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《前編》【セーフティネットの”隙間”を救う。加害者家族支援の世界】”ちがい”を知ろう!ふむふむウェビナー #03

みなさん、こんにちは。
”ちがい”をたのしむ「ふむふむ」です。

今回は2023年4月23日(日)13:00~14:30に開催された『【セーフティネットの”隙間”を救う。加害者家族支援の世界】”ちがい”を知ろう!ふむふむウェビナー#03 』のアーカイブ(文字起こし)の《前編》を掲載します!

インタビュアーは【げんのすけ】、ゲストは【笠谷先生】です。


「加害者家族支援」との出逢い

【げんのすけ】
みなさんこんにちは。
ふむふむ」というチーム名で活動しているげんのすけと申します。
ふむふむは、様々な”ちがい”についてたのしもう!というコンセプトで、”ちがい”とはどういうちがいなのか、何がちがうのか、ということを知るきっかけづくりを提供しています。
文化や仕事、経験といった様々な”ちがい”があります。
ただし、”ちがい”がどうしても楽しめない、「何で僕は/私はみんなとちがうのだろうか?」とか、「あの人/他の人と全然違う…どう接したらいいんだろう?どう関わったらいいのかわからないな…」というように、”ちがい”によってストレスを抱えることもあるかと思うのですが、そういった”ちがい”もポジティブに捉えられるようになればいいなという想いで様々な活動をしております。
ウェビナーはその活動の一環としまして、あまり見聞きしたことがないような経験や職業、活動をされてらっしゃる方をゲストにお迎えして”ちがい”について知っていこうというものです。
 
本日のウェビナーのテーマは、まさにあまり聞いたことがないであろう『加害者家族支援』です。
みなさま、『加害者家族』という言葉をご存知でしょうか?
 
「被害者家族」とか「被害者支援」、「被害者家族支援」という言葉を聞いたことはあるかと思いますが、今回はその逆です。
何らかの罪を犯してしまった『加害者』を家族に持たれている『加害者家族』の方々をサポートしている【特定非営利活動法人スキマサポートセンター】という団体で理事をされていらっしゃる臨床心理士の笠谷光先生を本日のゲストにお呼びしておりますので、いろいろお話を伺っていこうと思います。
 
ということで、早速【笠谷先生】をお呼びしたいと思います。
どうぞよろしくお願いいたします。
 
【笠谷先生】
こんにちは。よろしくお願いいたします。
 
【げんのすけ】
では早速ですが、笠谷先生の自己紹介をお願いします。
 
【笠谷先生】
私は、臨床心理士の資格を持って、【NPO法人スキマサポートセンター】で『加害者家族』の支援を担当しています。
それと並行して、カウンセリングルームもしておりまして、こちらは【大阪中津臨床心理カウンセリング】です。
あとは、臨床心理士会の理事をしたり…まあいろいろと散らかってますけれども(笑)
今日はよろしくお願いします。
 
【げんのすけ】
ありがとうございます。
肩書が多すぎて、名刺一枚には収まらないのではないかというぐらいにいろいろな活動をされているということですね(笑)
ご多忙な中、貴重なお時間をいただき、ありがとうございます。
 
早速ですが、臨床心理士やカウンセラーとして活動されていく中で、今回テーマになっている『加害者家族支援』をどういうタイミングで始めようと思われたのですか?
 
【笠谷先生】
きっかけは、弊社の代表の佐藤が私の大学の同級生で、大学院を卒業してから数年後に、「こういう活動を一緒にしてみないか?」と誘われたのがきっかけで一緒にやり始めたので、実はそれまでは『加害者家族』とか加害者の支援は、臨床心理士の世界ではちょっとマイナーな分野なので、もう全然イメージせずに始めたというのが実際のところです。
 
【げんのすけ】
お友だちからのお誘いなのですね。
初めに『加害者家族支援』というお話があった時、「なんで被害者じゃなくて加害者なの?」という疑問はありませんでしたか?
 
【笠谷先生】
被害者支援っていうのは臨床心理士の中でも「トラウマケア」とかありますし、被害者という立場については本を読んだりしてある程度勉強はしていたのですが、正直『加害者家族支援』については理解していなかったのですが、話を聞いて、だいじなものなのだと知りました。
さらに、『加害者家族支援』をしている人が少ないということでやってみたいなと思いました。
 
【げんのすけ】
なるほど。
今回のセミナーをきっかけに『加害者家族支援』という言葉を知った方もいるだろうし、まだまだ知らない方もいらっしゃると思うので、「加害者家族支援は必要なの?」と多くの方が思われるところかなとも思いますが、まず【スキマサポートセンター】はどれぐらい前からスタートされていらっしゃるのですか?
 
【笠谷先生】
2015年からスタートしておりまして、今年で7~8年というところです。
 
【げんのすけ】
約10年なんですね。
この約10年間で、『加害者家族支援』をされている団体は増えていますか?
 
【笠谷先生】
例えば薬物とか、窃盗とか、依存症系の事件の家族支援はあるのですが、『加害者家族支援』という名称で公表しているのが、仙台にある【ワールドオープンハート】という団体で、阿部さんという人が外国から取り入れて支援をしているところがあります。
うちの佐藤がそこに勉強をしに行って、「関西でも立ち上げよう」ということで(日本で)二つめの団体として実施しているところです。
三つめの団体になりそうなところが出てきたりはしているのですが、組織立って行っているところは今のところ少ない状態なので、増えないですね。
 
【げんのすけ】
大きく言うと、法人格という規模感で行ってらっしゃるところは、最初に阿部さんがお作りになった【ワールドオープンハート】と関西でやっていらっしゃる【スキマサポートセンター】の、日本では二つということですね?
 
【笠谷先生】
そうですね。それだけまだ関心がないのかもしれませんね。


相談事例・カウンセラーとしての支援

【げんのすけ】
先ほどおっしゃっていたように、薬物依存とかアルコール依存とか、何か特定のものに対しての本人の支援やその家族の支援をするという団体はあるけれども、個々の事象ではなく、幅広く総合的に受け入れてくれるような相談窓口や団体としてはまだまだ日本では少ないというところですね。
ところで、犯罪の種類はすごく多岐にわたるじゃないですか?
薬物とかアルコールは、使った自分自身に対してダメージを負うというような印象がありますよね。
ただし、暴行とか殺人になると、罪も大きいし、ダメージを与える人の数もどんどん広まってくるので、それを総合的に扱うということはとても特殊な知識もいるのかなと思ってしまいます。
特に最近、特殊詐欺とかも多いじゃないですか?
暴力とか殺人とかレイプとかではなく、例えば特殊詐欺みたいなことでもその『加害者家族』からの問い合わせもありますか?
 
【笠谷先生】
そうですね。
最近はニュースで強盗もよく取り上げられますが、特殊詐欺の相談も時折あります。
例えば、自分の娘が逮捕された、息子が逮捕されたということで親御さんから電話がかかることもあります。
こうなると、どちらかというと心理学の話というよりは法的な話の方がメインになるんですね。
少しお話がそれるかもしれませんが、特殊詐欺の恐いところは、例えば、3~4件の事件を起こしていて、末端の人間2人だけが捕まったとすれば、賠償額が億単位になったとしても、民事で訴えられた時に捕まった2人だけで支払わないといけなくなるんですね。
となると、これはもうほんとうに大変なことになるわけです。
もちろん捕まった本人が悪いので、罪はつぐなわないといけないのですが、賠償することなど、実は家族が知らなかったこととかもあるので、一般論としてそういったことがあるという事を家族にお伝えしたりすることもあります。私は心理士なので、例えば「子どもが捕まった」となったときに、私としては(親の子に対する)心配な気持ちに対するフォロー等、心理面をメインにさせていただいているところです。
 
【げんのすけ】
SNSで発信がしやすくなっていることもあり、個人の情報も含めて、必要以上に情報が拡散されてしまう等、近年、より煩雑になってきたのかなと思うところもあります。
また、本人が犯罪にアクセスする意識がないまま犯罪に巻き込まれるというケースも増えてきているのではないかと素人ながらに勝手に想像しているのですが、おっしゃっていたように、若年層の方が罪を犯してしまう場合も多いかと思うので、【スキマサポートセンター】に相談して来られる方はやっぱり親御さんが多いのですか?
 
【笠谷先生】
そうですね。ただ、親御さんというより、お母さんからのご相談が多いと思います。
以前、私は「ひきこもり」の就労支援をしていたのですが、それもお母さんからの相談が多かったと思いますね。
 
【げんのすけ】
お父さん、祖父母やおじさんおばさんというよりは、やはり一番多いのは母親からの相談ということなのですね。
 
【笠谷先生】
そうですね。
お母さんという立場の方が多いですね。
 
【げんのすけ】
守秘義務等があるので、おっしゃっていただける範囲で構わないのですが、実際に【スキマサポートセンター】では多岐にわたる罪を犯した方々の支援という観点から、何らかの罪を犯してしまった方を家族に持つ『加害者家族』の方が利用されていらっしゃると思うのですが、具体的な相談事例内容で、こういったものが多いというようなものはありますか?
 
【笠谷先生】
多岐にわたるのですが、数カ月前までニュースで流れていたような事件のご家族からお電話をいただくこともあります。
メディアを賑わすような事件や殺人に限らず、交通事故とかでも悲惨な交通事故を起こしたとなればニュースにもなりますし…。
ニュースになるような規模が大きい事件のご相談もありますし、一番お力になりやすいのは、薬物性犯罪・窃盗などの依存症と呼ばれる犯罪は心理の観点からアドバイスや支援につなげていきやすいような事件ですね。
最近多いのは、とりわけ性犯罪のご相談が多いかなと思います。
 
【げんのすけ】
やはり、本当に幅広いのですね。
みなさんがおそらくネットニュース等で一度は目にしたようなことがあるようなレベルのニュースもあれば、報道には至ってないけれど日々起こっているような事件のご対応もされているということなのですが、ちなみにニュース等で取り上げられる際に、例えば個人情報がさらされるとか、新聞等の誌面上には載っていなくても個人の名前がネットで出回りまわったりとか、住所やお勤め先が…とかが実は結構多いように思うのですが、最近特にTikTokとかで悪さをしてしまうというか、悪ふざけのつもりでやってしまったものが民事裁判になったり、煽り運転とかもそうですし、映像がデジタルタトゥーとして残ってしまったりするようなものもあるかと思うのですが、そういう観点で「必要以上に個人情報が出回っちゃって、生活できないんです…どうしたらいいですか?」みたいなご相談も受けられるのですか?
 
【笠谷先生】
そうですね。
場合によっては、地元に住んでいられないというようなパターンもあるんですね。
住所や名前が晒されて…特に田舎になれば余計に「あそこの家の誰々さんが…」とご近所で噂になることもあるので、となると引っ越しをすべきかどうかということや、住所をどうしようかとか、夫が逮捕されて子どもが学校でいじめられるんじゃないかとか、そのために住居や住まいをどうするかというご相談もありますね。
 
【げんのすけ】
例えば弁護士の方やケアワーカーの方が【スキマサポートセンター】にいらっしゃると思うのですが、民事で裁判をどうしようとか、法的な手続きとかいろんな部分で【スキマサポートセンター】に所属していらっしゃるプロの方々がそれぞれ対応やケア、サポートをしてくださると思うのですが、笠谷先生のような心理士という立場の方は事件があった際に、多くは母親から相談があった際、具体的に心理面でどのようにサポートされているのですか?
  
【笠谷先生】
例えば性犯罪を例に出してみますと、最初は緊急支援の対応が多いですね。夫が警察に取り調べられて、いつ帰ってくるか分からない…何日ぐらい警察で事情聴取を受けて、どのくらいで帰ってくるのか、裁判まではどれくらいかかるのかとか、夫がどうなるか分からないから生活をどうしようとか、そういう緊急的な対応は法律やケースワーク的なところが求められますね。
で、その後、奥さんの立場として、「性犯罪で逮捕された夫なんかもう気持ち悪い!」という奥さんもいれば、「子どもがいるのでなんとかやって行かないといけないけれども、それでも腹が立つ」とか、そういった奥さん自身やお子さんの気持ちの面をフォローしていくというのは、法律だけで対応しきれない部分だと思うんですね。
最終的には奥さんが決めることではあるんですけれども、離婚に至るのかもしれないし、子どものために仮面夫婦でも続けていくという選択をする場合もあると思いますが、その時々の奥さんの気持ちが潰れてしまったり子どもが悪影響を受けたりするようなことがある可能性も否定できないので、その時の気持ちを一緒に汲み取ってあげたりとか、フォローしていくのが心理士としての役割なのかなと思っています。
 
【げんのすけ】
やっぱり誰にも話せないというのが多いのではないかなと思うところがありますね。
もしお子さんが罪を犯してしまったとして、ご両親がいらっしゃるのであれば、最初はお母さんだけが知っている状態だとしても、お父さんが子どもの犯罪について知るのも時間の問題でしょうから、パートナーと話や相談をするということは可能だとは思うのですが、夫が罪を犯してしまった場合、子どもに言うのか言わないのかというのも選択をする必要がありますし、言うとしてもどこまでの話を、どこまでの付き合いの人にすればいいのかということもありますし、そもそも、それ自体を相談したいけれども誰に相談したらいいのかわからないということもたくさんあると思うので、なかなか精神的に追い込まれるような状況なのかなと思いますね。
『加害者家族』という立ち位置なので、本当は精神的にも相当追い込まれているけれども、被害者家族ほど親身になって誰も話を聞いてくれないだろうというか、罪悪感を抱くというような心理状態になることもあるのですか?
 
【笠谷先生】
そうですね。
まずは「話せない」というところですね。
おっしゃったように、罪悪感も必ずどこかにあって、それこそ例えば近所で事件を起こした場合に、楽しそうにまた生活している姿を見せられないとか…。
事件から5年、10年経とうが、被害者/加害者の両者がそこに住み続けていたとして、スーパーに行った時や駅で電車を待っている時に家族同士で笑顔を見せて楽しそうにしている様子が見えたら、被害者からすると「何?もう事件のことを忘れたのか?」「反省してないんじゃないか?」という風に思われてしまうのではないかという罪悪感はあるみたいですね。
事件後もずっと想いが残り続けているのは被害者ももちろんそうなのですが、本人はいったんさておき、『加害者家族』はそこをずっと想い続けていらっしゃる方が多いと思います。すっきり忘れて笑うことができる、とはなかなかいかないようです。
 
【げんのすけ】
そうですね…難しいところはあると思いますが、罪を犯した本人がその罪を償うのはもちろんですが、ご家族までが揃って法的に罪を償うというようなペナルティーがあるわけではないけれども、ご自身で何らかのペナルティーを課してしまうという難しい状況に追い込まれているのかなと感じました。
自傷や自殺願望を持ってしまうとか、そういった精神的な病気にまで発展するようなケースもありますか?
 
【笠谷先生】
そうですね…。
うちの団体の事例ではないのですが、某毒物事件の息子さんもずっといじめられていたりとか、他には弟が罪を犯してしまった事件で、そのお姉さんが結婚を諦めざるを得なかったりとか…。名字から加害者の家族だということが分かってしまうと「何々さんとは結婚してはいけない」と、相手側の両親が反対するケースもありますね。
ニュースに取り上げられるというように、衝撃が大きければ大きいほどそれだけ影響力も大きくなるので、家族が自殺したというケースもありますし、鬱になってしまい仕事に行けなくなったとか、いろいろありますね。
 
【げんのすけ】
少し想像すれば追い詰められるだろうということはわかると思うのですが、どうしても視点としては被害者のことや被害者家族のことを考えて事件を見るし、行動してしまうことがあるので、特に『加害者家族』に対しては「罪を犯した家族なんだから同じように罰せられて当然だろう」みたいな世の中の風潮とかもあって、『加害者家族』がなかなか話せる場が少ないのかなと感じました。
【スキマサポートセンター】によって救われているご家族の方もいらっしゃるのかなと思うのですが、例えば『加害者家族』同士の自助団体というか、そのような仕組みもあるのですか?
 
【笠谷先生】
うちの団体でも実施しているのですが、月1回『家族会』と言って、クローズドで名前も伏せた状態で外に漏れないように『加害者家族』同士で話をし、それを聞くという会を開催しています。
 
【げんのすけ】
『加害者家族』という当事者同士で話を聞き合ったりサポートしたりという場もあればよいですね。
特に今はオンラインでつながることもできるので、そういう機会も多く持てるのですね。
 
【笠谷先生】
実はまだオンラインによる開催はできていないのですが、例えば昨年は遠方の方でも参加できるように横浜とか名古屋、関東・中部で実施しました。
というのは、全国から電話相談が寄せられるので、少し範囲を広げて活動をしています。
 
【げんのすけ】
そうですよね、(『加害者家族支援』をしている団体は)日本にまだ2か所ですもんね。
コアな犯罪の場合は、『加害者家族』の方々もそこ(犯罪の種別)に特化したところにまず相談されるとは思うのですが、例えば自分の家族が犯罪に関わってしまった時に、もう相談できるところがないという場合には、こういう総合的な窓口に駆け込むしかないですもんね。
そう思えばまだまだ数が少ないですよね…。
 
【笠谷先生】
そうですね。
結局そうして(『加害者家族』が)孤立してしまうという状況が発生してしまうので…。
 
【げんのすけ】
もう少し笠谷先生ご自身の活動にフォーカスを当てていくと、先ほどお話してくださったように、まずはご家族の方へのメンタル的な部分のサポートが必要になると思うのですが、基本的にはオンラインないしは電話で、あるいは実際にカウンセリングルームに来られて笠谷先生に直接お話を聞いてもらうということですか?
 
【笠谷先生】
そうですね。
来てもらってしんどい気持ちとかの話をしてヒアリングしていくという継続的なお手伝いをすることもあるのですが、ピンポイントで「今後の裁判の流れについて知りたい」というような内容であれば一回で終わることもありますね。
ただ、継続的に話を聞いていく中で、例えば「もう今回で3回めの再犯になるのですが、本人が刑務所から帰ってきたときに家族としてどう対応してよいかわからない」という場合は1回の相談で終わらずに、継続的なご相談やカウンセリングの中で「家族がどういうふうに加害者本人、例えば息子と向き合っていくか」とか、いつも小言ばかりあれこれ怒ってしまうというような家族の関わり方がもしかしたら犯罪の一つの要因として関わっているかもしれないという、先ほどの話とは少し逆説的になるかもしれないのですが、もしかしたら、そこを少し変えることで犯罪の抑止になるかもしれないという対応の方法もあります。
 
【げんのすけ】
なるほど…。
相談自体が寄せられるタイミングは事件が起こった後が基本なのかなと思うのですが、お話ししてくださったように、「実は今回相談は初めてしたのですが、以前にもあって…」みたいな事があるのですね?
 
【笠谷先生】
そうですね。
あとは、犯罪の一歩手前ぐらいで、「やんちゃなことをしている状態がずっと続いていて…」とか、「夜帰って来るのが遅くて…」と思っていたら、大麻をみんなで吸って捕まりました、みたいな話もあります。
そういうケースでは、「ちょっと前から不安なところもあったけれども、今回も結局やってしまいました…」というような相談もあります。
もちろん、「ある日突然!」ということもありますし、なんとなくおかしいと思っていたとか、予兆があったけれども何もできなくて逮捕されてしまったという相談もありますね。
 
【げんのすけ】
今のお話だと、家族として事前に気づきにくかっただけで、潜在的に罪を犯してしまう可能性が結構高いのではないかという印象を受けたというか、みんなが思っているよりももっと誰にでも起こり得るような身近なものなのかもしれないと思いました。
例えば、逮捕されたのは今回が初めてだけれど、「たぶんもっと前からやっているのではないか?」というのは、プロの眼からすると分かるところもあるのですか?
ご家族としては「一瞬の気の迷いだと思うんです」とは言っているけれども、笠谷先生がご覧になれば、「いや、実はもっとやっているのではないか?」というようなこともあるのでしょうか?
 
【笠谷先生】
性犯罪で言うと、盗撮で夫が逮捕されたというときに、逮捕されたのはその日が初めてであっても、もうすでに数件やっていたりするんですよね。
ある日一回だけやってその日に捕まるっていうことではないんですね。
それまでにも不審な行動があったとか、例えば駅でうろうろして物色していたということもありますね。
そういう話を奥さんとしていたら、奥さんの方から「実は帰りが遅くなっていた」とか、例えば奥さんにもあまり会話をせずにすぐ寝てしまうとか、「(夫が)自分の世界に入ってしまっているみたいな感じがしていた」とか。つまり、盗撮をする方に興味がいってしまっているので、奥さんや仕事が疎かになってしまうというような、「なんとなくの変化」が出ている場合はあるのですが、やはり捕まってからやっとわかるというようなところはありますね。
 
【げんのすけ】
よくインターネットとかで被害者のご家族が加害者や『加害者家族』に対してある種のバッシングをするのは仕方がないというか、そういうところはあるのかなと思うのですが、問題なのはただニュースを見ているだけの部外者が加害者を個人的な正義で叩くみたいなこと、例えば「家族だったら気づくでしょ?」「何でもっと手前で止めないのか?」「育て方が悪かったのでは?」みたいな投稿が特にSNSで増えているのかなと思うのですが、やはり家族としても(加害者本人が罪を犯す可能性については)意外と気づきにくいものなのですか?
 
【笠谷先生】
やはり家族としては、夫がコソコソしだしても、まさか盗撮をしているとは思わないですよね。
例えば奥さんは気が強い方で、夫に細かく言うことで夫が生活がつまらなく、犯罪に至ったということがあったとしても、それは要因の一つであり、それが全ての原因とは限らないので、例えば夫がもとからあまり人と上手く接することができなかったとか、自分の世界に入り込んでコソコソとする興味を持ってしまったとか、自身のことも要因の一つであったりするんですね。
だから、ニュースで見聞きしてわかることは一部分であり、わかった気になって、SNSで叩いてみたところで本人の更生にとっては、プラスにもならないよなぁとは思いますね。
 
【げんのすけ】
なるほど…。
依存症的なものもたくさんあると思うのですが、依存しているというのも、ある意味で精神的な何かを抱えているから依存症になるということもあるかと思うので、何か罪を犯してしまった時に初めて精神的にダメージを負っているとか、例えば何か障害を持っているということが家族に知れるところとなるようなケースもあるのですか?
 
【笠谷先生】
ご本人の様子を聞いていくと、「もしかしたら発達障害が背景にあるのかもな…」ということもあります。
もちろん発達障害の人がみんな犯罪をするわけではないのですが、例えば人一倍こだわりを強く持っている部分が盗撮や痴漢という方向性の興味につながってしまったとか、うまくいかない生きづらさのストレスが二次的な原因となって犯罪につながってしまったというケースもあります。
もしかしたら病気や障害が絡んでいるのではないかなというようなケースが確かにありますよね。
ご本人さんのプライドが高ければ、「とりあえず裁判の時にきちんと証言ができるように、病院で診断して治療をしていきましょう」という様に受診へとつなげていくこともありますね。
 
【げんのすけ】
そうですか。
やはり、事が起こってから初めてわかるということもあるのですね。
家族自身も「家族のことだから何でもわかっている」と思って安心してしまう部分があったり、逆に過度に心配することもあったりすると思うのですが、意外と起きた時に初めてわかることもたくさんあるのですね。
『加害者家族』としても「何で止められなかったんだろう?」とか、なんらかの障害やメンタル的なケアが必要な状況に追いやられてしまった結果、罪を犯してしまった時に「それを取り除いてあげれていたらこうはならなかったのかな…」と思う部分もあるでしょうね。
それが何と言うか、今の話だと自己嫌悪という形ですごく強く感じてしまいそうだなあと思いながら聞かせてもらいました。
 
【笠谷先生】
例えば奥さんが、夫が性犯罪を犯したときに、「私の関わり方が悪かったのかな」と思うこともあると思いますが、夫が性犯罪をして奥さんが悩まされるという状態は少し心配で、ある意味で夫のしたことに怒りを覚える奥さんの方がまだ安心できるし、まだエネルギーがあるなというのは感じます。加害者家族自身が本人よりも自責感を強く持ちすぎてしまうこともあります。

【げんのすけ】
やはり、感情が自分の内側に向くと、どうしても「しんどいな」という傾向にあるということですね。



さて!
【笠谷先生】とのウェビナー《前編》いかがでしたでしょうか?
同級生から誘われて”日本で2番め”の『加害者家族支援』活動を始められた笠谷先生。
心理士として加害者の家族の心のケアをはじめ、時にはケースワーク的なはたらきも交えながら、まだまだ日本では発展途上の『加害者家族支援』に取り組まれておられます。
『加害者家族支援』の意義とは?
加害者家族とそれ以外の家族との”ちがい”は?
笠谷先生だからこそ語れる、貴重なお話をまだまだ聞いちゃいます!

気になる続きは《後編》で!またお会いいたしましょう^^

ウェビナーを見てみたい!と思ってくださったそこのアナタ!
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