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第35回「五人囃子の会」

毎年6月と12月に室町の日本橋亭で開催される会。
談志直門、快楽亭一門、志らく門下の5人で始まった会だが、15年の間に快楽亭門下の移籍、立川談大の夭折、立川吉幸の協会移籍とそれに伴う再前座修行など、色々ありつつも4人の「五人囃子の会」として続いている。

私の金詰りの時期と見事に重なるので行けたり、行けなかったり、行けなかったりだったが、今年はまぁなんとか。

国立演芸場の建て替えが遅れに遅れて先が見えない中、永谷の寄席やイベントスペースも改装やら何やらで整理されるらしく、日本橋亭も先の見えない休業に入る。

「お江戸日本橋亭」休館のお知らせ
お江戸日本橋亭は2024年1月より当面の期間、ビル建て替え工事により休館いたします。
長年にわたりご愛顧を賜り、誠にありがとうございました。

亡くなった芸人さんとの思い出も詰まった場所でもあり、惜しくはあるがまぁ仕方がない。

「道具屋」笑王丸
「お血脈」吉幸
「文違い」左平次
<中入り>
「のめる」小談志
「死神」らく次

開口一番は談笑門下の前座が務めた。
談笑落語の勘所をしっかり掴みつつ、自分の色も出せており、良い。
毎年の能登巡業のマクラから、地噺とは何かという説明に写り、「お血脈」。
淡々とした地噺も、この人が演ると賑やかに。

例によって捉えどころのないマクラから、何食わぬ顔で大根多に入る。
「頑張り次第では文楽(※黒門町)にはなれるかもしれないが、どう頑張っても志ん生にはなれない。」
と考えていたが、「ひょっとするとひょっとするかもしれない」なんてことを思わせる芸。

中入りの後、「二人が長かったので、私は15分で降ります」と、
一と笑い取ってからの「のめる」。
こう言う、毒にも薬にもならない軽い噺が実に良い。
間に挟まって飽く迄軽く、空気を入れ替えてお後に渡す。

圓朝作の、グリム童話の翻案と言われている古典を映画的演出で。
胡散臭い人(この噺ではまがりなりにも神様だが)の胡散臭さに妙味。
荒唐無稽な情景も、トントーンと口調良く運んで幻惑、素に戻らせない。

前半は予想外のみっちり。長めの二席のあと、中入り。
間に挟まって空気を軽くする良いヒザから、トリがみっちりやって終演。

最後に、恒例の抽選会。
立川吉幸の競輪の営業で鍛えた当意即妙の口からでまかせと混ぜっ返し、失礼だが的確なモノマネに笑う。

(2023.12.24  記)


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