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Wallowsの新譜を約4000文字に起こして語る

タイトルの通りである。今週のリリースで一番聴いているWallowsの「Nothing happens」。めちゃくちゃ良かった。思った以上に良かった。
最初聴いた時から「USインディーの救世主になる」とさえ思った。

先行曲の「Are you bored yet?」からずっと思っていたが、どこか彼らの音楽は10年代前半のインディーロックが盛り上がってた時代を思い出す。
Passion Pit, Foster the people, years & years, the 1975, Bastille, Friendly Fires, Haim, Fun., Two Door Cinema Club, the Vaccinesなどなど10年代後半に比べると明らかに話題性を持つバンドが多かった。
そしてTaylor SwiftやOne Directionでさえインディーポップ好きの耳に好まれるアルバムを2014年に出していた。

こうした流れが変わったのは2015年、Kendrick Lamarの「To pimp a butterfly」をリリースして以来、世界中でヒップホップのブームとなった。
そして翌年の2016年、Frank Ocean, Beyonce, Kanye Westの傑作などの黒人アーティストの活躍によって、10年代前半の流れは明らかに変わっていった。
勿論、私の知らないところや思い出せないところで良いバンドが出てきたであろう。Fickle Friendsとかよく話題になってた。

このような時代のトレンドに私も流され、いつしか拒んでいたストリーミングも今や手が離せなくなり、かつて愛して聴いていたインディーロックバンドも、昔と比べて新しいバンドを知る機会が少なくなった。

しかしここで出てきたのがWallowsの「Are you bored yet?」である。

Wallows。何となく名前は知っていた。多分Spotifyでthe 1975にテイストが似ているアーティストを探してた時かな。(まあ実質似てはいないんだけど)
ある日プレイリストを作っていた時に見つけた、「are you bored yet?」、最初聴いた時は正直パッとこなかった。この手の曲は万と聴いてきたのかあまり聴きこもうという気持ちにならなかった。
しかし、いつの間にかこの曲を忘れられなくなっていた。これが自分でも不思議でいつの間にかこの曲の虜になっていたのである。

ツイッターでも語ったが、イントロの儚げになるピアノの音が、インディーロックを愛していた2010年代前半を思い出させたのである。
そう、Passion Pitの「Take A Walk」のイントロでドラムのリズムが人間の歩く速度に合わせていることに気づいて興奮した時のような、
この「Are you bored yet?」でもピアノの音がなんか独り歩きしてるぞ!という印象を得てしまったのである。

こうなったら、新譜を待ちわびるしかない。新譜を聴いて、良かったぞ!という感想をツイッターで呟こう。ハードルはそれとなく高かった。

しかし、それどころかWallowsの新譜のインパクトは、自分の立てたハードルをぶち壊した。いくつかの項目に分けて話すとしよう。

曲と曲の繋ぎ目

Wallowsの新譜「Nothing happens」、これのどこかすごいかみんなの感想を聞いたら8割が「曲と曲の繋ぎ目に驚いた」であろう。
これは初聴きの時に実際に脳みそに直接パンチされた気分になった。
まずは一曲目の「Only friend」から二曲目の「Treacherous Doctor」の繋ぎが早速カッコよかった。

それから7曲目の「World's apart」から「what you like」へのヴォーカルのバトン交代もばっちり決まっている。このバンドには二人ヴォーカルがいる。そしてこの二人のコンビが今作においてのキーとなっている。話を変えよう。

ツインヴォーカル

低い声をしているディランともう一人ブレーデン。一曲目から二曲目だけでなく、他の曲でもカッコいい繋がりがあり、曲と曲が変わる繋ぎ目のタイミングでヴォーカルが入れ替わったりする。そのコンビネーションの良さが「このカッコよさ」の決め手なのではないだろうか。

調べてみたらこのバンドは古くからの付き合いらしい。だからヴォーカルの入れ替わりのテクニックだけでなく、アルバム全体の演奏も息ぴったりなのである。説明すんのも何だから曲を聴いてみてほしい。


Dylan Minnette

左の人。どうやら「13の理由」という海外ドラマで既に有名な俳優らしい。私はこのジャンルに疎いのでよくわからないが、「13の理由に出てるディラン、バンドやってるんだ」みたいな書き込みをちょくちょく見かけた。先ほど書いたように低い声で歌っているのが彼。この低い声が我々インディーロックファンの心をくすぐるのだ。と言うのも、彼の声はどこかthe Strokesのヴォーカル、ジュリアンカサブランカスの声を彷彿させる。あと歌い方も何気に似てる。絶対ジュリアン好きだ。こういう匂わせ方が余計にインディーロックファンの想像を膨らませるので、今作における音楽性だけでなく、彼の声や佇まいにおいてもWallowsを好きになる要素に充分含まれていると思う。

Braeden Lemasters

真ん中の人。もう一人のヴォーカリスト。彼も俳優らしい。wikiによれば声優もやってるとか。さて、主観だがインディーロックのジャンルにおいてはあんまり歌唱力がなくても大丈夫なんだと思う。上手すぎると「インディー」っぽさがなくなる。そして彼においても下手ではないが上手ではないかもしれない。だからこそ、この作品の音楽性に絶妙に合う。インディーロックというジャンルにめちゃくちゃ合う。ところで、「Are you bored yet?」のライブでClairoパートを彼が歌っているのを見ると、ヴォーカルなので当たり前なのだが、歌うのが好きなんだなと思った。ディランはクールだが、ブレーデンは感じの良いお兄ちゃんに見える。と思って改めて画像検索してみたらやっぱり感じの良いお兄ちゃんだった。

Cole Preston

右の人。Wallowsのドラマー。アルバムの中で聴いても結構いいプレイしていると思う。彼についても述べたいが何せWikiで彼だけ専用ページがないから情報に困る。Wallowsの中でも一番かっこいいが、画像検索して色んな写真を見たけど、どれも真顔であんまり笑ってない。クールな人なんかな。と思ってライブ見てみたら結構はっちゃけてる。写真で笑わない感じ、Kanye Westなんかな?曲を聴いても良いドラミングを聴かせてくれるので、きっと音楽一筋でやってきた人なのかもね。

音楽性

サウンド面においても色々語れる。「are you bored yet?」の時から思ってたが、やはり10年代前半のインディーロックの香りがする。特にTwo Door Cinema Club。きっと影響されてないのかもしれないけど、「Remember when」とかダンス要素の強い曲とか特に思い出させる。USのバンドって、アメリカが広大な土地を持つ国なだけに、州によって音楽性にも影響が出てくるのだけど、中には田舎っぽさがどうしても出てきてしまって、野暮ったいUSインディーもあるんだけど、Wallowsのこの作品は反してスタイリッシュな出来上がりとなっている。この点でTDCCを思い出したんだろうか。

TDCCだけでなく、イギリスの神様的バンド、ビートルズでさえ思い出す。Wallowsのこの作品は、ギター・インディーロックだけでなく、ドリームポップとか時にはサイケっぽい表情を見せてくれるのだが、ココが特に中期のビートルズっぽい。Scrawnyのブリッジ部分とか。
余りにも少数派の感じ方だと自分でも思ったので、調べてみたら、Wallows、ビートルズ、ツェッペリンなどが好きらしい。

INTERVIEW: Wallows talk ‘Spring’ EP and new album


で、調べてみて思ったんだが、この作品にはいくつか突然の転調が起きたり、曲の雰囲気をガラッと変える事があるのだが、こういった楽器から出る音から成り立たせるマジックは、ビートルズとかツェッペリンからの影響なんだろうか。


どの曲も約3分~4分で終わり無駄に長かったりすることもなく、また一曲一曲、それぞれの個性を持ち、キャッチーなメロディラインで聴きやすい。
さらにそれらのキャッチーな曲に加え、気持ちの良い曲の繋ぎと、ヴォーカル交代のコンビネーションの良さ、息ぴったりの演奏など色々魅力があるので、ほんとにデビューアルバムとして最高なのだ。

ループ

面白いことに、最後の曲と最初の曲も繋がっている。最後の曲でギターの音が少しずつゆっくりと小さくなっていくのだけど、「only friend」でそのギターの音のまんまスピードが速くなって演奏されるので、言わばこのアルバムが「終える」時は来ない。

まとめ

この作品を聴いていて、散々思った。作品タイトル「Nothing Happens」、直訳で「何も起きない」とあるが、この作品のあらゆる仕掛けられてるギミックに気づくと、「色んなことが起きまくり」とツッコミを入れたくなる。
Wallows、今作は最近の1stアルバムの中でもとびきり素晴らしいものであった。「一番」とは言いにくいが(Lost Cousinsのデビューアルバムも最高だったので)、音楽的な面白さの豊富さで言えば、今年一番の発見だった。
インディーロックファンはもちろんのこと、あらゆるジャンルのファンにも聴いてもらいたい素晴らしいデビュー作品だと思います。

#wallows #ワロウズ #音楽 #レビュー #インディーロック



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