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人はどうやって縄文ファンになっていくか

人はどうやって縄文ファンになっていくのだろうか。いまだに謎のヴェールに包まれたそのプロセスを、縄文ファンであり、縄文界隈ウォッチャーである筆者が解析してみることにした。異論反論ももちろんあると思いますが、この図と解説はそれらを反映し更新していきたいと考えています。ぜひご意見などください。
今まで色々なメディアの取材を受けることも多かったのですが、縄文ファンという得体の知れない存在に対しての読み間違いや、女性ファンについての予測値(期待値)がズレまくっていることが多かった(縄文女子問題が縄文界隈にもあったのです)での、あえて年齢層と男女比を体感値として記してみました。あくまでも参考までにこのような傾向があると思ってください。

縄文ファン

1 研究者

一般的に大学や公職に属している縄文研究者のこと。純粋に縄文ファンではなく、仕事として、時代を研究対象としている。しかし、ほとんどの研究者は縄文ファンを経由して研究者となっている。また、仕事として対象物を見る目線のどこかにファン目線がないとは言わせない。研究者もまた広義の意味では縄文ファンであるはずなのだが、そこには一線を引いている人は多い。ほとんどの研究者は話すと面白いのだが、文章になると途端にサービス精神がなくなっていつもの論文調になってしまうのが玉に瑕だ。

2 博物館経由縄文ファン

博物館の展示を見て縄文ファンになった人たち。研究者や教育の現場から一番予測しやすく、理想的でストレートな縄文ファンで一番のボリューム層。興味の範囲は雑食的に広く、各ジャンルの理解力も高い。実際に展示などもよく見にいく。ただし、トーハクなどの大きな展示などに興味を左右されることも大きく、そういう点では主体性に乏しいとも言えるだろう。2018年のトーハクでの縄文展で縄文ファンになった人も多い。(年齢層:幅広い 男女比:男4:女6)

3 在野の研究者

大学や公職に属さない研究者のことをいう。公職であっても学校の教員など直接研究を職としていない者も含む。別に職業を持ち、趣味として始めた研究が高じ過ぎて職業を凌駕してしまっている人も多い。在野と言っても専門の教育課程を経ている人物も多く、かつては地域での研究や発掘成果は在野の研究者の功績もかなり大きかった。その情熱は大学の研究者のそれを凌ぐ場合も多い。
しかし在野の研究者の中には、在野ゆえとんでもない結論を温めてしまう場合もある。(年齢層:やや高め 男女比:男9:女1)

4 考古館、郷土館経由の縄文ファン

博物館の次の段階に位置し、よりコアなもの、よりニッチなものに向かう傾向がある。地元の遺跡の発掘作業のバイトで発掘に関わったり、何度も通うことで考古館の職員と仲良くなったり、より深く縄文を楽しむようになる人が多い。思い入れも深い。(年齢層:やや高め 男女比:男7:女3)

5 学校のさまざまな活動から縄文が好きになる少年少女

縄文時代の所縁の深い地域の小学校や中学校では、通常の歴史の授業以外でも課外授業や社会活動や見学会などで、縄文時代に触れることがある。その過程で縄文時代に興味を持つ少年少女は少なくない。しかし、残念ながら学年が上がるにつれ、進学をするにつれ、徐々に縄文からは離れていく。ただし、この原体験が後に、彼・彼女の人生に顔を出すこともあるかもしれない。さらにこの頃に遺跡で土器を拾った体験があると、後に研究者や熱心な縄文ファンになる可能性が高まる(年齢層:小学校高学年〜中学校の中二の夏まで 男女比:男5:女5)

6 郷土史家タイプ

その平均年齢は高い。定年退職後に郷土との関わりや自身のルーツを見つめるため、郷土史を研究、その源流としての縄文時代に行き着く方が多い。定年退職はしても職業を極めた方も多く、自身のバックグラウンドや経験に裏付けられた研究は一見の価値がある。しかし、在野の研究者同様とんでもない結論を温めてしまう場合もあるので注意だ。時間もあるのでフットワークも軽く熱心で郷土を愛する。シンポジウムにもよく出席する。(年齢層:超高め 男女比:男10:女0)

7 日本史経由縄文ファン

日本史を経由して縄文ファンになるというのが王道のように思える方も多いかもしれない。しかし、このルートは意外と細い。歴史好きはなぜか縄文ファンにならない。日本の歴史7代不思議の一つ。可能性としてあるのは一旦古墳時代を経由して縄文ファンになるケース。縄文時代の楽しみ方は他の日本の歴史と違う部分が大きいのだろう。(年齢層:やや高め 男女比:男7:女3)

8 世界史経由縄文ファン

縄文時代とは関係のないように思える世界史だが、その中でも先史時代が好きな人にとっては意外と縄文時代は身近な存在だ。楽しみ方やその味わいにも共通点がある。日本史経由と世界史経由の縄文ファンがほぼ同じくらいいるのが縄文の特異性でもある。プリミティブな魅力は世界共通なのだ。(年齢層:やや高め 男女比:男7:女3)

9 日本神話経由縄文ファン

日本神話を経由する縄文ファンも多い。世界的にも先史時代は神話と結びつきやすい傾向にあり、実際結びついていることも少なくないので、このルートも決して細くはない。ただし、神話それ自体は、たとえ事実に基づいていたとしても「フィクション」であるはずなので、その距離感を間違えると一気にオカルト系になってしまうことも。(年齢層:30〜60代 男女比:男5:女5)

10 プリミティブ、民俗学経由縄文ファン

世界史と民俗学をプリミティブがつなぐ。世界の狩猟採集社会、日本に今も残されている様々な風習、かつてあったお祭り。日本の民俗学と縄文時代の遺物を結びつける研究者も多く、民俗学と縄文時代も親和性が高い。(年齢層:高め 男女比:男9:女1)

11 岡本太郎経由アートとしての縄文土器

縄文土器にアートとしての視点を始めて持ちこんだ人物。やはりこの人の功績は大きい。最初の発表「縄文土器論、四次元との対話」からすでに70年経っていてもいまだに影響力がある。アートの視点だけではなく岡本太郎自身は地域性と縄文文化、日本の民俗にも造詣が深かった。(年齢層:高いが幅広い 男女比:男5:女5)

12 アート系縄文ファン

考古、歴史、郷土とはまったく違う文脈で縄文に注目するケースの代表がこれだ。研究対象ではなく、芸術作品として縄文土器を楽しむ視点を持つ。研究者が取りこぼしている視点を持ち、個人的には重要な指摘も多いと思っている。ただし、造形にこだわるあまり、その背景や縄文時代の地域性や文化にまで目がいかないケースも多く、「カッコイイ」から先に進まない場合もある。創作のノイズになるので「あえて」概説を入れていないという筋金入りのお話も聞いたことがある。(年齢層:幅広い 男女比:男6:女4)

13 デザインとしての縄文土器

デザインとしてその造形の面白さに注目している層。デザインやイラスト、インテリアなどに興味があり、自身の仕事や生活に取り入れようとするが、なかなか縄文時代を乗りこなせず苦労する。グッズ制作や購買もよくするが、アート系同様、造形にしか目がいっていない場合もある。(年齢層:20〜40代 男女比:男5:女5)

14 SNSで見ました系

どの分野もSNSの影響力は大きくなってきている。またその拡散力と影響力で縄文ファンの入り口になっている。数年前まではまったく無風に近かった縄文関連の投稿も最近では意外な広がりを見せている。
考古好きがSNS上に増えてきていることや、縄文のイメージが「イケてる」「ユーモアのある」イメージに変わりつつあり、(以前に比べて)比較的バズりやすくなっているようだ。ただし、主戦場はTwitterとfaceBookのみ。やはりちょっと年齢層は高め(年齢層:20後半〜50代 男女比:男6:女4)

15 ポップカルチャー縄文、第一世代

ファッションや小説、漫画、音楽、さまざまなカルチャーに引用される「縄文時代」をきっかけに縄文ファンになった層。ジブリ映画や水木しげる、諸星大二郎など。しかし、残念ながら「それ」きっかけで縄文ファンになった人はそれほど多くない。縄文時代の入り口にはなりづらかったようだ。とはいえ、作品として残されているのは心強い。後からDigされることも、次世代のクリエーターに影響を与えることもある。(年齢層:40代〜 男女比:男9:女1)

16 ポップカルチャー縄文、第二世代

ここ10年で、ファッションや小説、漫画、音楽、さまざまなカルチャーに引用される「縄文時代」をきっかけに縄文ファンになった層。音楽で言えば「レキシ」、アニメやゲーム、ファッションデザイナーも「縄文」を引用。制作者自身が縄文時代に傾倒している場合も多い。ここにはポップカルチャー縄文第一世代の影響が大きい。残念ながら縄文界隈は市場として小さく、ビジネスとしてきちんと成り立たないため長続きしないことも多い。それでも「縄文」にベットするクリエイターに個人的にエールを送りたい。ゆっくりだけど、確実にきっかけになっている。(年齢層:20〜40代 男女比:男6:女4)

17 縄文ZINE読者

手前味噌ではあるし、やや図の丸も大きくしているのだが、縄文ZINE読者も一つの層になりつつある。特筆したいのは、そもそも縄文ZINE読者の中にはまったく縄文に興味のない方達がかなりの割合でいたということだ。興味のない層を振り向かせるのが一番難しい。しかし、反側スレスレの力技とヘンテコな笑いのせいで、大して尊敬されていない。おかしいでしょ!(年齢層:20後半〜50代前半 男女比:男3:女7)

18 一般書、概説書きっかけの縄文ファン

これも正当なルートと言えるだろう。硬軟様々な書籍があるが、まだその種類は少ないと感じる。縄文ZINEでも一般書を出している。縄文というモチーフは完璧で最高なので、あとは市場の大きさと書き手の力でしかないのだけど、なかなかビッグヒットは生まれない。特に研究者にとって一般のファンとの貴重な連絡路でもある。いかに魅力的な語り口を獲得するか、もしかしたら自身の研究以上に難しいタスクなのかもしれない。また、読者はヒヨコのように最初に読んだ本の著者に影響されるので、責任も重大だ。(年齢層:幅広い 男女比:男5:女5)

19 縄文ユートピア層

縄文時代は争いがなく平和な時代。そのたった一つのキーワードをポケットに忍ばせた縄文ファン。平和のイメージが強すぎて、話が通じない時がある。もちろん歴史を俯瞰してみれば決して間違いではないのだが、そのキーワードだけで縄文時代を見ることはあまり良いことではない。単純なキャッチフレーズでは収まらないのが縄文時代の魅力でもある。ただ、ユートピア層の人たちはみんな良い人。(年齢層:幅広い 男女比:男5:女5)

20 縄文オカルト層

縄文ユートピア層とネガポジの関係性にある層。都市伝説や何かの奇妙な一致や、お札の肖像画に過剰に反応する。縄文のもつ禍々しさや訳のわからなさがこの層を刺激している。ただし、この層は概説としての縄文時代を踏まえた上でエンタメとしてオカルトを楽しんでいるケースも多く、ユートピア層やスピ縄文に比べたら会話は成立する。(年齢層:30〜50 男女比:男8:女2)

21 スピ縄文

スピリチュアの視点で縄文時代を楽しむ層。ふわっとした精神的な概念で縄文時代を包んでいる。確かに縄文時代はスピリチュアな時代。そこに間違いはないのだが…、不思議なことに皆、一般的な縄文時代の概説とはまったく関係なくスピっている。スピ縄文は圧倒的に女性が多いのも不思議だ。夢で(何か)見たと言い出す人もいる。ただ時折思う。もしかしたら概説など踏まえなくても、意外と縄文の祈りを理解しているのは彼女たちなのかもしれない、と。(年齢層:30〜50 男女比:男2:女8)

22 日本すごい層

日本すごい層も縄文に近寄ってきている。確かに縄文はすごい。世界中見回しても特異な文化でもある。個人的には「最高」に面白いと思っている。ただし、世界の各地域には各地域ごとに興味深い文化があり、同じように「すごく」て「最高」なのを忘れてはいけない。「他に比べて」日本はすごいという語り口を見たら近寄ってはいけない。その「他」が韓国や中国だったらそれはただの「ネトウヨ」だ。ただし、この層の中にはものすごく素直なだけの人もいる。もうっ、しっかりして!(年齢層:30〜 男女比:男7:女3)

23 地域おこし縄文

地域をおこしや地域の活動の過程、その結果として縄文ファンになる人も多い。郷土史家タイプとはまた違う文脈で郷土の縄文に触れ、縄文が好きになる層。ただ、そもそもの目的が地域おこしなので、近視眼的になりすぎるきらいがある。俯瞰して縄文時代を見たり概説を踏まえない場合も多い。事業としての一面もあるので、「日本すごい層」が近寄る場合もあるので気をつけなければならない。土偶をキャラにしがちなのもこの層だと言える。ただし地域おこし縄文層は地元愛が強い。そのこと自体は地域性の強かった地元ラブな縄文時代にきちんとシンクロしている。一番土着的で縄文的な層と言えるだろう。専門的ではない強みもある。年齢層も若く、純粋に楽しむ力があり、新しいファンを獲得している。(年齢層:20〜40代 男女比:男5:女5)

24 陶芸、焼き物

最初の段階で埴輪ルートに乗ってしまう人もいるが、陶芸や焼き物は土器作りにつながることもある。子どもの遊びのようなものから、本格的なものまで、陶芸を通して縄文土器に興味を持つ人も確かにいる。(年齢層:10〜60代 男女比:男5:女5)

他にも流入ルートはある。

例えば井浦新さんや片桐仁さん、藤岡みなみさんのような俳優・タレントを推す人はやはり縄文ファンにならざるを得ないだろう。例えば仕事で関わっているうちに縄文ファンになる人もいるだろう。ラジオからふと流れてきた「狩から稲作へ」を聞いて目覚める人もいる。たまたま目にした雑貨屋で縄文デザインのシールか何かを見つけたり、長野県を旅行中に食べたご飯の名前に「縄文」とついていたり、埴輪と間違えて土偶を調べてしまったり。どこでどうやって縄文ファンになるかは人それぞれだと言ってもいい。

とにかく何が言いたいかといえば、どうやって縄文ファンになったって、僕たちは縄文ファンだ!ということです。みんなでNHKに次の大河は「縄文」で、とねじ込みに行きましょう!

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