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かの子の食卓17『歌双紙第壱編 かろきねたみ』

  かろきねたみ

三度ほど酒をふくみてあたゝかくほどよくうるむさかづきの肌

   袷の襟

君なにか思ひ出でけむ杯を手にしたるまゝふと眼を伏せぬ

   旧作のうちより

ひとつふたつ二人のなかに杯を置くへただりの程こそよけれ

   いばらの芽

くれなゐのいちごの実もてうるほしぬひねもすかたく結びし唇

   ひるの湯の底

彼の折に無理強むりしいされし酒の香をふとなつかしく思ひ出しかな

   みずのこころ

一杯の水をふくめば天地あめつちの自由を得たる心地こそすれ

『かろきねたみ』岡本かの子
えあ草子・青空図書 青空文庫

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