アンバランスにつきだしていた釣り鐘みたいな二つの丘

まだなんにもわからなかった娘の頃にふくらみ始めた私のつぼみ

恥ずかしくもあり悩ましくもあり美しくもあり いとおしい私の女性の二つの丘

母になれた喜びにはち切れんばかりにメロンのように張り 泣き止まない涙のように溢れた生まれた子のための生きていくための兵糧

ああ まだうら若きころ 中にある小さな岩に悩まされ 右手の丘をくりぬかなければならなかった悲しみ

たくさんの幸せな時間 我が子を腕に抱き

白い白い乳を飲ませた小さな命の思い出の丘を切り取るなんて

あれからいく歳月が過ぎただろう

まるでそれはモッツァレラみたいに白く丸くふくらみ柔らかいのに

何度泣いただろうか
また 切るなんて
針を刺してしまうなんて
丘を失くすかもしれないなんて

鏡の前で両手で自分を抱き締める

赤や青や白や黒 レエスとフリルで飾られた白い丘はあの日 　娘からの　　 バイバイ　で役目を負えたはずなのに

もしも ミロのヴィーナスの彫刻の乳房が片方割れてしまったら

それでも私はヴィーナスを美しいと言えるだろうか

乳房 それは女性の女性である象徴

こんなにも老いてしまっていても女でありたいと

傷口の痛む乳房を
まだ形ある二つの丘を

失くしたくない

私は自分の両の乳房をこんなにも愛しいと想う

ゆー。