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「七夕のこんぺいとう」

七月は忙しくなりそうなのでちょっと早めに七夕の節句。
七月七日は「こんぺいとうの日」でもあります。
こんぺいとうの製造メーカー四社で結成した「金平糖deつなぐ会」が制定した記念日。

キラキラ星みたい。

金平糖作り風景、科学の実験のようでもありおもしろいです。

梅仕事(梅のシーズンに梅酒や梅シロップを作ること)に、氷砂糖でなく金平糖を使うのもかわいい。
角砂糖がわりに紅茶やコーヒーに入れても良し。

大阪の「珈琲舎・書肆アラビク」さんでいただいた「マリア・テレジア」。
オレンジリキュール入りのコーヒーにホイップクリームと金平糖で華やか。

また、七月七日は「そうめんの日」にも定められています。
こちらは伝統的な行事食。織姫の糸や天の川も連想させる、涼やかな食べ物。

索餅(さくべい)

和名は「麦縄(むぎなわ)」。
唐菓子(からくだもの/中国から伝わった菓子)の一種で、乞巧奠の行事食。
小麦粉を練って糸束のような形にして油で揚げた、砂糖なしのドーナツみたいなもの。
現在の素麺のもとになったともいわれている。

素麺(そうめん)

製粉技術の発達した江戸時代、庶民の間では七夕に素麺を食べる習慣が定着したらしい。
宮廷の乞巧奠で供えられていた絹糸(庶民には高級品)の代替になったとの説がある。
この「五色の糸」は糸から布、布から紙へと変わり、現在の短冊に繋がる。
(「笹の葉さらさら〜♪」の童謡にも「五色の短冊」が登場する)
五色は五行思想の青(緑)、黄、赤、白、黒(紫)。
この配色は鯉のぼりの吹流しや、寺院や神社などいろんなところに使われている。

七夕(たなばた)は、中国の「七夕(しちせき/7月7日の夜のこと)」の伝説や行事・日本の伝説や神事などいろいろな習俗が混ざり合ったもの。
また旧暦の七月七日を「盆はじめ」「七日盆」として、お盆の準備を始めるようにもなります。

「牛郎織女」伝説
牽牛
(鷲座のアルタイル)と織女(琴座のベガ)が1年に1度七夕の夜にだけ会えるという、中国の「星まつり」の伝説。内容は地域差がある。

乞巧奠(きっこうでん)
機織りをする織女にちなんで、「星の座」という祭壇に五色の糸梶の葉琵琶などを飾り、裁縫・機織り・音楽・書道など技芸の上達を願う行事。この中国の乞巧奠と星まつり伝説は、奈良時代には日本に伝わったという。江戸時代には天皇が梶の葉に和歌を書き、牽牛と織女に手向けるようになった。

棚機津女(たなばたつめ)
古代日本の宮中文化。川原に作った棚の上に設けられた機屋で、娘が棚機(たなばた)という機織り機で神様に供える布を織りながら、神の降臨を待つ儀式。
稲の開花時期=水害や病害が心配な時期でもあるので収穫の無事を願う。
七夕の夜に水辺で身を清めて、神様に穢れや災いを除いてもらう習わしにもなった。

…などが混ざり合い、
江戸時代には笹竹願い事を書いた短冊五色の糸や布を吊るして星に願うようになりました。もとは「文字が上手くなるように」という願いが一般的だったのが、徐々に何でもありになっていったようです。


織姫さま

よく織姫の周りにふわふわ浮いている布はたぶん「領巾(ひれ)」。
実際はもっと分厚いショール的なもの。
こういう格好をした飛天(空飛ぶ天人)が飛ぶと、風に靡いて目立つから、羽衣伝説とかと結びついて空飛ぶアイテムっぽい印象になってるのかな?とか。
おでこの印は「花鈿(かでん)」というメイク。髪型は「高髻(こうけい)」。

織姫の衣装は奈良時代〜平安時代初期の女官の「礼服」「朝服」を参考にしています。牛郎織女伝説が伝わったのが奈良時代ごろだそうなので、その流れがあるのでしょうね。
(人外の伝説なので何が正解ってのもないんでしょうが)
漫画やアニメの織姫や乙姫っぽいキャラは、頭の上にふたつの輪っかを束ねたような髪型が定番になっていますが、あれは何が元になっているのだろう?と調べてみると
やはりこのあたりの時代に「高髻(こうけい)」「双髻(そうけい)」という髪型があったそうで。ティアラのような飾りをつけると「宝髻(ほうけい)」。長い髪を垂らした「樹下美人(じゅかびじん)」なども。
さらに遡ると中国(唐)のファッション。中国ファッションはファンタジーっぽいコスプレ衣装が大量にヒットするので何がどこまでフィクションかさっぱりわからなかった。則天武后のドラマとか髪も衣装もすっごい。

京都の櫛祭り、行きたい…!!
シルエットだけなら「稚児髷」もそれっぽいんだよな。

奈良時代の装束を着ることができるサービスもあったり。
「天平衣装」が一番イメージにあったのでそんなかんじで描きました。


彦星さま

いろんな七夕の絵を参考に、中国の牛飼いっぽくしたつもり。
(ここでは描いてないけど笠をかぶってたり背負ってたりしているのもけっこう見かけました)
金平糖のイラストでは「牛の皮を着て天に昇る」シーンを反映しました。

彦星=牽牛の衣装は、調べてみてもよくわかりませんでした。
七夕伝説にはいろんなパターンがあって、
彦星ポジションが牛飼いだったり木こりだったり、もともと天の世界の住人だったり地上の人間だったり、織姫よりもバリエーション豊か。
それに高貴な人の衣装の資料へは比較的楽にアクセスできるけれど、庶民のはいまいち見つけられませんでした。映像作品や古い絵画を地道に漁らねばなのでしょうか…

私の中の「七夕」イメージの源流は、幼い頃に読んだ初山滋さんのイラストの絵本です。これは服装などあまり具体的な描写はしてないけどとてもいい雰囲気。
でも「水浴びしている織姫の着物を盗んで、返して欲しければ結婚しろと迫る」パターンなので、成長してから読むと「牛飼いの奴クソじゃん!これで織姫が夫を愛してるって言ってもストックホルム症候群としか思えないじゃん!そりゃ西王母も怒るよ!!」となりました。こういう伝説や民話は、子供向けに新しく出版されるなら後書きとかでツッコミを入れてくれたら嬉しいな〜と思ったりします(個人的には改訂より解説がほしい)。

今回、あらためて他の七夕絵本も読んでみました。

二俣英五郎さんのイラストの絵本は
「天上で夫婦だったふたりが、仕事せずにいちゃついてばかりなので怒った天帝に引き裂かれる」パターン。「天帝」のデザインは、まさに中国の始皇帝。
クセのない絵柄でとっつきやすかったです。たぶん日本人が思い描くオーソドックスな織姫・彦星像なのではと。
「仕事よりプライベートを優先する」のは現代人にも共感しやすそうな一方、牛飼いが世話をさぼったことで牛が病気になったりもするので、天帝が単純なパワハラ親父という印象でもなくいいバランスかも?

「天人にょうぼう」は彦星ポジションが牛飼いではなく木こりのパターン。
これも、羽衣がなくて天へ帰れなくなった天女を騙す形で夫婦になります。異類婚姻譚ってそういうの多いですよね…
「天へ帰ってしまった女房を追って、天まで伸びたユウガオを登って天界へ行く」のが、「ジャックと豆の木」みたいでおもしろい。
この木こりの服装は、日本昔ばなしでよく見るかんじ。
平安時代の男性庶民の衣服のようでした↓


こちらは全7巻の「中国の四季の絵本」。
こどもの日=端午の節句と、七夕の節句が中国ではどんなかんじなのかが垣間見れます。
これに七夕の工芸菓子として「木型で成形した菓子を五色の糸で繋げて、ネックレスのように首からかける」描写があります。がお菓子の名称は出てこないので実態がどんなものなのかわからない…気になる…!


ちなみに

織姫・彦星が逢えるのは、カササギが群れになって天の川に橋をかけてくれるから。
なので最初はカササギありverで描いていたのですが、カササギの模様はシルエットが紛れていまいち映えない…実際の模様とは違うデフォルメをしたりシルエットで塗りつぶすのもアリだろうけど、カササギという鳥は一般人への認知度がたぶん低いからあまり変えるとカラスか何かと思われそう、それに画面の情報量が多くなりすぎる…
と考えて削りました。

今年の七夕は晴れるかしら。


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