見出し画像

Sakura shot

桜を納める為に シャッターを切ったはずだったのに。

薄紅色は掠れて。

カメラのレンズでは クッキリ写し出されている桜達が 僕の目には 掠れて見えた。

偶然通りがかっただけの君のせいで。

一方通行な感情。

写真を撮ろうとしただけなのに。

桜の薫りが この胸を撃ち抜いた。

けたたましい銃声に似た産声を上げたまま。

風が吹く。

散り拡がる花びらよりも はためく君の髪をレンズが捉えていた。

気配に気付いた君が 不思議そうに 首を傾げて 振り向いた。

レンズを見つけた君は 緩やかな笑顔を向けて 優しい瞳をした。

逃すことは出来ないと。

指は 押し込まれていた。

力強く。

優しい笑みを納める為。

「サクラ 綺麗でしょ?」

「は…はい。」

さっきまで こっちにモデルのように 笑みを浮かべていたのを忘れたかのように。

「そっちじゃないよ?」

「え?」

戸惑いを。

柔らかな声が。

仄かに薫る 髪の香りが。

慈しみを携えた 笑顔が。

加速させる。

「そっちじゃないって?」

情報過多の脳ミソじゃ こんな言葉しか 浮かばない。

声に成らない。

「鈍感過ぎ。」

カバンに付属された 可愛げなプレートには 桜のデザインが描かれていた。

(H.Sakura…)

心の中で 読み上げる。

全ての香りは 繋がれた。

「私の事だよ?」

リボルバーに装填出来る発数は どうやら6発じゃなくなったらしい。

永久に。

永遠に。



※先日 公開した記事『運命(さだめ)られた最会(さいかい)〜2nd day〜』に登場した 新宿中央公園の桜からインスピレーションを受けて 作成しました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?