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【short story】ロキソニンと野良猫

来たるワクチン接種に備え、ドラッグストアに解熱剤を買いに行った時のこと。

風邪薬コーナーに「ワクチン副反応の際の解熱剤にはロキソ〜とイブプロフェンが主成分の製品をお使いください」との案内表示が。

どっちが良いのか少しググったら、ロキソ〜の方が医療現場でも使用される成分で効果が高いとの事でそっちを買う事に。ただ、店頭には並んでないため店員さんに訊ねると「薬剤師からでないと買えない」と言われ、専用コーナーに向かった。

僕(30代男性):これありますか?(と、ロキソニンが表示されたスマホ画面を見せる)

薬剤師さん(若い女性):はい。あります。ご利用されるのはどなたですか?

僕(脳内):あ、もしかしてこのシチュエーションだと人に頼まれて買いに来たと思われてるのかな?
僕(本体):あ、自分です。

薬剤師さん:え、あ、自分ですね!

僕(脳内):あれ?今なんか動揺した?分かりやすく狼狽えてるし、言い方が「ご自身」でも「ご自分」でもなく「自分」になっちゃってるw。やっぱ「頭痛、生理痛に」って書かれた商品をこんな輩が使うはずないって思ってたよね?いや、だってロキソ〜を使えって書いてるのそちらさんだよ。なんで僕が恥ずかしい感じになってるん?
僕(本体):そうです。


その後、薬剤師さんは動揺を見せた事を挽回したいのか、ものすごく真剣に注意事項などを僕の眼をじ〜っと見ながら説明してくれた。僕も人の話を聞く時はじ〜っと眼を見る人間なので、お互いかなり見つめ合っていた。

それはまるで、縄張り争いをしている野良猫同士が遭遇して、一歩も譲らず間合いを取っているような緊張感もありつつ、お互いの存在を認め合うような不思議な感覚があった。

そんな、最後まで眼を逸らさなかった自分を、真っ直ぐな客としてあり続けた事を少し誇りに思う。

そして今後、ロキソニンの箱を見る度に、今日の出来事がフラッシュバックされるのだろう。思い出すのは薬剤師さんの凛々しい姿か、はたまた野良猫の遭遇か。そのうち答えが出る事を楽しみにしておこう。

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