見出し画像

備忘録。6

 『Voice』のインタビューで影山優佳が「本を読むことで自分の世界がいかに狭いかを知る」という指摘をしていて、私の読書はそういう目的があるのかもしれない、と思った。小説は自分とは違う人の人生を追体験することができて、新書はそもそも知らないジャンルの物事について教えてくれる(影山優佳を説明なしに引用で使うな。そういえば、W杯の20試合以上の中継に出演するらしいですね。純粋に尊敬の念)。
 これはどうでもいい話であるが、図書館からローリングストックをしているので、一向に手持ちの積読が減らない。古本市も罪が重い。私を出禁にしてほしい。

1.金敬哲『韓国 超ネット社会の闇』(新潮新書)

 韓国のネット社会の発展は凄まじい。BTSを筆頭に、ネットをきっかけに世界的人気を獲得したアーティストが数多く生まれている。しかし、その一方でネットが生み出す負の側面、極端な例で言うと、SNSを利用した未成年への犯罪行為であろうか、そのような一面もある。本書は上記の出来事を例に挙げながら、韓国のネット社会の光と闇を記述している。
 私が本書を読んで思ったことは、世界中でネット社会の光が強まるにつれて、闇も一層濃くなるのではないかということだ。ネット社会の広まりに伴ってデジタル化が進むと当然、その波に乗ることができず、取り残される人も生まれてしまう。実際、本書ではデジタル化が進む中で取り残されている高齢者が紹介されていた。今後、世界中でデジタル化が韓国のように進むと考えられるが、その中で波に乗れない人をどのようにケアするかが重要なのではないかと思った。

2.古賀太『美術展の不都合な真実』(新潮新書)

 企画展は料金がどこも同じくらいだよなとか、企画展の料金で常設展も見ることができる展覧会ってどういうことなんだろう、みたいなわざわざ言語化するほどでもない疑問に対する答えを本書は与えてくれた。そもそも論として、日本と海外の美術館の展示方式の違いや企画展の実現までの一連の流れなどを紹介した後に、実際に企画展に携わったことがあるからこそ分かる視点から、企画展の実情を明かしている。「え、実際はそういうことだったの…」みたいな幻滅する話がなかったというと嘘になるが、ある程度こういうことを知っておいてもいいのかなと思った。ただ、企画展に人を呼び込む仕掛けを理解してもなお、人の多い企画展だけはちょっと避けたいかな。

3.石田光規『「友だち」から自由になる』(光文社新書)

  「はじめに」で那須正幹の「ファンレターに、三人組のような関係が『うらやましい』と書かれていることが多くなった。好きなことを言い合い、けんかをしてもすぐに仲直り、何かあった時は協力する。そんな三人組のような友達関係を想像することが、難しくなっているのだという。」というコメントが紹介されている(「三人組」とは、もちろん『ズッコケ三人組』のことである)。『ズッコケ三人組』の作品をほとんど読んだことがある私は、3人のように色々な経験、とは言わないが、それなりに楽しい小学校生活を送った覚えがある。そういう「友だち」の関係が現在では変化しているという。私は直感的にこの話を理解できなかったが、本書を読む中で確かに、現在の「友だち」という観念は昔の「友だち」とは違うのかもしれないな、と思うようになった。
 そもそも、私が「友だち」に対する観念の変化を直感的に理解できなかったことには、私の「友だち」に対する考え方が現代的なものとは違っているからではないかと思っている。私は割と「草舟」みたいな所があるので、そこまで人間関係に固執していないと(個人的に)思っている(某文学作品の語彙)。これは別に人間関係が必要ない、と考えているのではなく、「あるがままに生きる」というような考え方を私が持っているということである。そのため、人間関係が上手くいかなかったら仕方ない、上手くいけばべりーぐっどのように割り切ることがこれまでの人生でもあったような気がする。そもそも人を嫌いになることが少ないからかもしれないが。現代の「友だち」は、人間関係の破綻を恐れて波風を立てない、悩み事の相談は両親に取って代わられた、コスパが求められるなどの特徴があると本書で指摘されている。「ファスト◯◯」という言葉が溢れている現代社会で、「コスパ」という観念が持ち込まれるのはいかにも、という感じであるが、実際、昨今の大学生の人間関係構築の際の指標で、その人自身の能力が重視されているという記事を以前読んだことがある。『ズッコケ三人組』の三人組のような関係性のままで「友だち」でいることがそんなに難しい時代になってしまったのだろうか。

4.小松理虔『新地方論』(光文社新書)

 福島県いわき市で暮らす著者が日々の生活の中で考えた、地域をよりよくするにはどうすればいいか、のような思索をテーマごとに綴っている一冊。個人的には「スポーツ」の章が興味深かった。「スポーツ」の章では、いわきFCというサッカークラブを例に挙げて、地方との結びつきを考えている。ミーハーの著者が初観戦を経てから、どのようにサッカークラブを応援するようになったか。そのプロセスの中にある地域との多様な関わり方に、私は地方都市の今後の可能性を見た。他の章でも、住民と特定の個人・団体との多様な関わり方が紹介されており、いわき市の生活を少し覗いてみたいと思った。

5.佐藤洋一郎『京都の食文化』(中公新書)

 10月に京料理が登録無形文化財になる、というニュースを見た。狙ったわけではないだろうが、タイムリーな一冊。京都検定の勉強を少ししていただけあって、大体の話は知っていたが、それでも知らないことも多く、京都は奥深い都市だなと改めて思った。「水」に関する言及が多く、京都はやはり水が重要ということらしい。また、衣笠丼を本場で食べていないことに読みながら気づく(生協では食べたのですが…)。東華菜館もなんだかんだ行っていない。積み残しが多すぎる。

 では、また今度。

#読書 #新書 #新潮新書 #光文社新書 #中公新書

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?