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紫陽花の咲くころに、小湊鉄道の写真を撮りに行く。

梅雨の千葉・小湊鉄道。 夜行バスで神戸からはるばる関東入りした。夜行バスを取ったのはつい2日前。2500円という破格で移動できるというのは、貧乏旅行者にはつくづくありがたいことである。幸い夜行バスとは相性がいい体を持っている。直前に調べれば紫陽花が綺麗なところが沿線にあるらしいから、それを撮ろうと五井へ向かう。

JRの列車を降りると、目の前には昭和が広がっていた。改札を出て跨線橋より見下ろすと、キハ200という気動車がいた。調べると、国鉄キハ20をベースに作られた車両らしい。少し前までは全てこの車両だったが、最近キハ40がJRからやってきた。

車両基地にある、あまり動いていなさそうな車両をスナップする。東京の列車に馴れておらず、五井に行くのに久里浜行きに乗ったりしてしまったため、予定よりだいぶ遅い到着に。馬鹿である。多少練ってきていた予定は、この時点でもうあまり意味をなさなくなってしまった。


とりあえず一つ隣の、上総村上駅へやってきた。

駅名標は国鉄風である。とことん昭和らしくあろうとしている。そして、こうやって昭和をありがたがる私は、そもそも昭和に生きたことはない。

そろそろ紫陽花と撮れるところへ行こうと思い、月崎という駅を訪れることにした。


このあたりになると田舎というか、森だという感じが増してくる。駅舎は国の登録有形文化財に登録されているらしい。駅前のヤマザキで入場券を売っているらしいから、しっかりと購入してホームに入った。


ホームにはいくつか紫陽花があったので、五井へ向かう列車と一枚。
向かいには使われなくなったホームがあり、そこには紫陽花が沢山咲いていた。列車とは合わせずらい位置にあるのが残念である。


この鉄道は心優しい。普通の乗客に対してはもちろんだが、撮り鉄等の鉄道ファンに対しても、サービス精神が旺盛であるのだ。

この写真の全面貫通扉の窓を見てほしい。乗務員が手を振っている。
小湊鉄道では、車内で車掌さんが補充券を発券するのだが、この際にも気さくに話をしてくださる。鉄道ファンにやさしい鉄道だと感じた。


月崎から上総中野のほうへ歩くと、紫陽花と合わせて撮ることのできる撮影地があり、この日この場所には3名の同業者がカメラを構えていた。


写真を見ると何もない原っぱ。この場所は、春には菜の花が咲き、撮り鉄のみならず多くの撮影者が訪れる人気の撮影地だ。


直ぐ近くにはこのように鳥居と共に撮ることのできる神社もある。


列車で養老渓谷を訪れた。列車の一部は終点の一つ手前であるこの駅で折り返していく。ここまでの本数でさえ少ないのに、終点の上総中野へ行く列車はというと….。


この訪問の約3か月後、大雨による被災があり、現在でも月崎~上総中野間でバス代行を行っている。復旧のめども立っていないらしい。

ローカル線を災害が襲い、廃線などの悲しい結末を迎える事例が多い中、この素晴らしい路線の運命はどうなるのか。鉄道ファンとしてはやはり残してほしいわけであるが….。


上総川間の駅に降り立ち列車を見送った。今日乗った列車はと言うと、どれもキハ40だった。やはりこの路線のオリジナルであるキハ200にも乗っておきたいわけであるが….。

駅を降りて撮れそうなところを探しても、ピンとくる場所はなかった。列車の通過する時刻が近づいていたが、妥協した写真は撮りたくなかったから、ぎりぎりまで探し続けた。結果、途中に階段があり、そこから紫陽花と合わせて撮ることのできる場所を見つけたのだった。グラデーションの美しい紫陽花が咲いていたから、これは運がよかったなと振り返る。


迎えの列車はやはりキハ40であった。小湊鉄道に来てキハ200に乗れない時代である。もはやここはJR西のローカル線だ。津山線である。


名前が気になって、途中の駅で降りてみた。

「海士有木駅」

あまありき と読む。すでに日は暮れている。

古めかしい駅が多く残っているわけであるが、この駅は、これまた登録有形文化財であるらしい。小湊鉄道に乗っていると、この登録を受けた建造物が多く、なんだかその威厳が薄れてくる気もする。


ブルーモーメントと言うべきか。この時間は好きだ。夜の写真を撮りたいとき、私は、正確にはこの時間に撮れる絵を撮りたいという場合が多い。ほんとうの夜は私には暗すぎる。


無人駅である。小湊鉄道であれば全駅に駅員が配置されていてもおかしくないように思うが、そんなところに使えるお金があるわけはないのである。どれだけ人気で知名度のあるローカル線でも、ローカル線はローカル線である。赤字とは隣り合わせ というか、赤字なのだ。


最後の数駅の移動に、やっとこのキハ200に乗ることができた。こいつはキハ40と違ってロングシートだ。窓が開いていたが、なんだか虫やら葉やらが飛んできて大変だった。

折り返しをJRのホームから見送り、千葉のローカル線を撮る今回の旅は終了だ。 次回は春に訪れようか。いや、人が多いだろうから、今度ももう一度紫陽花を撮りに来ようか。

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