ムツコ

ムツコ=動物が好きで、そのウンチクを傾けるため、女版ムツゴロウとしてつけられたあだ名。…

ムツコ

ムツコ=動物が好きで、そのウンチクを傾けるため、女版ムツゴロウとしてつけられたあだ名。現在、要介護5 認知症の義母と夫とオカメインコと暮らす。

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以心伝心

身の回りの介助を要する義母は認知症で、一日のうちでも気分が上がったり下がったりする。 ご機嫌がよろしくない時は「イヤッ」「キライッ」とこちらの介助を拒否。 心の中で(ハイハイ、お嬢様~)と言いながら執事になりきる私。 ある日、「銀行に行ってからスーパーで買い物しようね」と車椅子を押して玄関まで出たところで、義母が、 「馬車は来ないの?」心の声を漏らしたつもりはないのに、お嬢様になりきる義母。 というか、これまで一度でも馬車に乗ってお買い物に出かけたことはあるんか~ぃ!?

    • 全部見てたよ

       近頃、認知症の義母はよく眠る。  あまり言葉も発せず、話しかけても返事がない。  デイサービスのない日の午後、このまま家の中でウトウトしてるのも良くないな、と思い、マンションのロビーに出た。  大きなガラス越しに、外の景色を眺めながらジュースを飲んだ。  けれど、数口飲むと、義母は再び眠ってしまった。  家にいても外に出ても同じやったなーと、ちょっとガッカリしながら、でも、義母の主治医は、「身体が楽だから眠れるんだよ。」と仰っていたのを思い出し、眠れることはいいことなんだろ

      • 真心を伝える

         認知症の義母と行ったカフェで、年配の女性から話しかけられた。  「うわぁー、ずいぶん久しぶりですねぇ。お元気そうで良かったー。私はSです。覚えてらっしゃらないかしら?ここでよくお話してたのよ。入院されたことは聞いていたけれど、それ以降お会いしてなかったから、どうされているか案じていたの。あー、会えて嬉しいわぁ。」  義母がまだ認知症症状が軽く、歩行器を利用して自分で動けていた頃の知り合いらしかった。  その後、義母は脳梗塞で入院し、そこから認知症症状が進んで車椅子生活に

        • 存在意義

           認知症の義母がデイサービスから帰ってきた。  同じマンションに住む方も、施設で生活されているお母様に会いに行かれていて、ちょうど帰って来られた。  「もう、私のことなんかわからないのよ。」と少しくたびれたご様子だった。  私は義母の傍にいる経験上、「そんなことないですよ、わかっていても、こちらにわかるような反応ができないだけですよ。」と言った。  「そうかなあ?まあ、いいや、生きていてさえくれたら。ねぇ、おかあさん、生きててね。」と、その方は私の義母の手を取り、涙ぐまれた。

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        以心伝心

          特別な言葉

           認知症の義母がデイサービスから帰ってきた。  でも私は、マンションのお友達とまだお話がしたかったので、ロビーで義母を交えながらお友達と続きの話をした。  お友達は介護経験者で、義母にも優しく話しかけてくれている。  義母もニコニコしている。  けれども、話を終えて自宅へ戻ると、義母の表情は曇っていて、私に「アホ」と言った。  やっばりデイサービス帰りだから疲れていたのだ。 ただ、マンションのお友達はお友達たがら、気を遣ってにこやかに応対していたのか。 ということは、私は義母

          特別な言葉

          この人は…

           誰にでも、スイッチの入らない日はある。  認知症の義母はなおさら、反応が薄い日が多い。  最近は、なかなか言葉が出てこなくて、上手く会話が噛み合わないことがほとんどである。  今朝の義母も、話しかけても上の空。 エレベーターに乗り合わせた、とんがり帽子を被った5歳くらいの可愛いらしい男の子に対しても無反応。 以前の義母なら、絶対に話しかけていただろうに。 まるで義母の精神だけ、異次元空間にあるようだ。  エレベーターで一緒になった男の子は、義母が抱いている犬のぬいぐるみを見

          この人は…

          感情移入

          認知症の義母を乗せた車椅子を押して、スーパーへ行った。  会計を済ませた商品の袋詰めをしていると、生後半年くらいの赤ちゃんが、同じく袋詰めをしているママの隣に置かれたベビーカーの中で泣いている。小さな手をギュッと握って、力一杯泣いている様子は、可愛いらしくて目尻が下がる。  義母は、以前20年ほど産婦人科医院で働いていたこともあるし、赤ちゃんが大好きだ。久しぶりに可愛い赤ちゃんを見たら元気が出るだろうと、私はそっと、ベビーカーが覗ける位置に車椅子を押した。  商品を詰め込み終

          感情移入

          後悔

          春になり、散歩に出た。 認知症の義母が乗る車椅子を押しながら、琵琶湖畔の遊歩道をゆっくり歩く。 心地よい風を浴びて、義母は静かに犬のぬいぐるみを撫でている。 「日向ぼっこですか?」不意に、紳士から声がかかった。 「私の母親は1月に逝ってしまいましてね。施設に入っていたから、コロナのせいでなかなか会えませんでした。私も母を連れ出して、こんな所を散歩させてやりたかったな、と見てて思いました。」とその紳士はお話された。 私は胸が張り裂けそうになった。 どんな状況であっても、後悔はす

          忘れへん

           認知症の症状が進んでしまった人のことを、「家族や知り合いのこともわからない状態」という言い方をしてきた。  けれど、それは間違っている。  家族や知り合いのことがわからないのかどうかは、本人にしかわからない。 わかっていも、他者から見て、わかっているような反応ができないだけなのかもしれない。 「家族や知り合いに会っても、それらしき反応ができなくなった状態」と表現するのが、きっと正しい。  認知症の義母は、頭の中で時代が行ったり来たりしているので、夫(義母の長男)の現在の姿

          忘れへん

          一生分

          同居している認知症の義母が誕生日を迎え、義母のお友達が、お祝いのメールを送ってくださった。  義母は、なかなか言葉が出てこなかったり、言いたいことと違う言葉が出たりするけれど、電話しても構わないか、と尋ねた。 すると、義母よりも若いそのお友達は、「私も言いたい言葉が出てこなくて焦るばかり。おかあさんも私も、弾丸トークするタイプなので、もう一生分を喋り終えたのかもしれないね。」と返答された。 私は、胸のつっかえがストンと落ちた気がした。 お喋りだった義母が喋らなくなって、と

          一生分

          スイカと決意

          同居する認知症の義母の好物はスイカだ。 私はそれを知っている。 義母はもう、自分で食べることができないため、介助して、スイカを一切れずつ食べさせるよりは、ミキサーでガーッと潰して、コップで飲ませるほうが、たくさん早く摂れる。 なにより、スイカは水分補給にも最強だ。 今日の夕食後のデザートもスイカジュースにした。 ちょっと口をつけて、「美味しい」と義母は言い、半分までゴクゴク飲んだ。 「美味しいやろ?まだ半分あるで。全部飲んでや。」と私が言うと、 少しぼんやりした表情の義母

          スイカと決意

          言い負かす

          認知症の義母は、状況が理解できないときや、混乱したとき、「アホ」と言う。 今朝も、‘朝だから着替える’ という行為にピンとこず、軽く混乱していた。 「あんたはアホや。何にもわかってないやないの!」と繰り返し、「仏さんがあんたのことを笑てはるわ!」と言った。 「えっ~!? 仏さん笑かしたん?私、アホでよかったわぁー。」と私はアホの舞を舞ってみた。 私が喜ぶので不安になった義母が、 「ほんなら私はどーなるのー?」と言った。 「大丈夫やで。おかあさんは、こんなアホな人と一緒

          言い負かす

          問題点のずれ

          気が付けば、認知症の義母につけたマスクがずれている。 マスクの形を変えたらずれにくくなるのじゃないかな? デイサービスのお迎えに来てくださった介護士さんに、 「いつもマスクがずれて、鼻が見えてるでしょう?この立体型マスクにしたほうが良いと思うんですよぉ。」とドヤ顔で言った。 すると、「鼻が見えるとかの問題ちゃいますよ。いつもねぇ、指に引っ掛けてうまーく外してクルクル回してはるんですよぉ。」と、すかさず一蹴された。 義母が人差し指に引っ掛けたマスクを、元気に振り回してる姿

          問題点のずれ

          同世代の人

          認知症の義母との会話が成り立たない。 義母「ここをこうして、折ってええか?」 私「うん、えーっと、何を折るの?」 義母「それは…、言われへん。」 私「そうか、ええんとちゃうか? 知らけんど。」 という具合だ。 それが先日、居住しているマンションのロビーで出会った、義母の同世代の女性に 「私な、美容室行ってきてん。」と話しかけられると、 「ええやん。似合ってるやん。」と答えている。 更に、 「お宅はええねぇ。染めたりせんでええやん。キレイな白髪やし。」と言われて 「えぇ、まぁ

          同世代の人

          認知症の義母は上手く力めず、排便に時間がかかる。「もう、早く出てって言うて。」と言うので、「早く出てきてくださーい。お願いしまーす。」と義母のお尻に向かって叫ぶ。 マンガみたいな朝。

          認知症の義母は上手く力めず、排便に時間がかかる。「もう、早く出てって言うて。」と言うので、「早く出てきてくださーい。お願いしまーす。」と義母のお尻に向かって叫ぶ。 マンガみたいな朝。

          遠慮

          このところ、暑かったり涼しかったりで、認知症の義母に着せる、衣服の調整が難しい。 「暑い」や「寒い」は自分で言えるものの、すっかり汗だくになってからだったり、手足が冷えきってしまってから言うので、慌てることがある。 昨晩も、掛け布団をしっかり被ったままで、暑かったのだろう。うっすら汗をかいていた。 それで、寝起きが悪かったのだ。 「起こし方が悪い!」と怒っていた。 「ここで働いている人は何歳くらい?」と聞くので、どうやら今朝は、ショートステイ先の施設と勘違いしている。 い