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この人は…

 誰にでも、スイッチの入らない日はある。
 認知症の義母はなおさら、反応が薄い日が多い。
 最近は、なかなか言葉が出てこなくて、上手く会話が噛み合わないことがほとんどである。
 今朝の義母も、話しかけても上の空。
エレベーターに乗り合わせた、とんがり帽子を被った5歳くらいの可愛いらしい男の子に対しても無反応。
以前の義母なら、絶対に話しかけていただろうに。
まるで義母の精神だけ、異次元空間にあるようだ。
 エレベーターで一緒になった男の子は、義母が抱いている犬のぬいぐるみを見て、「あ、イヌやー」と言った。
私が、「可愛いやろ?」と言うと、「うん」と男の子は答えて、そのフワフワのぬいぐるみを撫でた。
「動く?」と聞いたので、「スイッチを入れたら動くよ。」と答えた。
 すると、男の子が「この人は?」と車椅子の義母を指差した。
傍にいた、男の子のお母さんが、「こ、こ、こ、この人はおばあちゃん!!」と慌てた様子で答えた。
 私は瞬時にはわからなかったのだが、「この人もスイッチを入れたら動くの?」と聞きたかったのか、と気付いて今、思い出しニヤニヤが止まらないでいる。
 今頃、義母のスイッチが作動して、デイサービスでのレクリエーションに参加できていたらいいな。
 さて、私のスイッチもONにして、片付けをやっちまいましょうか。


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