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ミニスカートを履くのは誰のため

「どうしてスカート履かないの?
もったいないよ〜っ」

「恐がってるくせに
なんでそんなスカート短けーの?
男に媚び売るために履いてんだろ?
スカートなんかさー」

「女使って男釣って儲けてんだから
恨み買われて当然だろ
嫌なら最初からアイドルなんて
やるなっつーの!」


どこかで聞いたことのある言葉たち。
そして、聞くたびに心を静かに刺してきた言葉たち。

これは全部、『さよならミニスカート』という漫画に出てくる台詞です。

さっき、この漫画の第一巻を買って読んだの。話題作だったこと、元々作者である牧野あおいさんの作品が好みだったこと、そしてなにより、試し読みをした時の衝撃が忘れられずに購入に至りました。

読んでいて、いろんな意味で背筋がゾクっとした。衝撃的だったし、伝えなくちゃと思った。
だから、こうしてnoteに書くことにしたの。
これは少女漫画だけど、確実に少女だけのための漫画じゃない。読んでほしいの、今は大人の女性になったかつての少女たちに、そして全ての男性に。


〖あらすじ 〗

学校で唯一、スカートを履かずスラックスで通学する仁那(にな)が抱える、誰にも言えない秘密とは……
かつてない衝撃のドラマが幕を開ける。

——このまんがに無関心な女子はいても、無関係な女子はいない。


わたし、このキャッチコピーがすごく好きなんです。読んでみて感じた。漫画が伝えようとしていることに無関係な女子、確かにいないよ。


(ここからちょっぴりネタバレ含むから気をつけてね。)

この漫画の肝として、どのお話も必ず纏っているものがあるの。それは"既視感"。

思春期の男の子たちにありがちな、女の子の容姿への点数や順位づけ。(何様だよ)
気に食わない子がいたらすぐに言う「あいつ絶対モテないぜ」「だからモテないんだよ」。
恋人がいない=リアルが充実していない、残念なヤツっていう烙印。
バラエティでは若いアイドルへのセクハラぎりぎり(アウト)の質問やいじり。
女性専用車両を可愛くない女の子が使うのは思い上がりもいいところ、みたいなこという人たち。(は?)

他にも数えきれないほど、いろんな現実が緻密に散りばめられている。

あんまりにもリアルだから、読みながら遠い昔に封印したはずのトラウマたちがまた顔を出してくることもあった。「ああ、わたしにもあったな、こういうこと。」って感じる女の子は本当に多いと思う。

(このあとの展開ちゃんと爽快だから読んでみて)



それからもうひとつ大切なこと。それはこの漫画の中心にある、「アイドル」って何だろう?という問い。

主役の仁那は元人気アイドルの雨宮花恋なんだけど、ある事件をきっかけに芸能界を引退、女の子らしさを削ぎ落としたような格好をして生活しているの。

ある事件で深く傷ついた花恋に、事務所の大人はこんな言葉を放った。

もう、絶望。アイドルの現実を突きつけられた。
アイドルだから、傷ついても仕方ない?それくらいは覚悟のうち?何言われても笑顔でいなくちゃいけないの?悪態ついたらダメ?恋しちゃダメ?

思い出しちゃったんだ、川栄李奈ちゃんのこと、まゆゆのこと、それから今までに見てきたいろんなアイドルのこと。プロのアイドルって何?アイドルは人間じゃない?いろんなことが頭を巡った。

漫画の中では、更にアイドルに憧れてアイドルを目指した頃の仁那の姿も描かれていて、もうとんでもなく苦しくなった。わたしだってアイドルのいる、あの世界の煌めきにどれだけ勇気づけられてきたか分からない。

アイドルファンのわたしの周りには、同じようにアイドル好きな友だちが多いんだけど、そういう子は絶対にこの漫画を読んでほしい。そして感じたことをわたしに教えてほしいです。一緒に語ろう。



最後に、仁那と対照的な存在として描かれている学校のアイドル・未玖(みく)ちゃんについても触れておきたいな。

未玖ちゃんは典型的な色白細身、ふんわり可愛い、男子高校生の理想女子って感じで、本人もそれを理解して武器にしている。男の子の下ネタは笑って流して、いつだって優しくして、それが未玖ちゃんなりの処世術。だから、仁那から向けられた「本当にそれでいいの……?」っていう言葉は、未玖にとってはきっとすごく痛くて分かりきっていることで、イラつくだろうなって。推測ですけど。笑
これから話が展開していく中で、未玖ちゃんのバックボーン的なものも描かれていくんじゃないかと思う。そうであってほしい。




ここからは個人的な話なんだけど、

実は最近職場の男の子たちとやりとりする中で、イヤな思いをすることが重なってメンタルずたぼろ中だったの。そんなタイミングで『さよならミニスカート』読んだらもう、だめで。すごく共感したし、つらくなったし、仁那の言葉に救われた。仁那ね、言ってくれたの。「許さない 絶対に」って。

わたしだって許したくない。わたしを勝手に評価してきた男の子のこと、見ず知らずのわたしに酷いことをしたまだ見つかっていない誰かのこと、身勝手に気持ちをぶつけてきて付き纏った人たちのこと、下心で親しげに話しかけてくる男の子たちのこと。逃げるしかなかったいつかの自分のためにも、許したくない。「なんで、わたし悪いことしてないのに。女じゃなかったら、優しくしなかったら、こんな目に遭わずに済んだのかな。自分の好きなところを去らずに笑っていられたのかな」って何度も何度も思った。

女の子たちの味わってきた苦しみを「解放」するぞっていう決意が、この漫画には込められている。少なくともわたしはそう感じた。そして、その決意にはこれまでの悲しみや苦しみや諦めや痛みが根を張っているから、ものすごく強いの。強い決意で、圧倒されるほどのメッセージ力をぶつけてきてくれる『さよならスカート』を読んでください。


おしまい


#さよならミニスカート

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