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凪良ゆう『滅びの前のシャングリラ』

今夜には日本をたたなければならないというのに、最後の準備もそこそこに、地球が滅亡する話を読んだ。一瞬で滅亡してくれればいいものを、滅亡が予言されてしまうと「滅亡する」過程を味わう羽目になる。滅亡していく様は、滅亡した瞬間よりもよっぽど滅亡したくなる。

幾つかの短編が折り重なるように話が紡がれていくこの本は、凪良ゆうっぽくないなと思う気持ちと、やっぱり凪良ゆうだと思う気持ちでいっぱいになる。
気付くとあっという間に読み終えていて、とにかく、私は彼女の作品が好きなのだなと実感する。
彼女の作品にしてはあまりにも幸せな結末で(人はたくさん死んだけど、たくさん殺したけど)、よかったねと思いながら、そういえば彼女はいつも、お願いだからこうあってくれの、こうのほうに導いてくれる人だったなとも思う。
宗教は人を滅ぼす反面救いもするのだよな、誰かにとっての殺人鬼も誰かにとっては愛息子の可能性もあって、と、両面性についても考えさせられた。

日本から飛び立つ前に読むには不適切だったかもしれないが(もっと幸せ幸せした話で心を落ち着かせるべきだったかも)、まあ、よしとする。世界が滅ぶときには日本にいてもいなくても、同じだからね。


─国際線ターミナルにて

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