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シアター・ホームステイinアトリエ銘苅べ―ス⑤

前回からひきつづき滞在四日目、なはーと別注編です。

那覇市にできたピカピカの新しい劇場であるなはーとは、外壁や場内の各所に沖縄の伝統的な花ブロックの紋様があしらわれ、とにかくかっこいいです。

沖縄の伝統的な花ブロックの紋様。

外壁の花ブロックの曲線は、琉球の城(ぐすく)の城壁をイメージされているのだそう。

たしかに首里城でも城壁がうつくしいゆるやかな曲線を描いていました。

首里城の城壁。ゆるやかなカーブ。

なはーとの総合プロデューサーに就任された崎山敦彦さんは、KAATで仕事をされていた時(2012年~)には快快さん、悪魔のしるしの危口さん、ContactGonzoさんなど、当時から若く先進的なカンパニーやアーティストの方と多く仕事をされていたイメージが(個人的には)ありました。

そんな横浜・KAATの最先端の演劇シーンをけん引してこられた崎山さんですが、このたび那覇市に新しく生まれたなはーとではより広い視野をもって「いまの沖縄の演劇界にとって必要なこと」を劇場職員の皆さんで考えながら、企画やプログラムを検討されているのだそうでした。

左が崎山さん。正面が当山さん。ロビーの壁にも花ブロックの紋様があしらわれている。

沖縄、那覇市に生まれた公立劇場のミッションとして「ただアーティストがつくりたい作品をつくって提示するだけでは足らず、その土地に根差した視線や、その土地の人にとってフックとなるものが必ず必要になる」と仰っていたのが印象的でした。

当山さんも、たとえば本土・東京で観られるような作品が沖縄の劇場にたくさん並んだとしても、いずれ観客の方から「『なんで沖縄(うちなー)の芝居をやらないの?』という声がかならず上がる」とおっしゃっていました。

劇場ロビーの壁には、昔の沖縄の記録映像が流れる。

また意外なことに沖縄ではまだまだ舞台美術のデザイナーさんの数が少なかったりするなど、ひとつのプロダクションのなかで様々な演出家、劇作家と舞台美術、照明、音響、衣装といった各部門のデザイナーの方々とが互いに出会い、協働するような機会もまだまだ少ないのだそうです。

そうした多くの人が力を合わせて作品をつくりあげる「総合芸術としての沖縄現代演劇、発展の場」としてのなはーとのはたらきも、期待して待たれます。

ただつくりたいものをつくるのではなく、公立劇場として今の沖縄の演劇にとって大切なものを並べていく。そしてなはーとで働く人、その周りにいる沖縄の演劇人の皆さんと知恵を出し合って協力しながら、那覇市の公立劇場としての個性を出していけたら、とのことでした。

そしてその後、なはーとの小劇場を見学させていただきました。

油圧でフルフラットになる舞台面、高い高い舞台上空と可動式のバトン、大きな搬入口といった最新の劇場機構も圧倒的でしたが、もっとも印象的だったのが客席の色でした。

この黄色が琉球王家の色!!

琉球王家の衣服に用いられる「ちーるじー」と呼ばれるノーブルな黄色の客席は圧巻の一言。

琉球伝統の柄が織り込まれた座席は、むっっっちゃきれい!!!

当山さんのこのポーターのバッグに使われている黄色も琉球カラーで、沖縄限定の代物なのだそうです。

崎山さんは長らく首都圏でさまざまな劇場やホールで勤務されたのち、生まれ故郷である沖縄へ戻ってこられました。

なはーとが建てられる前、ここにはかつて小学校があったそうなのですが、崎山さんはその小学校の卒業生でもあったとのこと。

なのでなはーとが出来、そこに劇場の総合プロデューサーとして戻ってくるのは「そういう運命だったのかな、と。」

崎山さんの後ろ姿。

なはーとは那覇市直営の施設とあって、劇場の運営面ではまだまだ芸術家にとっての使い勝手の面からすると難しいことも多いそうです。そうした実際の運用の面でも日々たたかって、よい劇場にしていきたいとおっしゃっていました。

崎山さん。「劇場というのは、ひとりでは何もできない場所ですから。」という言葉が印象的でした。

崎山さんと当山さんが初めて出会われたのは、当山さん達が銘苅ベースをつくるために全国の小劇場を視察されていた折、横浜KAATでのことだったそうです。

他にもたとえばKAATで劇場インターンをされていた方が今なはーとで働かれていたり、KAATで地点によって上演されたエルフリーデ・イェリネク『光のない。』を翻訳された林立騎さんも、現在なはーとで勤務されているのだそうです。

私自身も2012年の劇場運営インターンへの参加したとき以来、崎山さんとまさかの10年ぶりの再会を果たすことができるなんて想像もしておらず、劇場という場所と、そこで巡り合う人々が生み出す文化について思いを馳せる時間となりました。

なはーと 大劇場に座って記念撮影を試みるも、大緊張。


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