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クラウド会計ソフトが普及しても「経理部」がなくならないのはなぜか?

noteを読んでいただきありがとうございます。オンライン中心の生活にもすっかり慣れ、週に一度オフィスに行って仕事をするのが新鮮で嬉しいAerial Partners(エアリアルパートナーズ)の沼澤です。

価値観そのものの変化を伴う大きな転換期となっている2020年現在、多くのシーンで、マニュアルのオペレーションを前提とした経済活動のDX(デジタルトランスフォーメーション)が叫ばれていますが、Aerialチームはその本質を、「ソフトウェアによって、本来人間が行うべき領域の選別を促進することで、社会リソースの最適配分を行う手段」だと考えています。

そして現在Aerialチームでは、仮想通貨交換業者やDappsの提供事業者を中心に、販売所や取引所、ウォレット、カバー取引等の業務管理システムと、会計システムの谷を埋めるゲートウェイの提供を通じて、仕訳伝票や法定帳簿、経営管理情報の作成プロセスの自動化・標準化に取り組んでいます。

今回のnoteでは、Aerialチームが経理や監査のDXに取り組む前提条件を、クラウド会計ソフトを活用した財務報告プロセスの効率化を例に挙げて共有します。


会計ソフトのクラウド化がもたらしたもの

財務報告プロセスの効率化について語る上ではずせないのが、会計ソフトのクラウド化でしょう。2010年代以降急速に広がったクラウド化の波は、マネーフォワードやfreeeのようなユニコーン企業を国内でも誕生させました(※)。

※ 余談ですが、会計ソフトの領域には、Aerialチームの経営戦略を描く上で多分に参考にさせていただいているオービック等の巨人も存在しています。

会計ソフトのクラウド化がもたらした効用は数え切れませんが、パッケージ型の会計ソフトと比べると、①導入や更新時のコストメリット、②納税や登記等の手続電子化の流れに対応しやすいこと、そして最大の特徴として、③APIを経由して(銀行等)他サービスとの連携が容易であることが挙げられます。

特に、APIを経由した他サービスとの連携は、銀行やクレジットカードの取引履歴から仕訳を類推したり、営業債権債務の消込みを類推したりすることで、記帳業務を効率化しました。事実、Aerialチームやその支援先の多くでも、クラウド会計ソフトを活用することにより経理業務の効率化をしています。

一方で、クラウド会計ソフトの導入だけでは「点」での効率化になってしまい、経理担当者が行っている業務フローの自動化は完全には達成できていません。以下では、その理由と、解決するためのアプローチを紹介します。


入出金と企業活動のズレ

上述のとおり、経理担当者の仕事の大部分を占める仕訳の起票業務において、クラウド会計ソフトでは、銀行・クレジットカードの利用履歴(≒ 現金の入出金)に基づいた仕訳の類推を行うことで、収益・費用、資産・負債の認識を効率化しています。

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しかし、企業活動の成果は、現金の入出金とは別のところで生じることが多く、これが経理担当者が減らない最大の理由になっています。

そもそも、財務報告目的の会計の役割は、企業活動の成果を表すことにあります。そして、企業活動は、法務(契約)・研究開発・製造原価管理・販売調達・在庫管理のように機能の束になっており、各機能毎に行われた経済活動が、それぞれ会計数値として認識されていきます。

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例えば、多くのスタートアップにとって身近な、自社開発のソフトウェアを外部販売するケースを例に挙げると、最初に製品化された製品マスターの開発にかかるコストは研究開発費として費用計上されますが、その後のアップデートに係るコストは無形固定資産として、それぞれ現金の入出金と関係のないところで、労務管理や業務委託先管理等で得られるデータから、企業活動の成果が測定されます。

研究開発・製造原価管理は、個別に業務管理システムを活用しているケースもありますが、そのコストの発生の態様は現金の入出金とは必ずしも一致しておらず、更に、会計ソフトに仕訳起票を行う前のラストワンマイルである研究開発費(費用)・ソフトウェア(無形固定資産)への按分計算等については、経理担当者が判断を行い仕訳起票を行っています

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実際の経済活動においては、SaaSの高度化等に伴い、各業務領域における最適な外部プロバイダのシステムを組み合わせて業務フローが構築されることから、今後さらに業務管理システムが複雑化し、それにあわせて業務管理システムと会計ソフトの間に大きな”谷(集計や判断の余地)”が広がっていきます。そして、その”谷”を埋めるのは、経理担当者(或いは経理担当者 + Excelの魔術師)になってしまっているのが現状で、この業務管理システムと会計システムの間に潜む大きな谷の存在が、クラウド会計ソフトが普及しても経理担当者が減らない最大の理由です。

さらに今後、現金の入出金のと会計数値のズレは、来年2021年に強制適用になる『収益認識に関する会計基準(※)』等によりさらに大きくなっていくことが想定され、この、経理担当者が埋めている業務管理システムと会計ソフトの間にある大きな谷をつなぐゲートウェイの提供が必要になります。

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※国際会計基準審議会(IASB)は、米国財務会計基準審議会(FASB)と共同して収益認識基準を開発し、これを元に2014年5月「顧客との契約から生じる収益(IFRS 第 15 号)」を公表しました。国内においても、国際的な会計基準の流れをくんで、収益の認識についてより経済的な実態を考慮したかたちでの収益認識がされることが明示化されます


経理担当者の「業務フローの自動化」がもたらす財務報告プロセスの非競争領域化

Aerialチームは、財務報告プロセスのDXを行っていくことで、財務報告プロセスの非競争領域化を推し進めることができると考えています。

本来、経理担当者を中心とした財務報告プロセスは「企業活動の成果」を記録する機能であるため、(語弊を恐れず言うと)企業の競争力をつかさどっている機能ではないでしょう。

①類似の産業に属する企業、②同一のサプライチェーンに属する企業、そして③グループ会社等、背景の近い企業群については標準化・自動化された財務報告プロセスをシェアードサービス化することで、財務報告プロセスの整備・運用に係るコストを大幅に削減できます。

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事実、仮想通貨交換業という新興のビジネス領域については、Aeiralチームの提供するGtax for Enterpriseというソリューションを活用して、業界のバックオフィス業務(財務報告プロセス・法定帳簿の作成・経営管理情報のレポート)の自動化が進んでおり、一つの標準として業界内で活用されるようになってきました。

他の業界に比して、規制による品質管理の要請が強い仮想通貨交換業においても、純粋に財務報告や法定帳簿の作成、経営管理情報のレポートを業務として行っている経理担当者が一人もいなくなる未来はそう遠くないと感じており、それは、他の業界においても同じようにチャレンジのしがいがある取り組みだと考えています。

加えて、この財務報告プロセス自動化・標準化プロセスは、結果として人の判断の介入を減らすことに他ならず、将来的に外部監査プロセスのDXにもつながってきますが、この部分については、次回以降のnoteで解説することにします。

僕のファーストキャリアでもある監査法人在籍時、監査人という立場で多くのグローバル企業、外資系大企業の日本法人の財務報告プロセスを観察する中で、ときに数十人にもなる経理チームと仕事をする中で、財務報告プロセスのDXに直結するソリューション提供ができないことにフラストレーションを感じていたことを思い出します。

財務報告プロセスのDXに直結するソリューションを提供することは、会計系プロフェッショナルファームと、大手SIerそれぞれが担っている機能、負っているリスクを両方抱え込むことに他なりません。

それでも、誰もが知っている大企業から経理担当者がいなくなり、外部監査プロセスのDXが行われる未来を見たいという一心で、チャレンジを継続していきます。経理のDX・監査のDXに向けたAerialチームの旅路は、まだ始まったばかりです。


【さいごに】Aerialチームに興味を持っていただけた方へ

Aerialチームではエンジニアを中心に採用活動を行っています。まずはお気軽に、zoom等で話しましょう!

また、仮想通貨交換業者様やDapps事業者の他、財務報告プロセスのDX、財務・管理会計の内部統制構築等について課題をお持ちの事業者や、その他ブロックチェーン技術を活用したDXに取り組んでいる事業者の皆さまとの連携も積極的に行いたいと考えておりますので、是非お気軽にコンタクトしてください。

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