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地域福祉について思うこと(2021年時点

高齢化社会と人口減少という大きな社会課題がある現在の地域社会の役割として機能している「地域包括ケアシステム」について、実家のある福島県の取り組みを調べた。厚生労働省の委託による日本総合研究所調査(2014)の具体事例として、白河市の「高齢者サロン『あったかセンター』による介護予防と生きがいづくり」と、楢葉町の「応急仮設住宅での避難生活におけるコミュニティづくり」の2事例がある。本レポートは、それぞれの概要とともに、最後部で自らの考えを述べていきたい。

福島県白河市では、高齢化による介護予防を狙い、市民ボランティアとの協業により高齢者サロン事業「あったかサロン」を推進している。これは、高齢化に伴う要介護認定者数増加などによる介護給付費の抑制を狙ったものでもある。閉じこもりになりがちな高齢者に対して、対象住民の居住に近い地域の集会所などを活用し、月に1〜2回程度の頻度で健康づくりに役立つ講演会や合唱、体操、ものづくり、季節行事などを行いながら参加者が楽しく時を過ごすことができ、かつ健康増進に役立つ取り組みを行なっている。この取り組みは、あくまで市民ボランティアが主体的に行う活動だ。その市民ボランティアは人生経験豊富な高齢者が中心に行なっている。また、経験の少ない住民に対しても高齢者サポーター養成講座を行い、育成にも力を入れている。町内会、自治会、婦人会や民生委員との連携による要支援者の把握と地域包括支援センターへ相談される要支援者への参加推奨を中心に参加者増に成功し、閉じこもり防止に繋げている。
近況であるが、白河市に住む知人へのヒアリングによると、コロナ禍によりサロンへの住民参加の減少が見られているそうだ。ソーシャルディスタンスの確保でサロン運営が行われていることの家族を含めた周知徹底や、インターネットを介した感染リスク予防の新たなサービスの提供づくりなど、今回の危機に留まらず、将来応用できる安心高齢者向けサービスの新たな開発が必要だと考える。更に、老老介護からの脱出と若年層を中心とした雇用創出のためにも、運営に係る市からの補助金の有効活用を行い、保険料負担だけの「肩車型社会」ではなく、若年層参加型の高齢者介護予防への取り組みを積極的に推進すべきであると考える。

もう一方の事例である福島県楢葉町では、東日本震災後の長引く避難生活において、高齢者や障害者などの災害弱者において、生活の大きな環境変化によるストレスや精神的ダメージの緩和とともに、特に高齢者の身体機能低下の予防が課題に対する取り組み事例である。社会的な課題としては、避難者が医療費、介護費用が無償のため、永続的な無償対応は非現実であり、それを回避する目的でもあった。
主な取り組み内容は次の通り。

①虚弱高齢者と子どもから高齢者を中心とした生活支援の拠点整備や支援メニューの整備。
②地域の民生委員、町内会、生活支援相談員や地域包括支援センター等複数組織・人による情報共有・連携、巡回訪問の強化。
③ケア人材の育成や県外ボランティアの援助・及び育成。

それらの取り組みを地域内外のネットワーク構築を行い、ケア会議を中心に実施プランを実施することにより新たな地域包括ケアシステムを整備・強化させ、避難住民の心身機能の回復や自殺・孤独死の防止、高齢者を中心とした体力回復を実現させた。
災害時における福祉サービスの継続の重要性ときめ細かいニーズの把握が大きな成功要因と考えられる。

 地域包括ケアシステムの機能が循環するためには、自助、互助、共助、公助の連携が不可欠だ。近年高まっているセルフメディケイドなどは、自身を守る「自助」であるし、国民や地域住民の得られる権利でもある保険機能を有するのは「共助」である。行政等による生活保護などの社会福祉制度は「公助」であるが、これらについては、多くの人は想像できるものであろう。しかし、「互助」はどうだろう。多くの人が想像しうるもので、実際の行動にできているのは、私自身含めて、どれだけいるだろうか。

進行性難病を持ちながら自立生活を送る方にお話を伺ったことがある。彼女の言葉に、「人は誰もが人の支えがあって生きている。全て自分の判断で人生を決めているという人は存在しない。そして不要な人間など世の中に存在しない。支える人、支えられる人がいるからこそ社会は成り立っているし経済も成り立っている」という言葉をふと思い出した。

地域福祉を学ぶことで、現在の地域包括ケアシステムの構成や課題、そこに至るまでの慈善活動などの歴史背景、そしてこれからの地域共生社会への取り組みに向けて多くを知ることができた。我々は社会を支える一員であることを強く意識し、「自助」しながらも「互助」をどこまで踏み込んで行動できるだろうか。この学びを社会の中で有意義に活かしていきたいと考えている。
(2021年秋)


参考資料

厚生労働省, 地域包括ケアシステムの5つの構成要素と「自助・互助・共助・公助」(平成25年3月 地域包括ケア研究会報告書より),
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/chiiki-houkatsu/dl/link1-3.pdf

鳥越皓之・帯谷博明(2017), よくわかる環境社会学[第2版], ミネルヴァ書房

日本総合研究所, 事例を通じて、我がまちの地域包括ケアを考えよう 「地域包括ケアシステム」事例集成 〜できること探しの素材集〜, 平成25年度老人保険事業推進費等補助金 老人保健健康増進等事業 地方包括ケアシステム事例分析に関する調査研究事業, 平成26年(2014年)3月
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/chiiki-houkatsu/dl/jirei.pdf

堀田力・服部真治(2016), 私たちが描く新地域支援事業の姿-地域で助け合いを広める鍵と方策, 中央法規出版

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