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#0015【イスラム教 基礎・入門編】

こんばんは! 1日1分歴史小話メールマガジン発行人の李です。

今週最後は、イスラム教についてご紹介します。

日本は、イスラム教徒が少ないということもあり、イスラム教についての理解が深まらない土壌にありますが、このメルマガが少しでも理解を進めるための一助になれば幸いです。

イスラム教の特徴を端的に述べると、「合理的」という点にあると思います。もちろん、他の一神教の宗教と比べればということです。神は存在するという前提でお読みください。

水曜日にご紹介したキリスト教の「三位一体説」では、神は「唯一」のはずなのに、イエスと精霊が出てきます。イスラム教では、この説を「詭弁だ」と厳しく指弾します。

イスラム教では、神は「ただ一つ」と宣言しています。イスラムの偉大な預言者ムハンマド(マホメット)は特別な人ではありますが、あくまでも人間です。「神の子」ではありません。

また偶像崇拝を徹底して排除している点もイスラム教の特徴であり、ムハンマドの絵を描くことすら認められていません。キリスト教でも偶像崇拝は禁止されていますが、十字架や聖像画があるなど、イスラム教からみたら不徹底に思える状態です。

イスラム教の成立はキリスト教成立から約600年経っていますので、一神教としての理論が進展したという側面があります。イスラム教の聖典コーランでは、繰り返しユダヤ教とキリスト教への批判・反論が展開されています。

私はどちらの信者でもありませんが、冷静に両者の主張を比べるとイスラム教の方が「すっきり」しているように思います。

もう一つのイスラム教の特徴として、異教徒に寛容である点が挙げられます。たとえば過去に地中海一帯を支配したオスマン帝国というイスラム国家では、ユダヤ教徒・キリスト教徒に対して信教の自由を認めていました(ミッレト制)。オスマン帝国への忠誠が前提ですが。

しかし、近代に入ってから、ヨーロッパのキリスト教文明がイスラム世界を侵食し圧迫を加えます。イスラム教徒の中には、それに不満を持つ勢力が出てきます。

イスラム過激派と呼ばれる人たちです。

彼らは、

→イスラムの教えは絶対だ。(なぜなら神の命令だから。)

→しかし、イスラムの教えを守らない人間がいる。

→それは神の望みではない。

→コーランにも神の教えを広めろと書いてある。

→神の教えを広めることはいいことだ。

ここまでは特に攻撃性は帯びていませんが、ここから

→イスラムの教えを信じない人間を排除しても構わない。

と「ごく一部」の人間がテロを実行しています。昔も今も、大半のイスラム教徒は穏健で寛容です(多神教や無神論に対する態度は今回の小話では保留します。)

確かにコーランの中にはイスラムの教えを広めるためには「戦いを厭うな」という表現が随所に出てきます。しかし、その一方で神の慈悲の心に「限りはなく」、イスラム教を信じようとしないものたちに「構うな」とも言っています。

コーランを完全に理解しているわけではありませんが、あくまでも相手が攻撃してきたときには、信仰を守るために「戦いを厭うな」と命じられていると私は考えています。コーランの中で私が好きな1節を紹介します。

コーラン第41章第34節

「善と悪とは同じではない。だが(他人に何か悪いことされたら)もっと善いことで(その悪を)追い払え。そうすれば、いくら不倶戴天の仇敵だとて、まめやかな友達のようになること疑いない。」(井筒俊彦訳『コーラン(下)』岩波書店)

私は日本語文献からの知識しか持っていませんが、イスラム教は学べば学ぶほど興味がつきない面白さがあります。教えの中身についての深入りは今回しませんが、この流れで来週はイスラムの偉人特集をやります。

馴染みの薄い人も出てくるかと思いますが、面白いエピソードを交えて楽しんで頂けるようにします。再来週は有名人を取り上げます。

それでは、良い週末を。以上、今週の歴史小話でした!

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発行人:李東潤(りとんゆん)

連絡先:history.on.demand.seminar@gmail.com     twitter: @1minute_history

主要参考文献等リスト:

https://note.mu/1minute_history/m/m814f305c3ae2

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