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【詩】約束は果たせずに



星屑を集めたら
君に届けに行こうと思う




星のない夜空を見上げて
僕はただただ立ちすくむ




いつのまにか
遠くまで来たらしかった




空っぽの瓶には
虚しさだけが詰まっていた




星空を、また見に行こうねと、少女は言った。
無邪気な声音は残響となり、
僕だけがまだ、少年のままだった。




理想を追いかけたかった。
ブレない芯などなかったのに。




小さな世界を飛び出したかった。
大切なものは、変わらないのに。




この気持ちが少年のままだから、
今でも君との約束を果たしたかった。




丘で一人、願いを込めるには、
星の一つさえ見つけるのは困難だった。




君は今でも待ってくれているだろうか


街灯の下、
オレンジ色に染められる雪を眺めながら
朝靄の中、
自販機の横にかがんで、吐く息を見つめながら




ただ年月だけを費やした
気持ちだけを残した僕にあるのは
伝えそびれた言葉たち




少し君を忘れて
出来ることが増えて
自負するものができたなら
君に差し出せる手を持てる気でいたんだ




空は青いままで、

日は昇没を繰り返すばかりで、

星屑の一つも見つけられなかったけれど、

君のことを好きなままの自分で、

こんな遠くまで歩いてきた。

僕は僕のままだった。



そろそろ戻ろうと思うよ。
君はなんて言うかな。




今更帰ってきて、何のつもり?
こんな僕を笑ってくれるだろうか
他の誰もしてくれなかった
遠慮のない軽蔑を
また僕にくれるだろうか




僕がダメなことをしたら
誰よりも許さなかった君は
今でも僕のことを
覚えているだろうか




そろそろ戻ろうと思うよ。
まだ伝えていないままなんだ。




星には手が届かないことなんて、
考えなくてもわかることなのに、
幼い頃の約束を果たしたかったんだ。




また会えるだろうか。
会えたらどうやって話そうか。




とりあえず、
このままもう一生会えないのは
どうしても我慢がいかなくて、




約束を果たせなくても
君のことをこのまま
投げっぱなしにはしたくはなくて、




随分と時が経った今でも、
星空をまた見に行きたいと、
伝えるために。




空っぽの瓶には、
君への言の葉が詰まっていた。


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