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千葉市に現存する逓信建築の内部に入った

逓信は、テイシンと読むらしい。〒のマークは、その「テ」が元だという説を、以前に読んだことがある。昨日は、旧検見川無線送信所ワークショップの事前準備として、そんな時代の施設見学に参加した。昨冬、パナソニック汐留美術館で見た「分離派建築会100年展」の建築家と同時代に、同じ逓信省営繕課で活躍した建築家の設計。

展覧会では、橋梁は現存するものがあっても、建物はほとんど現存しないようで、残念に思った。まさにその時代の逓信建築を、内部まで見学する機会に恵まれるとは思わなかった。

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建築は好きでも素人であり、歴史音痴。だが、ワークショップを知り、施設の写真を検索し、これは汐留の展覧会で見たものと似ていると思った。施設見学も可能だったので、楽しみに応募した。

利活用を考えるのがメインなので、現地に詳しい訳でも、アイデア出しが得意な訳でもない私には合っていない。そんな思いと、地元の方を優先してほしいことを、動機欄に入力して応募した。思いがけず選任され、内部まで見学でき、感謝しかない。

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敷地にはロープが張られていた。普段は立入禁止なのか、敷地内の通路と思われる範囲でも、地面の土が、ふかふかと柔らかかった。

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敷地外には、同じデザインの、ベンチとコンクリート壁のセットがいくつもあり、素敵な雰囲気だと思った。

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建物内は、ヘルメットが貸し出されるほどの廃墟っぷりだったが、素っ気ない雰囲気の外観と、アーチで装飾された内部とのギャップが魅力的だった。

外観は、四角く素っ気ないとはいえ、カクカクではなく、角がカーブした柔らかいシルエットだった。給水塔は、かわいく見えるくらいだった。

内部も、古い学校をイメージするような方向で、装飾的とは言わないが、アーティスティックな空間だった。

どーもくんのようで、何だかかわいい給水塔。蔦が這い上がっているが、髪飾りのようにも見えた。

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屋上は、防水工事が終わっているようだった。

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ただ、傷みを広げないためか、外壁の開口部に鉄板が嵌められている。鉄板も古そうだったが、その錆が壁面を汚したせいか、不気味な雰囲気に見えた。周囲は、荒れ地という雰囲気の草が茂っていた。

そんな荒れた雰囲気を醸し出しているせいか、素敵な建築の外壁に、大きな落書きがいくつもある、残念な状態だった。

落書きを避けて撮ると、エントランス付近は、エントランス上部くらいしか写せなかった。これでも、少し写ってしまっている。

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現地に行く前は、公園の一角に残って、ベンチのように自由に憩える場所だと良いのかな、とイメージしていた。が、廃墟状態を直したとしても、今、公共の空間に求められる安全性を、満たせるとは思わなかった。

吹き抜け階段や屋上の柵は低かったり、今の感覚からは、バリアフリーを満たしていないという前に、危ない。見守る人が必須、という印象だった。

何になると良い、というアイデアはないが、二つ思うことはあった。

一つは、整った住宅街という立地だったので、周囲で暮らす人々が、施設を目にして、マイナスな感覚を持たない風景に整えてほしい、ということ。

大人は見慣れてしまうのかもしれないが、子どもの目に、不気味とか、どうでも良さそうに見える外観で、良いとは思わない。

その建築が、地元の方に必要かどうかは知らないし、なかなか決まらないという話なら、理解の範囲内。だが、まずは、「貴重なものらしいから、大人は考えている」という姿勢が伝わる、風景であってほしいと思った。

もう一つは、廃墟状態でも伝わる、十分な魅力はあるので、将来の用途や取り壊しは未定でも、現存しているうちに公開してほしいと思った。せっかく現存している、素敵な建築。常時ではなく、ときどきでも十分だと思う。

入口から先、もう少しくらいでも良いので整えて、無理なところは、ガラス張りで封鎖でも良いと思う。全部を復元しなくても、廃墟のままでも、いろいろな人に見てもらうだけの、価値はあると思う。

上野公園に、京成電鉄の旧博物館動物園駅がある。アートイベント会場となり、公開されていたのを見たことがある。ドーム天井のエントランスから入り、階段を踊場まで下りたら、その先はガラス張りで封鎖されていた。ガラスより先は、埃も多そうな、廃墟に近い光景だった。遺構というのだろうか。それでも、十分に魅力的だった。

私の下手な写真ではなく、素敵な表現で、現状を発信してほしい。こんなに素敵な空間が、なぜ先日のCHIBA FOTOの会場になったり、取り上げられたりしなかったのかと、心から残念に思った。

以下は、私の下手な内部写真。内部では、カメラ以前に、ヘルメットのせいか、眼鏡が曇りやすく、カメラを扱いにくかった。暗いこともあり、手ブレが激しい。

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見学時は、写真も動画もOKと聞いていたが、普段公開されていない施設のようなので、公開可能範囲を、ワークショップ事務局へメール確認してしまった。千葉市にも確認してくださり、返信をいただいた。

普段は公開していないからこそ、多くの人に興味を持ってほしい(人が写っていないなら、拡散希望)というようなご回答をいただいた。下手な写真が多くて気が引けるが、貴重な光景と思われ、公開することにした。