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京都で暮らす4年間



 春から京都で学ぶこととなった大学生諸君。ここ、京都で4年間を過ごす我々は非常に幸福であると言えるだろう。しかし、4年間で京都の魅力について気づくこともないまま、卒業してしまう学生もいる。
ただ、京都を味わうことなしに学生生活を終えることはすごく残念だな、と個人的に思うのだ。確かに皆が皆、京都が好きという理由で京都にやってきたわけではないだろう。偏差値に見合う大学があった、学びたいことがあった、などなど。歴史なんぞ学んでいないから、京都について何も知らなくてもいい、と。………もったいない。もったいなさすぎるぞ!!!
そこで、京都で暮らす4年間のうちに、訪れてほしい寺院や神社をここで紹介しておくことにする。空きコマに訪れることもよし、休日に訪れることもよし、思い立ったが吉日の精神で、京都という街を堪能してほしい。
※基本的に、訪れたことのある場所を中心に紹介しています。なぜ、ここがないんだ!というツッコミは甘んじて受け入れます。いわゆる金閣寺や銀閣寺といった修学旅行等で訪れる可能性のある場所については、割愛させていただきます。また、京都をあまり知らない人に向けた記事のため、ほとんど知られていないような寺院は紹介しておりません。deepな京都を知りたい方は、私が連載している京都遊覧記をご覧ください。(リンク以下)

https://note.com/2048_sunday/m/m9d161bf06e25

なお、今回の記事は京都大学を中心とした記事となっています。しかし、京都大学以外の学生も楽しめる記事の内容になっていると思います。

1.空きコマに訪れたい京都

 1コマや2コマ空いてしまう時、何をすればいいだろうか。そんな時、大学からすぐ近くを散策してみるというのも楽しいかもしれない。

①下鴨神社

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下鴨神社にある糺(ただす)の森。糺の森を抱える下鴨神社は、京都に都が遷る以前から、京都を見守ってきた。上賀茂神社と共に賀茂社として括られる下鴨神社は、鴨長明が『方丈記』を著した場所としても知られている。夏と秋で違って季節を見せる糺の森が、個人的に大好きだ。あの空間で、京都の夏を感じたい。糺の森から南に進んで、鴨川デルタで、時の流れを感じるのもまた心地良い。大学生の交流の場であるデルタから、京都を旅してもらいたい。
上賀茂神社は下鴨神社から3km北に歩いた場所にあるので、興味のある方は訪れてみてください。

②哲学の道

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京都大学から東に進むと、2kmほど南北に続く哲学の道を散策することができる。京都学派を代表する哲学者・西田幾多郎が思索にふけったと伝わる。

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哲学の道には猫もいる。ぜひ、探してみてほしい。

③法然院

哲学の道沿いには、法然院というあまり知られていない寺院がある。

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浄土宗の開祖・法然が弟子たちと開いた草庵が由来とされる。

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夏と秋の装い。いつ訪れても違う景色を見せてくれる京都という土地は、本当に楽しい。

④真正極楽寺(真如堂)

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"真正"の極楽は、こういう場所を指すのかもしれない。桜、青紅葉、紅葉、それぞれが絶景を生み出している。

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三重塔。景色によって様々な顔を見せてくれる。

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真正極楽寺でお気に入りの写真。大学から簡単に訪れることのできる”極楽”を経験してほしい。

⑤金戒光明寺

法然がこの地でうたたねをしていると、光が差し込んできた。そこに、仏のように輝く僧が現れて、法然を導いた、そんな逸話から建立された金戒光明寺である。

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何といっても迫力ある山門。幕末に京都守護職に任じられていた松平容保が本陣を置いた場所としても知られている。

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庭園は意匠が施されており、じっくり楽しむことができる。数々のテレビドラマ・映画でロケ地となった理由も納得である。

⑥詩仙堂

ここは今までの場所から少し離れているかもしれない。京都大学から少し北に進むと、詩仙堂という寺院がある。

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戦いをすることに疲れた戦国武将・石川丈山が造営した山荘だ。

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詩仙堂の鹿威し(ししおどし)は独特な音がするので、ぜひ1度聞いてみてほしい。平和な世を思った丈山の思いが、庭園から伝わってくるような気がするのだ。

2.下宿から旅する京都

 下宿先から京都を旅する、という計画もどうだろうか。ということで、京大生が下宿を置きがちである、叡山電鉄沿いや東山周辺にスポットを当ててみる。

ーーー Ⅰ. 叡山電鉄沿いに下宿を構えたあなた

①圓光寺

紅葉の名所として知られる圓光寺。

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開基は天下人・徳川家康だ。有名人が絡んでいる寺院が京都には非常に多い。やはり、京都の魅力から逃れられない所以だ。

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青紅葉が綺麗。京都の夏は「紅葉が綺麗な場所」を訪れる。京都観光の鉄則だ。ぜひ、夏の観光に困った時は、参考にしてほしい。

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京都の西側を一望することができた。

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京都、夏の一コマ。

②狸谷山不動院

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既に紹介した詩仙堂からさらに奥に進むと、狸谷山不動院が見えてくる。やや歩くことになるので、手軽な運動にもなる。入り口には狸の置物がずらりと並ぶ。

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250段の石段を登る。

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迫力ある舞台が見えてくる。京都の舞台は清水寺だけではない。圓光寺と共に京都の西側を見渡すことのできる最高の場所だ。

③曼殊院

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ちょっと視点を変えた紹介をしてみる。曼殊院でぜひ見てほしい点は、台所である。「台所?」と訝る方も多いだろうから、補足を加える。庫裏(くり)と呼ばれる寺院に備え付けられた台所の役割は、一般家庭と変わらない。しかし、お寺の台所というものは、なかなかユニークで面白いのだ。一見の価値は十分にある。曼殊院はそれだけではない。さらに、寺宝も魅力がいっぱい。日本三不動に数えられる黄不動や江戸時代の絵師の作品が数多く所蔵されている。門跡寺院という格式高い寺院であるからこそ、所蔵されている名作揃いなのだ。

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庭園もなかなか綺麗であるから、ぜひ訪れてほしい。

④実相院

岩倉にある門跡寺院。インスタ映えで知られる瑠璃光院の「床緑」や「床もみじ」の発祥の地とされている。写真撮影をすることはできないが、見るべき絶景の景色である。

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それ以外の庭は写真撮影可能なので、パシャリ。天気の良い日は、ここから比叡山方向が見渡せるのだが、この日は雪。代わりに、とてもすばらしい景色を堪能することができた。

⑤妙満寺

俳人・松永貞徳が作庭した「雪の庭」が位置する。「雪の庭」の名の通り、雪の降る日に訪れると美しい。

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石の上にちょこんと積もっている雪がかわいらしい。四季と京都の出会いは一期一会だ。どんな瞬間も心に留めておきたくなる。

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インド・ブッダガヤの大塔を模している仏舎利大塔である。日本風な寺院で異質に見える大塔は迫力があって、なかなか見応えがある。

⑥圓通寺

景色を借りる、と書いて借景と読む。圓通寺は、私が一番好きな借景の1つだ。

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京都にやってきてよかった、と思う瞬間は、こういう景色を見ている時に自然と感じるのだ。奥に望む比叡山を遮るものが何ひとつない。京都にしかない、京都にしか守れない、美しい景色だ。

ーーー Ⅱ. 東山周辺に下宿を構えたあなた

東山は観光地の宝庫である。下宿を構えている学生は幸せ者だ。

①平安神宮

入学式や卒業式が行われるみやこめっせが位置する岡崎公園。中心部に大きな位置する大きな鳥居をくぐり抜けると、平安神宮である。

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平安京を再現する形で作られた平安神宮は、ただその迫力に圧倒される。

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背後に高層ビルが立ち並んでいない景色から、京都という都市の片鱗を感じることができるのは、私だけだろうか。

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奥にある庭園も手入れが行き届いているため、なかなか趣がある。タイムスリップした感覚を味わえる、平安神宮。乙ですね。

②南禅寺

南禅寺はなんだか定期的に足を運びたくなる場所だ。何かを求めてというわけではない。気づいたら足が南禅寺に向かっているのだ。

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京都五山別格として知られる南禅寺は禅寺として最も格式が高い。歴史もさることながら、その伽藍の美しさに人々の足が向かない日はない。

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方丈の庭園。南禅寺の奥にあるため、訪れる人は少ないが、人々を魅了するための庭園が待ち受けている。

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水のせせらぎか聞こえる水路閣。美しいレンガ造りの橋だ。近年、観光客の増加に伴って、水路閣が人気スポットとなっている。

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秋になると色づく伽藍に心ひかれる。

③永観堂

京都にも様々な紅葉の名所がありますが、「紅葉の名所」と結びつきやすい寺院は永観堂ではないかと思う。紅葉シーズンに人でごった返す永観堂であるが、夏は夏でまた綺麗なのだ。

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紅葉シーズンには立ち入ることのできないエリア。新緑の季節に美しい場所は、秋に美しいに決まっている(2回目)。

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装いを一気に変える秋ももちろん必見だ。

④蹴上インクライン

 インクラインは京都と大津を繋ぐ貨物の輸送を担っていた。高低差のある区間で、台車に荷物を乗せて運ぶことができる。近年は、そのロケーションから若者に人気となっている。

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春には装いを変える。

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歴史と観光が融合している風光明媚な場所だ。

⑤知恩院

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浄土宗の総本山。知恩院の特徴は何といっても、城郭のような構造。徳川家康は二条城と知恩院を要塞にすることを考えていたという。

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知恩院に所蔵されている国宝『阿弥陀如来二十五菩薩来迎図』をもとに作庭された「二十五菩薩の庭」だ。それぞれの刈り込みが菩薩を表現していると伝わっている。趣深い庭園だ。

⑥将軍塚

東山新名所として話題を集めている将軍塚。何といっても京都の市街を一望することのできる展望台が魅力である。

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賀茂川と高野川が合流するデルタが一望できる。

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京都タワーを見下ろすことができる。新名所・将軍塚にぜひお越しあれ。

3.洛中を旅する京都

 洛中、いわゆる平安京の碁盤の目に組み込まれていた地域を指す。京都の中心をなす洛中周辺にあるおすすめの寺院・神社を紹介する。

①北野天満宮

学問の神様・菅原道真を祀る。

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天満宮といえば、やはり牛だろう。道真の使いとして牛が信仰され続けている。

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学力の向上を願って、訪れるといいかもしれない。

②妙心寺退蔵院

洛中の北西部、花園に妙心寺は位置している。妙心寺はなんと約50の塔頭を抱えている。今回は、塔頭の1つである退蔵院を紹介したい。

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瓢箪で鮎を捕まえようとしている様子を描いた公案問答の代表的絵画『瓢鮎図』が所蔵されている。

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「昭和の小堀遠州」と称された中根金作が作庭した余香苑。

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秋には一本の美しい紅葉が咲き誇る。1本の紅葉と我慢比べをしていたい。

③渉成園

 次は五条へと足を運んでみよう。

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東本願寺の飛地境内で、詩仙堂を手がけた石川丈山が作庭した。独特な建物がおりなす渉成園は京都の夏を感じることができる。

④西本願寺

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世界遺産に登録されている西本願寺は、廊下が美しい。寝転びたい廊下だ。金閣、銀閣と並んで「京の三閣」と称される飛雲閣が位置している。飛雲閣は予約が必要なので、事前に連絡をすることが必要である。

⑤東寺(教王護国寺)

京都に西日本からやってくる人は東寺を目にする確率が非常に高いと思われる。

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五重塔が京都の玄関口として我々を迎えている。

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弘法大師こと空海が、嵯峨天皇から与えられた土地で、真言密教の布教に努めた東寺。やはり、真言密教に関する展示が豊富だ。両界曼荼羅、仏像、密教法具…数え上げるときりがない。仏教を学んだ上で、訪れるとまた違った景色が見える格式高い寺院だ。

4.洛外を旅する京都

 ここまで、大学生が大学や下宿から簡単に訪れることのできる場所を紹介してきた。しかし、ここから紹介する名所は、空きコマに行けるほど近い場所ばかりではない。即ち、休日や全休(授業が1コマも入っていない日)に訪れることになる。訪れると決まったら、存分に時間を使ってほしい。1つのパノラマを、穏やかな気持ちで、安らかに眺めてほしいのだ。それだけで何だか気分が楽になった気がする。京都とは、そういう都市なのだ。京都という都市は、人々に活力を与えてくれる。それでは、紹介していこう。

①建仁寺

 まずは洛東から。

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迫力ある双龍図。建仁寺は様々な絵画が所蔵されており、俵屋宗達の『風神雷図屏風』も所蔵されているのだ。

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木漏れ日の差し込み方が好きだ。ずっと眺めていられる。

②高台寺

 豊臣秀吉の妻・ねねが建立した寺院。

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龍が表現されている庭。迫力があり、今にも動きそうだ。

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階段も龍の背中のように見える。豊臣氏の滅亡を、ねねはここから眺めることしかできなかった。敗者の悲しい歴史が、高台寺には秘められている。

③三十三間堂

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名前だけなら、知っている人も多い三十三間堂。後白河上皇が平清盛に建立させたと伝わる。三十三間堂の魅力といえば、やはり1000体以上の仏像。見る者全てが圧倒される仏像の数である。とてつもない力を感じる仏像に惹かれること間違いなし!

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訪れた時期は春でした。

④東福寺

東福寺といえばやはり、紅葉で一色に染まった通天橋の景色が印象的だ。しかし、まだその景色を直接見たことはない。今年こそは、訪れたい秋の東福寺。

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東福寺方丈庭園は、重森三玲という有名な庭師が手がけている。市松模様の庭園は、なんだか見ていて楽しい。現代の趣向が凝らされている庭園もまた綺麗なのだ。

⑤仁和寺

 仁和寺は、桜・紅葉の名所として知られている。特に、仁和寺の御室桜は遅咲きで有名であるため、京都の桜を最後まで楽しめるとして人気となっている。

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御室桜は低い位置に花を咲かせるため、非常に距離が近い。目の前に桜が咲き誇っている景色は絶景としか言いようがない。

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宸殿の庭園は奥行きを感じさせる設計となっているため、開放感に浸ることができる。

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現代アートと融合していた。

⑥平等院

 紹介する場所が一気に遠くなります。10円玉に描かれている平等院。

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私も訪れたことはあるが、じっくり参拝した記憶はあまりない。今度、じっくり散策してみたい。実は、平等院は平等院だけで完結しない。平等院周辺の宇治の街を散策することで、何十倍もの楽しさを味わうことができるのだ。宇治でスイーツを頬張りながら、平等院を訪れるツアーも悪くないかもしれない。

⑦石清水八幡宮

登山好きにはたまらない石清水八幡宮。『徒然草』「仁和寺にある法師」で、仁和寺の法師が結局行かなかった、でおなじみである。

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ケーブルカーもあるので、体力に自信のない人はこれで登れる。

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訪れた日はあいにくの雨だった。次、訪れる時は登山したいものだ。

⑧長岡天満宮

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水面に架かる橋が公園のようで、市民の憩いの場となっている。

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菅原道真が左遷されて、太宰府へ下る時に立ち寄ったことが、創立の経緯とされている。キリシマツツジが咲く季節になると、境内いっぱいに花が咲き誇る。もうすぐ咲き誇る季節がやってきますかね。

5.さらに知りたい京都

 京都の中でも、よく知られている寺院・神社を中心に紹介してきたが、まだまだ紹介したい名所はたくさんある。紹介しきれなかった名所を訪れた旅日記「京都遊覧記」をこれまでに投稿しているので、興味を持った方は以下のリンクから、目を通してみてほしい。(鉤括弧で紹介された名所について記載)
※記事が非常に多いので、興味を持った地域について記述されている記事を旅の参考にしていただければ、と思います。

1.高雄(神護寺・高山寺)・上賀茂神社が気になるあなたへ

2.鞍馬・貴船が気になるあなたへ

3.大原が気になるあなたへ

4.衣笠(妙心寺・仁和寺・龍安寺)が気になるあなたへ

5.山科(毘沙門堂)・醍醐(醍醐寺)が気になるあなたへ

6.嵐山・嵯峨野が気になるあなたへ

7.西山(善峯寺・十輪寺・光明寺)が気になるあなたへ

8.伏見が気になるあなたへ

9.太秦が気になるあなたへ

「京都遊覧記」は、定期的に更新していますので、興味があれば、以下のリンクからご覧ください。今後、これまでの記事で取り上げられなかった地域について、随時紹介していく予定です。

https://note.com/2048_sunday/m/m9d161bf06e25

長い長い京都についてただ語り尽くす記事にお付き合いくださり、ありがとうございました。皆さんが、京都について関心を持ってくれる動機の1つになれば幸いです。お読みくださり、ありがとうございました。


#旅行 #京都 #歴史 #春から京都 #大学生

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