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広報担当の方、"ボイラープレート"、つくってますか?《ある一部上場企業広報の傲慢な思い上がり》


上司に依頼され作成したグローバルのレピュテーション・マネージメント


私はNIKE Japanと、(IBMのパソコン部門が売却された直後の)Lenovo Japanの初代PRマネージャーを務めました。
そこでの数々の経験はまた別途と思うのですが、Lenovoから邦人一部上場企業に転職した時は、ブランド戦略室への転職でした。ある外資のゴルフメーカーのカントリーPRマネージャーの社長面接まで進んでいたのですが、Lenovoでのたった10か月が社長交代や危機管理広報の連続で、広報業務に少し辟易していたので、別の業務をしたくなっていたからです。

ブランド戦略室長は、経営戦略部長と広報・IR室長も兼任するたいへん優秀な方でした。その方が、ある日、
「広報・IRでのグローバルのレピュテーション・マネージメントの企画を出してと言っているのに何年たっても出てこないので、一度作成してくれない?」
と、私の前職の経験から依頼をされました。
ということで、私は、1週間程度でA4で12ページ程度の企画書を作成し彼に提出しました。それはPR会社との契約パターンや何らかのリスクが生じた際、どのようなレポートラインでそれを危機管理していくかという内容も含んだものでした。室長は内容に満足したようで、それを広報・IR室のマネージャーたちに渡されました。

ところがいっこうに変化がないので、どうでしたか?とあるマネージャーの尋ねたところ、「あんな立派な計画、実施しようがない」といわれてしまいました。私はNIKEでもLenovoでもカントリーPRマネージャーでしたので、リージョン(アジアとかヨーロッパとの地域)やヘッドクォーター(本社)の広報とほぼ毎日やり取りをし、PRとしてはごくごく普通のことを整理して記載しただけだったので、一部上場のグローバル・ブランドのヘッドクォーターの広報マネージャーからそんなことを言われるとは思ってもみなかったのでした。
心外だなと思いながら、もう一つ、「うちのプレスリリースは"ボイラープレート”がないけど、つけたほうが良いのではないですか?」と尋ねたところ、「うちの担当記者は、みんなうちのことを知ってるから必要ないです」と・・・。

「マジかよ!」と思ってしまいました。
というのも、当時私はブランド戦略室で、企業広告やブランド・ガイドライン、あるいはトーン&マナーという企業広告などでどのようなテイストでブランドを訴求していくかといったことを担当していたのですが、何を決めるにしてもものすごく日数がかかる。そしてひどいときは、議論が終わらず、決定もせずにうやむやになり、結局放置されるということに何度も面食らっていました。
企業広告の概念の説明文であっても、気絶するほどのやり取りや文句が出て、日本の会社って本当に効率が悪いなぁと痛感していたのです。
ましてや会社を明確に説明する”ボイラープレート”を作成するのはたいへんなはずで、それが面倒で放置してるのか、本当に担当記者が正確に知っていると思い込んでいるのか、もしそうだとしたら、本当に傲慢だなと思ってしまったのです。


そもそも”ボイラープレート”って何?


下記にリンクを張りましたが、これがいわゆるBoiler Plateらしいです。


私が昔聞いていたのは、お湯を沸かすボイラーの”ふた”ということで、プレスリリースの最後に”添える”ということで、記者の方たちがその企業を簡単に説明する際に引用できるものを添えたという説明です。

念のため、検索すると、海外のサイトで以下のような説明が出てきました。
『語源は?"ボイラープレート "はもともと、お湯を沸かすボイラーの製造に使われる圧延鋼材のことを指していた。広告やシンジケート・コラムなどの準備された文章をホットメタルで組版する際に使われる金属製の印刷版(タイプメタル)が、地方の小さな新聞社に配布されたことから、それになぞらえて「ボイラープレート」と呼ばれるようになりました。』

私が大学を卒業し広告会社に勤務していた時には、雑誌広告は写植で打たれた版下原稿での入稿が普通でした。一方で新聞などは確か活版でフィルム入稿をしていました。
でもこのボイラープレートはもっと昔の、今では古い名刺印刷をしている印刷所あたりがまだ使用している活版印刷ような時代の産物だったようですね。
以下のリンクの写真を掲載しています。詳しい説明も出ていますので、参考資料としてリンクを張っておきます。
https://whynameitthat.blogspot.com/2013/10/boiler-plate.html


では、”ボイラープレート”ってなぜ必要?



ということで、私が14年前に作成した企画書から、ボイラープレートの必要性について論じた文章をコピペで紹介します。

『プレスリリースは、コーポレートの発表と製品発表ではフォーマットも異なるが、会社の概要紹介となるボイラープレート(boilerplate)を準備し、コーポレートのみならずプロダクツのプレスリリースの末尾にもそれを付けることを推奨する。特に事業領域等がまだ理解されていない現地法人では、メディアにとっても重要な情報となりうる。
下記は世界で有名なスポーツ会社のボイラープレートである。
この文章を読み、もし知らなかった情報があるとすれば、ボイラープレートは有効な情報提供ツールだと判断できるはずだ。
(英文は決算報告のプレスリリースより引用。日本語訳は自分が実施)
About NIKE, Inc.
NIKE, Inc. based near Beaverton, Oregon, is the world's leading designer, marketer and distributor of authentic athletic footwear, apparel, equipment and accessories for a wide variety of sports and fitness activities. Wholly owned Nike subsidiaries include Converse Inc., which designs, markets and distributes athletic footwear, apparel and accessories; Cole Haan, which designs, markets and distributes luxury shoes, handbags, accessories and coats; Umbro Ltd., a leading United Kingdom-based global football (soccer) brand; and Hurley International LLC, which designs, markets and distributes action sports and youth lifestyle footwear, apparel and accessories. For more information, visit www.nikebiz.com.

ナイキについて
ナイキはオレゴン州ビーバートン郊外に本社を置き、広範囲にわたるスポーツとフィットネスの高性能シューズやアパレル、スポーツ関連用具やアクセサリーを開発・製造し販売する世界をリードするスポーツ&フィットネス・カンパニーです。完全子会社にはスポーツシューズやアパレル、アクセサリーを製造販売するコンバース(Converse)、高級シューズ、バッグ、アクセサリー、コートを製造販売するコール ハーン(Cole Haan)、英国に本社を置くグローバルなサッカーブランドであるウンブロ(Umbro)、アクションスポーツや若者向けのライフスタイル・シューズとアパレル、アクセサリーを製造販売するハーレー インターナショナル(Hurley International)があります。より詳しい情報は、www.nikebiz.com.をご覧ください。』

いかがでしょう?かなりイヤミが入っていますね(苦笑)。
この一部上場企業、その後、グローバル化し、ドイツ人の広報マネージャーになった頃にはボイラープレートがしっかり添えられるようになりました(笑)。

もし、あなたが広報を務める会社でボイラープレートがないのならば、ぜひ作ってみてください。案外難しいですよ!

今回も最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。


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