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読書記録「星モグラサンジの伝説」

初めて、友達と本を交換した。

親しい友人への誕生日プレゼントとして、私はたまに本を贈る。
私の好きな人も私の好きな本を好きになってくれたらいいなあ〜の気持ちで。

会社の後輩でもある友達のMさんと知り合ってから、初めての誕生日だった。
「誕生日プレゼント贈りたいんだけど、本とかどうかな?」と彼女に問うと
「私もいちりさんに誕生日プレゼントを贈りたかったんですよ〜。もし良かったら本を交換しませんか!?」
と、素敵なお誘いを受ける。

今まで本好きの友達がいなかったこともあり、そんな提案を思いついたこともなかった……。

そうして受け取った本が、表題の「星モグラサンジの伝説」だった。

児童文学というものを小学生ぶりに読んだ。
小学生の頃は図書館でたくさん借りて読む身近な存在だったけれど、大人になってからすっかり存在が遠のいていた。
そして知らないタイトル。星モグラ。伝説。ワクワクした。

主人公で物語作家である僕が友達の家を借りる事になった時、庭から呼びかけられる。
声の主はモグラだった。
そのモグラは、伝説のモグラについて本にしてほしいという。
その伝説のモグラ・サンジの一生が綴られる。

文章が優しい。自然やモグラの絵が可愛い。
とても穏やかな気持ちになれる本だった。
じんわり暖かくなるような余韻。

人間と普段会うことない地中に住むモグラに親近感が湧く。
そんな騒音を立てられたら長老たち怒るよね、分かる。でも素晴らしい功績を残したら手のひら返して称えたくなるよね、分かる。

伝説のモグラへの伝言を承った使者たちも親しみが持てる。
相手のペースに付き合って言いたいことが言えなくなっちゃう真面目モグラに、何者かになりたい伝説とか憧れちゃう夢みがちモグラ、無意識に話を盛っちゃうモグラ。
人間にもいるよね。

サンジ自身の「なんや周りがやいやい言うてますけど」感が好き(※サンジは関西弁で話しません)。
伝説のモグラであるサンジ自身はまっすぐで、自分にできることを突き詰めていく。他のモグラを貶めたりするわけでもない。
周りの人が勝手に考えているだけ。
もう帰ってこないかもしれない、と思われているけれど、サンジにとっては帰る場所である子や妻の元へ行く。サンジにとってはそれが当たり前のことだから。
他人の常識とやらに振り回されず、自分のことを信じてちゃんとしなさいってことを、サンジから学ぶ。

読後に気づいたけど、ちょっとした謎が残される。
主人公に語りかけたモグラは何者なのか。モグラは自らをナンジと名乗るが、サンジとの関係は作中で明言していなかった。
そのあたりに言及せずに物語が終わるのも、穏やかな余韻だと思う。

また、「モグラから聞いた話ではミミズ何匹分という表現だったが人間に分かりやすく表現を変えてます」などの丁寧な注釈があり、モグラから聞いた話っぽい!! と細やかな演出に感動した。

モグラってなかなか目にすることがないので、もしかしたら地中でこんなモグラもいるのかも? とワクワクしながら読みました。


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