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epitaph / Koji Nakamura

このアルバム、聴いたっちゃあ聴いたけど、しっかり聴こう聴こうと思ったままあんまり聴いてなかったなぁ、あらためてちゃんと聴いてみよ、と思って聴いてみたら案外もうすでにちゃんと聴いてたなという作品がたまにある。だいたいそういうのはなんとなく流し聴きしてきたもので、流し聴きの回数が増して増して、けっきょくけっこう聴いてました、みたいな。ナコカー氏の「epitaph」まさにそれだった。

ビートに頼らず、現れては消えるたくさんの音と、あいかわらず気だるそうではあるけど、そう言えば力強さがあきらかに増した歌。展開の先が読めない。聴いていてワクワクすると同時に、緊張感がある。

このアルバムは意識的に聴く作品だった。ただアンビエント的に流しておくことも許容される。こういう音楽は、実はあまり多くない。どっちかに偏ることがほとんどだし、別に本来それでもいいはずだけど、「epitaph」はそれを越えてしまっている。ナカコーさんの音楽性の強さが、相当な意識量を以て構築されている。

自分の歌もの作品を作るにあたって、2019年の作品を今になって意識的に聴いてみることにしたわけだけど、ちょっとこれは気軽に真似できるものではないなと、割と凹みに近いレベルで打ちのめされた。

スーパーカー時代の音楽は、構成がこれでもかというほどシンプルで、それは当時ロックバンドのそれとしてものすごく斬新だった。それと「epitaph」はまったく音楽の仕組みがちがう。ミュージシャンとして、音楽にのみがっぷり四つに組み合ってきたことが、このアルバムでひとつの結実を迎えている。

アンダーグラウンドシーンに潜り込みながら、ひたすら音楽を研究し続ける姿勢は本当にかっこよくて、俺はちょっと気をつけないといけないくらい影響を受けてしまっている。

俺自身、それなりに音楽に向き合って暮らしていると思ってはいるけど、まだまだこれからだなと思わざるを得ない。そんな気持ちになっている。

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