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「べファーナの甘い石炭」

あけましておめでとうございます。
三ヶ日も過ぎてお正月ムードも落ち着いた頃かと思いますが、描きたかったクリスマスっぽい絵を。

イタリアでは1/6の公現祭(エピファニー)の前夜、
1/5にホウキで空を飛ぶお婆さん・ベファーナがやってきます。
良い子にはプレゼントを、悪い子には石炭を、靴下へ入れに。

ベファーナとは?

Befana
ホウキに乗って空を飛び、煙突から家に入ってきて、
子供の靴下に贈り物を入れてくれる。
良い子にはお菓子などを、悪い子には石炭やニンニクを。

鉤鼻で、歯がほとんどない、とても年老いたお婆さん。
ツギハギの長いスカートを履いて、エプロンをしていることが多い。厚手の靴下と歩きやすい靴を履き、猫背の肩に重くて色のついたウールのショールをかけている。
頭にはとんがり帽子ではなく、分厚い布のハンカチかウールのスカーフを被って、顎の下で結んでいる。
贈り物と石炭とニンニクを、巨大な靴下の形の袋(地域により差がある)に入れて運ぶ。

サンタさんのためにクッキーとミルクを用意しておくように、
ベファーナのためにワインと、地元の食べ物をのせた皿を用意しておく風習があるのだとか。

私がベファーナを知ったのは『グレーテルのかまど』。
魔女というモチーフが好きなのでテンションが上がりました。
が、実際には「魔女」ではなく、季節の再生を見越して家(および魂)の浄化を表す古代のシンボルである空飛ぶホウキで表現された、愛情深い老婦人。冬の擬人化、土着の年神様的な存在なんですかね。
(日本でもホウキは「払い清める」縁起物ですしね)
現代ではとんがり帽子に黒いマントの典型的な魔女と混同されることも多く、店頭に並ぶ商品や人形もそんなかんじっぽいのですが。

徐々にカトリックに統合され、イタリアの子供達のクリスマス(新年)にお馴染みの存在となったようです。
キリスト教化された伝承には何パターンかあり…

1:
東方の三賢者が神の子イエスの生誕を知り、贈り物を持ってベツヘレムへ向かう途中、老婆に情報を求めた。賢者は老婆に同行するよう求めたが、老婆は掃除に忙しく断った。後から袋いっぱいの贈り物を持って追いかけたが、イエスのもとへは辿り着けなかった。
それ以来彼女は神の子を探し続け、出会った全ての子供たちに贈り物をしている。

2:
子供を失って気が狂った女性がイエスの誕生を聞き、彼を自分の子供と思い込んで、彼の下に向かい贈り物をした。幼いイエスは喜び、彼女にお返しの贈り物をした。彼女はイタリアのすべての子供の母親になるだろう。

など

イタリアのサンタは「バッボ・ナターレ(Babbo natale)」。バッボは父、ナターレはクリスマス。
イタリアではべファーナのほうが存在感があるらしい?


カルボーネ・ドルチェ

carbone dolce della befana
カルボーネは炭、ドルチェは甘い(お菓子)という意味。
見た目は完全に炭なんだけど、砂糖の塊。キャンディです。イタリアやアメリカ、カナダ、スペインなどのクリスマスシーズンによく食べられているらしい。
カラフルなのもある。

子供は石炭より甘いお菓子の方が嬉しいでしょうが、暖房設備が整っていない時代では冬の石炭はとても重宝したでしょうし、悪い子へのおしおき…といいつつどちらも優しい贈り物だったのかも。

↑で知ったけど日本にも「塊炭飴」というのがあるそうな。


ヨーロッパ諸国では大晦日や年明けに老婦人の人形を燃やす伝統があります。老婦人は「過ぎ去った古い年」を表し、それを燃やすことで新しい年を迎えるのだとか。
日本にもある発想ですね。人が燃やされている…と思うと怖いですが…

ベファーナと似たような存在で
アリエおばさん(タンテ・アリエまたはタンテ・エアリー)というフランスの女性版サンタクロース的な妖精もいます。
ファーザークリスマスならぬマザークリスマス。

近年では女性サンタクロースも珍しくはないと思いますが
(「公認サンタ」にも女性はたくさんいらっしゃるようだし)
若く美しい女性だけでなく、こうした魅力的なお婆さんや中年の女性のシンボルがいるのはなんだか嬉しいなぁと思います。


そして明日1/6はエピファニーでガレット・デ・ロワの日!

イギリスにも「エピファニータルト」があります。
三賢者を幼子イエスのもとへ導いた星を象ったジャムタルト。
イエス+12使徒を表す13種類のジャムを使って作るそうです。
これは現代のケーキ屋さんで売っているようなものではないようだけど。
カラフルで楽しい。



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