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#編集後記 - 鼎談レポート: 斎藤幸平、安宅和人、石山アンジュ

本日解説する記事:

地球の危機、もう待ったなし! 斎藤幸平、安宅和人、石山アンジュが本質的な豊かさと経済の両立を「シェア」で実現できるか考えた。


企画:植原正太郎(greenz.jp)

編集・企画:スズキコウタ

執筆:石村研二

アシスタント:greenz.jp編集部インターン

校正:スズキコウタ、廣畑七絵(greenz.jp)

先方確認有無:先方より不要との回答。ただ公開前の原稿送付は行い、一部修正作業はした。

記事製作原資:NPOグリーンズ(※つまり記事広告ではない)


コウタコメント:

僕は情報解禁を睨んだ編集仕事ってあまり受けないんです。それはなぜかというと、いかに早く記事をつくり多くの読者を獲得するかということよりも、咀嚼し熟考したうえで読者にどんな学びや問いを渡せるかを大事にしているから。伝えるだけの編集には興味がないんです。

ファスト・ジャーナリズム、スロー・ジャーナリズムという言葉がありますが、そのふたつで分類する無理を感じつつも、僕はスローの編集者かなと思います。

この案件は石山アンジュさんから、グリーンズの植原正太郎にDMが来たことで実現したイベントレポートなんですが、レポートというのはどちらかというとファスト属性の記事構造になります。

なぜかというと、イベントの様子を読み物にして届けるというのは、競合他社が出てくる。だから、A社よりも早く記事化すれば、いち早く知りたい読者を総取りできる、というわけです。

だから公人の記者会見が速報記事として出るのですが、僕は過去に何度かそういう仕事をしたものの、編集者として質を追求しきれなかった後悔があって、消極的な立場にいます。

一方で。

この斎藤幸平さん、安宅和人さん、石山アンジュさんの3名の鼎談が「一般社団法人シェアリングエコノミー協会」主催の「SHARE SUMMIT2021」で行われると知った植原正太郎は、石山さんからのDMを受けて、

「たまにはスピードの勝負、してみませんか?」

と僕を口説いてきた(笑)

僕は意外と「断れない性格」というか、誰かが自分に期待をしてくれるとわかると単純に喜んじゃうタイプなもので・・・。万全のメンバーさえ準備できれば、やろうということにしました。

石村研二さんは僕が特に信頼しているライターさんで、仕事がはやいだけでなく、ご自身の観察した結果を記事に盛り込むことをしていただける方です。なので、石村さんにお願いできるかどうかは超重要でした。

そして僕は当時大きな授業案件を抱えていた頃。ひとりで編集・プロマネ・校正をやりきる不安があったので、編集デスクの廣畑七絵に協力を依頼し、イベントでの発言をいち早く文字に起こすため、編集部インターンも数名起用することに。

2021年10月5日夕方、3人のトーク開始。ZOOM。1時間で終了。主催者から翌日にアーカイブが提供されることになっていたが、それを待っているのは時間の無駄です。

そこで、そのZOOMに僕は録音用のMacBook Proと、3人のトークを可能な限り生でタイピングするためのiMacを同時接続して参加しました。その僕が生タイピングしたものに肉付けするように、文字起こしを廣畑中心のメンバーで進めてもらうことで、時間短縮を図ったという進行方法です。

その日の深夜には、石村研二さんのもとに文字起こしをした原稿を送付。準備万端で待っていてくれ、10月6日午後には僕と廣畑で原稿編集〜校正〜データ入稿と進行。

そして2021年10月7日朝6時に公開しました。

冒頭で速報を重視すると、書き手の熟考や観察が盛り込めない、質を追求しきれないということを書きましたが、それを解決する手法は、

(1)石村さんに取材現場では、話を聴き、受け取り、考えてもらえる状況を編集者が徹底して準備すること

(2)文字起こしを編集部が引き取ることで、石村さんには記事に盛り込む熟考や観察に向き合ってもらい、解釈部分の執筆がスムーズに動くように準備すること

(3)どこにどの程度の書き手の視座を書いてほしいか、構成案を事前に編集者がライターにオーダーしておくこと。そして取材前に一旦納得解をつくる。ただし、取材や心情変化による構成案の破壊は歓迎とする。

で試みました。まだ成功と胸を張るには早いですが、デビュー戦としては上々だったかなと思います。

この記事を読んでいただくと、四角い囲みが随所に出てきますが、それが石村さんの解釈です。時には、シェアリング・エコノミーの解像度が高くない読者への補足もしてある親切さに、彼の圧倒的なスキルを感じ、僕は感動しました。(このあたり、編集者の校正はほとんど入れていません)

イベントレポートにしては長めですし、そもそも、その様子に没入したい読者を想定する中で、当日の司会をしたわけではないライターの解釈が散りばめられている。

実験性が高く、つまりコケるリスクもあったんですが、冒頭にも書いた通り、僕は伝えるだけの記事をつくる編集者ではないので、ライター・石村研二の解釈と補足と視座は必須だと思っていました。それがないと探究や思索のきっかけとして記事が機能しないんで。

石山さんにも喜んでいただけたようですし、あるビジネス書の編集者がTwitterでこの編集法を評価してくれていたので、僕は満足いく結果を出せたと思っています。日々精進!

P.S. - ちなみにこの記事は取材計画書がきちんと保存されている案件ですが、公開できる範囲でいくつかお見せします。

事前にダミーのタイトル、何で勝負し、どんな読者でターゲティングするかを考えている様子 ->

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こちらもダミー。記事の構成を決める。残ったアイデアもあるけれど、消えていったものもある。「プランは壊すためにある。守るためではない」というのが僕の編集者としての考えです、いつも。

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