サムネ

【第77回】絶対ラスボスいる場所にラスボスがいた。(タイ王国旅行記Vol.7)

うへぇ…。起きたくないよぉ。

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ホテルの窓から。こんなホテルに次泊まるのはいつだろう。

気がつけば朝9時になっていた。これまでの旅疲れや昨晩にドライ・マティーニ(35度)なんていうきつい酒を飲んだことが原因だろう。それに加えて、もう二度と5つ星ホテルに泊まることはできないかもしれないという思いが、このベットから出たくない思いを加速させていた。辛い。

一時はアユタヤに行くこともやめようかと思ったけれども、頑張っていくことにした。せっかくなのだから。

それにしても、せっかくいいホテル泊まったのにジムもプールもレストランもなーんにも利用していないのに、もうチェックアウトか…。

落ち着くの大事なんだよね。

身支度と荷造りを終え、チェックアウトするために僕はエレベーターで1階へと向かおうとした。

エレベーターに乗り込みカードキーをかざす。流石にそれなりのホテルだけあってセキュリティは万全だ。

ビー。

え?なんで?

仕組みとしてはカードキーをかざして目的の階を押せばいいはずなのに。

「○▼※△☆▲※◎★●・・!」

やばい。一緒に乗り込んでいた白人男性にもなんか言われているけど完全にパニックだ…。

とりあえず、降りよう。

僕が首を傾げてエレベーターを降りると中から苦笑が聞こえてきた。なんだなんだ。

落ち着いて次のエレベーターを待ち、乗り込んでみると、その理由が判明した。1階に行くにはカードキーは必要ないのだ。

ということは、あの人はたぶん「No need.(必要ない)」って言ってたのか…。こんな簡単な二単語すら聞き取れなかったとは…。

このホテルに来てから英語力に自信が、かなり無くなることばかりだ…。

ロットゥーって意外に快適だよ。

なんとかチェックアウトを終えると、昨日の教訓を活かし少し歩いて適当な場所でバイタクを拾った。チャトゥチャックミニバスステーションという場所へ向かうためだ。ホテルのフロントでタクシーを手配してもよかったのだけれども旅費をケチるためにバイタクを選択。バイタク楽しいし。

チャトゥチャックミニバスステーションに向かったのはロットゥーというハイエースなどのミニバンを改造した相乗りバスに乗って古都アユタヤに向かうためだ。タクシーに乗るよりも経済的で、電車に乗るよりも便利だと思ったので、今回はこの移動手段を使う。なによりいろんな乗り物に乗ってみたいという気持ちもあったのは確かだ。

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バイタクから降りたところ。
快晴、快晴。

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オレンジ色の建物が目印。

ロットゥーは現地人向けの乗り物という位置づけなのかタイ語表記しかなくて焦ったが、アユタヤ行きのチケット売り場だけは多くの外国人が行くのか英語表記が併記されていたので助かった。

このバスターミナルからアユタヤまでは1時間程度。値段も片道70バーツ(当時のレートで約250円)と手頃だ。

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乗り込んでみると車内は清潔に保たれているし、空調も問題なく動いていて快適そのものだった。旅行する上でロットゥーはかなりおすすめの乗り物だと思う。

またもや自転車には乗れず

ロットゥーが止まり、アユタヤに到着した。

バンコクやチェンマイと比べるとだいぶ田舎だ。天気も快晴。日本のジメジメとした暑さとは違ってなんだか心地よい。

アユタヤの観光方法にはいろいろあるけれども、僕はレンタサイクルで観光しようと思っていた。何よりも海外で自転車に乗ってみたい。

さっそくレンタサイクル屋さんを探そうとスマホを眺めていると、一人の女声に話しかけれた。服装を見る限りトゥクトゥクの運転手だ。

最初、僕は断った。客待ちしているような運転手についていったらろくな目に合わないと思ったからである。

ただ、しきりに「マップ!マップ!」というので、ちょっと付いて行ってみることに。確かロットゥー降り場で観光マップをくれる人がいるという情報をちらっとネットで見たことがあったからだ。

けれども、その考えは間違っていた。観光地の一通り紹介を受けたあとに「トゥクトゥクをチャーターして観光しないか」という提案を持ちかけられた。やっぱり、そうだったか。

警戒はするものの、実はアユタヤでトゥクトゥクをチャーターして観光するのも結構一般的な話。アユタヤはかなり遺跡が分散しているので、自転車で回ろうとすると若干体力と時間がいる。

一瞬断ろうと思ったのだけれども、どうやら話を聞くと結構安い。4時間で600バーツ(当時のレートで約2100円)だ。1時間あたり200〜300バーツが相場だとネットで見たのに。そして(2日目の詐欺師集団の提案のように)不自然なほど安いわけでもない。5日目にして結構、疲れを感じていた僕は、その提案を受けることにした。

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アユタヤのトゥクトゥクは独特の形をしている。
女性ドライバーだったからか色合いも可愛い。

この選択は、後に起こった事件を踏まえると正解だったように思う。

エレファントビレッジは行かないほうがいい

トゥクトゥクに乗ってしばらく行くと連れてかれたのは、アユタヤエレファントビレッジという像に乗れる場所だった。

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象さん🐘

せっかくなので、もともとそのつもりはなかったのだけれども、象に乗ってみることに。

「いくらなの?」と運転手に聞くと困った顔で「わからない」と言われた。まあそうか。

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しょうがないので受付らしき場所で聞いてみることにした。

順番待ちをしていると運転手の人がオレンジのシャーベットジュースを買ってきてくれた。おごってくれるらしい。オレンジ系のジュースは実は好きではないのだけれども、ありがたくいただく。

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飲みかけ。暑いので結構嬉しい。

やがて順番が回ってくると料金表を渡された。

60分2000バーツ(当時のレートで約7200円)(象乗り+写真撮影+トラとの2ショット込)。

おいおい!高すぎだろ!

正直、かなりびっくりした。日本で乗ったほうが、まだ安いんじゃないか。ネットでは15分400バーツ(当時のレートで約1400円)くらいと書かれていたのに。

これは後から知ったことだが、アユタヤの象に乗れる場所の有名所には「アユタヤエレファントキャンプ」と「アユタヤエレファントビレッジ」の2つが存在していて「アユタヤエレファントビレッジ」の方は、かなりぼったくってくる評判の悪い方らしい。そして真偽は定かではないけれどもトゥクトゥクドライバーの多くはマージンを受け取っているので、しっかり交渉しないとこちらに連れてこられるのだとか。

しまった…騙された…。そうは言っても、ここまで来たら象に乗りたい。

実はトゥクトゥクをチャーターしたせいで、象に乗るほどの現金が尽きてしまっていたが、ご丁寧に日本円と両替もしてくれるとか。

交渉の末、30分1200バーツ(当時のレートで約4200円)落ち着き、象に乗ることにした。ここまでかなりケチってきて、そこまでお金を使っていないということや、もう一生乗る機会がないかと思うと乗らずには要られなかったのだ。完全に相手の思うつぼである。

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乗り心地はあんまりよくない。

象に乗ったあとも象使いからチップをせびられ200バーツ(当時のレートで約700円)払い、象牙のアクセサリー(たぶん偽物)を300バーツ(当時のレートで約1000円)で売りつけられそうになったりしたけれども、トータルとしては満足できた。

ただかなり高いので、これから行く人は「アユタヤエレファントキャンプ」に行くことをおすすめする。

その後、運転手に「明日、日本に帰るからお金がぜんぜん残ってなくてね…」とこぼしたら象への餌やり体験用のバナナまでおごってくれた。

根は優しい人なんだろうな。ありがとう。

実際に、このあと変なお土産屋とかには連れてかれたりはせずに、淡々とアユタヤに点在する遺跡を回ってくれた。

(あとで友達にこのことを話したら、ジュースとかもチャーター料金にコミコミだったんじゃないかと言われて、確かにと思った。真実は闇の中)

縁起の良い寺で災難に見舞われる。

エレファントビレッジを出ると、僕はワット・ヤイ・チャイ・モンコンというスリランカ方式の寺院を見学した後に、ワット・パナンチューンという中国風の寺院を訪れた。

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ワット・ヤイ・チャイ・モンコン。
天気も良くいい写真が撮れた。

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点在する白い仏像が特徴らしい。

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ワット・パナンチューン。

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アユタヤでは珍しい金ピカの仏像。

かつてこの地に存在したアユタヤ王朝はビルマ(現:ミャンマー)から幾度となく侵攻を受け最後には滅亡に至っているのだけれども、この寺院はそのビルマ軍が行った破壊から奇跡的に逃れた寺院なのだ。そのことからタイの中でも縁起の良い寺院として有名らしい。

縁起の良い寺院で、しっかり卒業をお祈りしておいた。

一通り寺院の中を巡り、チャーターしてあったトゥクトゥクに戻ると運転手がいない。

まあ、別に驚く話じゃない。ここは外国なんだからこういったことは別に当たり前だ。それを、これまでのタイ旅行で痛感していた僕は、適当に寺院の付近をプラプラとすることにした。

振り返ると、これが間違いだった。

寺院の敷地内の人があまりいないような曲がり角で野犬とバッタリ。タイの寺院には、こういう人間に飼われているのかいないのかわからないような犬がたくさんいて「怖いな」と思いつつ横を通り過ぎていたのだけれども、こんなに至近距離に犬が存在したのは初めてだったのである。

思わずびっくりした僕は一歩後ずさってしまった。

それが引き金となったのかワンワン!!と吠えながらこちらに向かってくる。

「やばい…!逃げないと!」

犬に遭遇したら刺激を与えないだとか、逃げると追ってくるとか言うけれども、はっきり言って無理だ。いや、少なくとも僕には無理だった。遠くから、その存在を認識していれば別だけれども、こんないきなりエンカウントして半径5m以内に入られたら、もうどうしようもない。

中途半端なのはダメだ…!逃げるなら全速力で逃げるしかない…!

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別の場所で撮影したタイの野犬。
こんなのに追いかけられたら誰だって逃げる。

まだ僕が小学生だったころおばあちゃんの家にいた飼い犬が捨てられ野生化したタイプの野犬に追いかけ回されたころの経験を思い出して、とにかく逃げる!(そのときのエピソードはこちら。)

駆け出すと野犬は案の定、吠えながら追いかけてきた。

頭の中によぎるのは狂犬病の恐怖。発症したら致死率100%。最後には水を飲むことも恐れ死んでいく。怖い。怖い怖い…。

少し走ると橙色の袈裟を着たお坊さんを一段上がった場所にいるのが目についた。しかも、その場所は開閉式の扉のついた(おそらく)アルミ製の柵がついていて安全そうだったので「Help!(助けて!)」の一言も忘れ駆け込んだ。

急いで振り返ると去っていく犬の後ろ姿が。縄張りを外れたのだろうか。この際そんなのはどうでもいい。とにかく助かった…。

僕が汗をダラダラ流し息を荒げているのと対象的に無反応なお坊さんに一言謝罪をして、僕はその場をあとにした。

日本人町にて思いを馳せる。

犬に追いかけられ涙目で敗走した僕は、トゥクトゥクの運転手と合流し、次に日本人町へと向かった。当初、計画にはなかった場所なのだけれどもエレファントビレッジから距離が近かったので運転手にお願いして行くことにした。チャーターって便利だ。

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日本人町と言っても現在この場所に日本人が住んでいるわけではない。“かつて存在した”町の跡地で現在は記念公園となっている場所だ。江戸時代初期に行われていた朱印船貿易の頃に発展した町らしい。先程も書いたとおりだが当時ビルマからの侵攻を受けていたアユタヤ朝が、戦国時代が終わり平和となった日本で浪人となっていた実戦経験豊富な武士たちを受け入れたらしい。またキリシタンを弾圧していた幕府の手を逃れ、この地に来たものも多くいたようである。

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山田長政像

一時はアユタヤ朝に山田長政という日本人が仕えたりするなど、軍事的政治的に影響力を誇った日本人町だが、御存知の通り江戸幕府が鎖国をするなどしたころには影響力を失い、やがて衰退していったようだ。当時いた日本人は18世紀ごろには、完全にタイ人と同化したと言われている。

アユタヤに日本人町が存在していて山田長政という人物がいたというのは教科書に載っている話だけれども、実際にその場所に訪れるとなるとさすがに胸が高まった。

正直、石碑が点在していてちょっとした展示のある記念館があるくらいなので、あんまり興味がない人は行かなくてもいい場所かもしれない。

でも、はるか昔に日本から遠く離れたこの場所で日本人がいたというロマンを感じたい人、感じられる人はぜひ行ったほうがいい。

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日本人町からチャオプラヤー川を臨む。

ちなみに、入場には外国人価格で50バーツ(当時のレートで約180円)かかる。

絶対ラスボスいる場所にラスボスがいた。

その後、ワット・マハタートというビルマ軍に侵攻され破壊された遺跡を観光。

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有名な仏頭。
長い年月を経て木に埋もれた。

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財宝目的とはいえ敵が信仰していたものを
こんなに徹底的に破壊する執念は恐ろしい。

その後にトゥクトゥクの運転手にワット・プーカオ・トーンという場所に連れてかれた。

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アユタヤの中心部から離れ郊外にそびえ立つ白い巨塔。あまりにも荘厳なのだが、その割に観光客がほとんどおらず雰囲気が素晴らしい。さながらRPGのラストダンジョンのような感じだ。ここには絶対ラスボスがいる。

入場料も無料で、なんと仏塔の上に登ることができ、アユタヤの景色を眺められるのもありがたい。つまるところアユタヤにおける観光の穴場だろう。

ただし、この寺院にも欠点が。この寺院、敷地内に野犬が多すぎるのである。近くの屋台の主人が半ば飼っているようで、かなりの犬がいる。

なんとかその横をビビりながらすり抜けると「絶対ラスボスいるじゃん」と独り言をつぶやき心踊らせながら僕は仏塔を登りきった。そのくらいこの仏塔の持つ雰囲気が素晴らしかったのだ。

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塔の上から。

そしてどうやら僕の予想は嫌な形であたってしまった。

つまるところラスボスはいたのだ。野犬、しかも肌をボロボロにした確実になにかの病気を患った野犬が。

塔の雰囲気とアユタヤの景色を写真を撮りながら味わっていると、その野犬はひょっこりと階段を登ってきたのだ。

まさか犬が階段を登ってくるとは思っていなかった僕は思わぬエンカウントに動揺してしまったのだけれども、流石に前回の経験を活かして逃げるのをやめたのだ。

その野犬も吠えたりしないし、じっとお互いを見つめるにらみ合いが続く。

一歩、僕がカニ歩きで移動すると、一歩僕に近づいてくる。最悪、世界遺産を傷つけかねないことになるけれども仏塔の柵を乗り越えて逃げることも考えたがじっと堪えていると犬の方から去っていった。

その後、その野犬と遭遇と別れを繰り返しながら最後には小走りでトゥクトゥクに逃げ帰ることになってしまった。犬怖い。

トゥクトゥクの運転手に僕が犬をビビってることを「そんなに怖がらなくていいのに」といった感じで笑われた。

「日本にはペット以外の犬はいないの!」

という僕の心からの叫びは虚しく響き渡るだけだった。

習慣がないのは残念だということ。

最後にワット・ローカヤスターラームで涅槃仏像を見学。

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そして4時間のチャーターの時間は終わり、最初のトゥクトゥクを拾ったロットゥーの乗車口まで戻ることになった。

トゥクトゥクの運転手にお礼を言って分かれる。このとき感謝の気持ちでいっぱいだったのでチップを渡してみようかと思ったのだけれどもロットゥーのチケット売り場の場所を聞いているうちにすっかり忘れてしまった。チップという習慣が僕にないのが悔やまれる。

今夜の宿がドンムアン空港付近のゲストハウスだったので、チケット売り場でダメ元で「ドンムアン空港まで行きたい」と伝えるとアユタヤ行きのロットゥーの道中で下ろしてもらえることになった。ソンテウのときもそうだったけれども柔軟さが便利だ。

お値段は行きと同じで70バーツ(当時のレートで約250円)。安い。

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こうして僕のアユタヤ観光は終わった。

タイにいられるのもあと少し。残りを思う存分楽しむことにする。

最後に

あと1日。年内の完結なるか?

>>前の話はこちら:【第76回】かっこいい大人になったら、また来よう。(タイ王国旅行記Vol.6)

>>次の話はこちら:【第78回】最後の一分一秒まで楽しむ根性。(タイ王国旅行記Vol.8)

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