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スヴェトラーナ文法による他人事化

スヴェトラーナは数日前から息苦しさと手の痺れを感じていた。それは歩いている時、立ち上がった時にやってきて、継続してずうっとという訳ではないが、とにかく動くとそういうことになる。頭の中は建物の前にたまに置かれている、耳障りな超音波の機械音のような、水銀が脳壁にぶつかり合って跳ねているようなジンジンとした音がする。静かであればあるほどその音の煩さに耐え難く出来る限り騒音のある場所にいたいが、意味のない音であればより良い。だるくて動く気力が湧かず、じっとしていれば居ようにも腹が張り裂けそうに膨れ上がり、痛身を感じる、エイリアンでも身ごもっている化のような腹の膨らみをみて自分の内側にあるすべてのものが憎らしく、結局許しが降るまでスヴェトラーナはトイレでじっとしていた。
低血圧なのかもしれないと思い、鉄分飲料を買いに行きたいと思ったのに、思っただけで動けそうにない。トイレから這い出てそのまま床に萎れ込んでいたが、近所に住む友人に買い物を頼むことにした。しばらくしてポストにビニール袋を入れるガサガサした物音がして、「ポストに入れといたよ、仕事があるので戻ります」とショートメールが届いた。申し訳ない思いで床を這い、入り口のロールスクリーンを上げるとちょうど知り合いが通り、ぐちゃぐちゃな姿だったから恥ずかしかった。今日は1日の予定をまともにこなすことができず、約束をキャンセルばかりして、ちゃんとできないことが不甲斐ない。手が痺れている状態は去年もなったことがあるけれど、その時は単なる脱水症で、OS1を2本飲んで寝たら回復したものの、同じことを数日前にやってみたが治ることはなかった。お腹の中が重く刺し、常に吐き気がする。喉の奥の圧迫感。
ふーあんが高まると無意識のうちにやる行動として過食もある、から、過食もした。お腹を下したのはそのせいだろうか。
スヴェトラーナはもう体も心もぐちゃぐちゃで、ちょっと運動したくらいでは気持ちが動かなくなってしまっている。固まった気持ちをもみほぐしたい。でも、自分で自分を癒す限界を感じている。

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