないわだから広がる青空の時はできるだけ大きく掘り取るの
もぐらさんたちは青空の掘り方知らないでしょ教えてあげましょ私の羽根を一枚取って、それを右手で大きく回すのすると羽根が大きくなって真っ白なスコップができるそのスコップで空を掘るもちろん青空だけではなく、夕焼け空もきれいだから掘る青と赤のグラデーションの色を綺麗に掘るのはむつかしいけどがんばるわ曇りや雨空はだめ、重すぎてとても掘れないの台風や稲妻の時なんて木々の茂みの中から出れないの

ええ私は空を掘る天使
青空を掘って取り出したそれをきれいに折りたたむ
緑の葉をまわりに散らしたオブジェにして夜の女王に差し出すの
夜の女王はそれを宮殿の壁のない美術館に飾り、私に星の光をくれる


私はその星の光を、心が闇夜になった人間に届けてあげる
そうすればその人は少しずつ生きる心がわかるようになる
星の光がわかるようになったら、次はお月さまの光、その次は夕焼け
だんだんと明るい青空色へと持っていく
青空と太陽の光が闇夜の心に届くようになるまでは結構時間がかかる
けものたちが水を一滴ずつ持ち寄り山火事を収めるように
天使の私も空掘ってせっせと美しいものを組み合わせて時にはオブジェにするの
綺麗なものはどんな人間の心をも幸せにする
空しくはないわ大丈夫きっと世の中はもっと綺麗になるそれが私の信念よ

あらありさんもぐらさん、これを私に?
おいしそうなさつまいもの根っこね、ありがとう
あなたたちは私に元気をくれたわ
これを食べたら破れたボロボロの羽根をつくろって今日の分の青空を掘りに行くわ
明日は雨だとかえるさんがいうので多めに掘りに行く
そうそう、空掘ってからほりと読む人もいるらしいわね
それもいいんじゃない、青空を空っぽと感じる人もいるし
広がりすぎて虚しさを感じる人もいるでしょう
でも私はそうじゃないわ広がりすぎてやることがたくさんあるの
私は羽根をスコップにして空を掘る天使で幸せよ

ただそれだけ


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