読書記録「ヒポクラテスの誓い/中山七里」

映画化した「護られなかった者たちへ」などで
有名な中山七里先生による法医学ミステリー小説。
法医学では、亡くなった方を解剖することで、
その死因をはっきりさせる。

なぜ生きている人のことだけじゃなく、
亡くなった人の死因を追求することが、
大事なんだろう。
主人公と同じ気持ちで、法医学の意義を知っていく。
研修医である主人公・真が法医学室で研修を行うことになる。

法医学とは? 
法医学はなぜ必要?
法医学初心者にも分かりやすいし、ミステリーとしても面白い。
本当に交通事故なのか? 
本当に風邪だったのか?
そして、真の師となる光崎先生は、
既往歴のある患者の遺体は必ず解剖しろと言う。
その目的とは。という法医学ミステリー。

最近、法医学を題材に扱った作品が増えた気がする。
私はドラマ「アンナチュラル」で法医学とはなんぞやを学んだ。
『死後にしか分からない真実』が、もうどうにもならないから辛かったり、でも真実によって安堵したり…と感情をかき乱される。

本作は連作短編集なので、事件~謎解きまでサクサク読めます。
そして、執刀シーンのダイナミックさが凄まじい。
あくまで淡々と書かれているが、顔をしかめたくなる。
私は、実際の解剖には立ち会えないだろうな…と思うレベル。

1番印象に残った短編は、
レース中に亡くなったボートレーサーの解剖。
遺される者への気持ち、遺す者の気持ち。
忘れられない一編だった。

また、本作の「解説」で衝撃を受ける部分があったので、書き残しておく。

文庫の嬉しいところのひとつが「解説」があることだと思う。
作家とは違う目線から、小説の専門的な内容を更に深めたり、作家の性格や作家性について言及されたりしているのが面白い。

この作品の解説で衝撃だったことが、中山七里先生の作家スタイル。

自分が書きたいものではなく、読者が読みたいものをひたすら書く。

そのため、ネタ切れなどないという超エンタメ作家だったこと。
そして、いちばん衝撃を受けたことが、小説のテーマに合わせた取材をわざわざ行わないとのこと。
「小説家なんだから、想像してリアリティを書く」とのこと。

例えば、今作だと法医学ミステリのため、死体の執刀シーンがある。
処女作の「さよならドビュッシー」にはピアノの演奏シーンがある。
「贖罪の奏鳴曲」には裁判で争うシーンがある。

作家デビュー前20年ほどのサラリーマン生活は小説に反映していないそうです。
私は「贖罪の奏鳴曲」が最初に読んだ作品だったので、てっきり作者は法律関係のお仕事の人なのかと思っていた。

ドラマチックに想像させる文章はどんな感じに書いているのだろう……。
キーボードを演奏するように、情熱的に叩くのか、それとも至って冷静なのかな。

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