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映画へGO!「正欲」

(※多少のネタバレあります) 
何を描いた映画かというと、人の「性癖」でした。
それも、SMや同性愛などのような、誰もが多かれ少なかれイメージできるものではなく、恐らくはもっともっと存在率が低そうなもの。

その「性癖」が独特過ぎるがゆえに生まれる出口が無さそうな苦悩、社会との軋轢や生きづらさ、一方で同じトライブの人を発見した時の高揚感だったり、あるいはそこから生まれるピュアな「愛」を描いています。

新垣結衣と礒村勇斗が、冴えない毎日を送りながらその独特の「性癖」を持っている市井の人を演じていますが、そういう人物造形のムードを二人とも上手く表現しているので、スッと映画世界に入って行けました。

映画の中盤に、この二人のベッドシーンがあるのですが、これは見どころがあって、ある意味映画史に残るのではないかと思えるONE &ONLYな描き方で、私は好きでした。
人とココロを通じ合わせることがうまくできなかった二人の、やけに甘酸っぱく、観ているこちらが照れてしまうレベルの印象的なシーンです。

水が映画全体を貫く主題になっており、前半はその音の設計が印象に残りつつ、先の展開を予感させながら、後半になるともっとヴィジュアルでダイレクトに水が訴えかけてくるので、そのミステリータッチのストーリーと相まって、見事な演出的コアとなっていました。
これは監督の手腕なのでしょう。

ラストシーンには、映画としてのメッセージが色濃く込められているのですが、マジョリティ側にいるはずの稲垣吾郎の深い苦悩が浮き彫りになる一方で、むしろスーパーマイノリティ側の新垣結衣と磯村勇斗に、かすかではあるが、でもハッキリした希望を感じさせるエンディングになっています。

マイノリティでもハッピーでいられる世界であって欲しいと思えたので、読後感としては、ポジティブに映画館を後にすることができました。

多様性という言葉は、普段割とカジュアルに使いがちですが、世の中を見る眼や感じ取るセンサーの精度を上げていくと、多様性の度合いって本当に複雑なものであるという大切な事実に気づかされた映画でした。

個人的評価:★★★☆☆
想像と違って、だいぶ独特な映画でした。いい意味で。誰もが生きやすい社会になって欲しいものです。




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