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自分の就職活動について④

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3年の春から就職活動を始めようと思ったのは良いのだが、何から始めれば良いのか分からない。
確かにメディア系の志望度は高かったが、狭き門であることも分かっていたので、他の業界に関しても調べておきたいと思っていた。
一度合同インターン説明会のようなものに参加してみたが、ピンと来なかった。

そこで私は、メンターが就活の相談に乗ってくれる「就職サポート団体E」の力を借りることにした。

自分のメンターについてくれたMさんは、自分の経歴を整理して、今後の方針を示してくれた。夏までの行動指針は、とりあえず様々な業界をみること。

とりあえず、自分は当初のままメディア系を目指しながら、他の業界にも話を聞きに行ったり、インターンのESを出すことにした。

夏のインターンを出したのは、メディア・印刷・広告・メーカーなど、10社ほど。
その内 通ったのは、半分の5社。半日の簡単なものから、5日間のやや拘束時間が長いものまで、様々なものを行った。

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夏のインターンの中で、1つ印象的だったものの話をしたい。自分の就活の大きなストーリーラインとは大きく関係があるわけではないが、余談として記述しておく。

それはベンチャー企業Iの「キャンプに行ってリーダーシップ力を鍛える」というインターンだ。

このインターンに出会った時、よく分からないインターンだと思った。
だが同時に、「どんなインターンなのだろう?」と、興味を持ったことも事実だ。

去年のインターンの開催の動画を見ると、参加している女の子が泣いている。更に謎が深まった。

エントリーシート代わりの動画を提出すると、何故か通過し、参加出来る運びとなった。

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そのインターンの目的とは、至ってシンプルで、3チームに別れてアクティビティでの勝利を目指すことだ。各アクティビティの順位によってポイントが入る。3日間行い、最終的なポイントの合計が高かったチームが総合優勝となる。

結論から言えば、そのインターンでは、3日間に渡って「ベンチャーっぽい儀式」のようなものが行われた。

まず、初日の夜に、火を囲みながら「リーダー・副リーダー」を決める。
そして、目隠しをしてテントを作り「伝達力」を鍛える、森の中で宝探しを行い「判断力」を養う、湖を声を揃えてカヌーで渡る… 様々なアクティビティを「リーダーシップを養う」という名目でこなしていった。

環境とは怖いものだ。次第に、私はその雰囲気に飲み込まれていった。総合優勝をしたって報酬など何も無いのだが、湧き上がる使命感に動かされ、勝利を貪欲に目指した。
2日目のプログラムを終えた時点でチームは総合優勝を狙える位置にあり、最後まで勝利を目指したいと皆が強く感じていた。

だが2日目の夜、ある事件が起こった。
1日目に決めた副リーダーが2日目のリーダーの指揮・行動を批判し始め、深夜に急遽としてチーム会議が開かれた。そして、それを皮切りに、チームメンバーもそれぞれの不満を吐露し始めた。

雰囲気は人間の正常な判断を狂わす。そんな修羅場とも思える状況にでさえ、私は高揚を覚えていた。
率先して、チームの問題点を指摘し、最後の1日をどう過ごすべきかを話し合った。
数時間の議論の末にチームは危機を乗り越え、最終日の3日目に向けてより結束を固くした。自分はなんとも言えない満足感に満たされていた。

運命の3日目を迎えた。
昨夜「雨降って地固まる」を体現した私達のチームは、快進撃を続けた。

3日目の最終競技は、「7人8脚」であった。
開始時点の点数は我々のチームが1位であり、大きく他チームを突き放していた。

そこで、インターンを仕切っていた人事の方が、どのチームにもチャンスが残るように点数調整を行った。バラエティ番組によくある、「最後の競技は特別に100点!」というヤツだ。

このまま順当に行けば 何位になっても自分のチームが総合優勝していたのに、ここに来て その得点調整はどうも納得がいかないな

その時、自分の中で何かのスイッチが切れた。どこか不条理を感じ、俯瞰的にそのインターン全体を見てしまった故だ。インターンに没入することが出来なくなってしまった。

それでも、「7人8脚」にチーム一丸となって、誰よりも声を出しながら臨んだ。

「7人8脚」の結果は2位だった。我々のチームは、総合優勝を惜しくも逃した。
悔しいと言えば、確かに悔しかった。3日間チームのみんなで苦難を乗り越えて来たからだ。

しかし、自分には、やはり恣意的な得点調整がどこか引っ掛かっていた。

チームメンバーを見ると、男も女も等しく、自分以外の全員が号泣していた。
私は何とも言えない疎外感に苛まれた。私だって皆と一緒に泣きたかった。
だが、突如突きつけられた不条理が自分の感情の発露を妨げていた。

そして私は、インターン中で初めて、得体の知れない「気持ち悪さ」を感じたのだった。

今思えば、ベンチャー企業は自分の体質には合わなかった。しかし、そのことに気付くのはもう少し先のことである。インターンの体験をもとに、この時点で気付けていれば、自分の就職活動の過程はより実のあるものであったかもしれない。
ただ、それはどこまで行っても「If」の話であるのだろうが。


⑤に続く


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