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普段はイベントや空間デザインの仕事をしています。月に2〜3本位、映画館で映画を観るので…

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普段はイベントや空間デザインの仕事をしています。月に2〜3本位、映画館で映画を観るので、備忘録的に感想をまとめることにしました。よろしくお願いします。

最近の記事

映画へGO!「悪は存在しない -Evil Does Not Exist-」

(※ネタバレあります) 全然異なる設定や題材ではあるのですが、観終わった直後には処理し切れない余韻を残し、心がざわつくのは、「ドライブ・マイ・カー」と同様の感覚でした。 これは濱口監督が狙う、観客との距離感なのでしょうか?くせものですね・・。 前段は、過剰なまでにスローなペースで展開される、舞台となる田舎エリアでの生活風景の描写。 それは、淡々と自然と向き合って生きている主人公とその家族や仲間たちの独特の時間感覚を、意図的に観客にも同じテンポで与えているのだ、ということに後

    • 映画へGO!「プリシラ」

      (※多少のネタバレあります) 「ロスト・イン・トランスレーション」好きの自分としては、ちょっと期待値が高すぎて、結果”なんか変な映画だったな・・・”という読後感で映画館を後にしました。 「14歳(!)でエルビスプレスリーと出会って、アッという間に恋に落ち、一緒にファミリーとして暮らし始めながら、ついに結婚をし、子供も産んで、やがて別れが訪れるその瞬間まで」・・を一気通貫で主人公プリシラの視点で描いた映画です。 まずもっての冒頭からの違和感は、プリシラが14歳の段階でお互い

      • 映画へGO!「落下の解剖学」

        (※多少のネタバレあります) カンヌのパルムドール、アカデミー賞の脚本賞などを受賞、かつ法廷モノということで観に行って参りました。(法廷モノ好きなので・・) 確かに深く激しいセリフの応酬は見応え十分であり、その情報量の多さゆえ、観る側のエネルギーを大きく消耗していくレベルです。笑 一方法廷モノとしては、アメリカの裁判(例えば「SUITS」的な)から連想されるような、いわゆる知的ゲームのラリーを繰り返しながら、白と黒をはっきり決着させていくようなスカッとした展開ではありませ

        • 映画へGO!「コットンテール」

          (※多少のネタバレあります) イギリスと日本の合作。監督&脚本がイギリス人、キャストがほぼ日本人というところになんとなく惹かれつつ、予告編映像の風景があまりにムードたっぷりに美しかったので鑑賞してみました。 妻(木村多江)を認知症で失った夫(リリーフランキー)。妻の遺言に導かれ、イギリスのウィンダミア湖に向かう夫と息子(錦戸亮)の間には、積み重なった大きなわだかまりがあり、旅の途中で衝突を繰り返しながら、でもいつかはわかり合えていくのか・・? というのがざっくりストーリーに

        映画へGO!「悪は存在しない -Evil Does Not Exist-」

          映画へGO!「梟 ーフクロウー」

          (※多少のネタバレあります) 不穏なムード一杯の、”そそるビジュアル”に誘われて観に行きました。 結果、終始退屈することなく楽しめたものの、とはいえ今一つココロに残るものがなかったかな・・というのが正直な感想です。 そもそもイメージしていたホラー的な要素はありませんでしたし、かと言って深く掘り下げられたヒューマンドラマでもなければ、サスペンスとしても、わかりやすさの方が先に立って、思ったほどの意外性やハラハラドキドキ感はなかったですかね。 とはいえ、そういうジャンルレス

          映画へGO!「梟 ーフクロウー」

          映画へGO!「コット、はじまりの夏」

          (※多少のネタバレ) 大家族の中でも、静かに孤独な日々を生きる少女コット。両親から追い出されるように親戚の家に預けられるのですが、そこでの毎日がコットにとって、かけがえない経験となっていく。 いろいろあってのエンディングの先、コットがどうなっていくかは、観るものの想像に委ねられるカタチではあるのですが、”はじまりの夏”というタイトルにもあるように、切なくもどこかポジティブな予感に溢れていて、とても素敵な読後感の映画でした。 前評判通りにコット役の少女は、胸がキュンキュンす

          映画へGO!「コット、はじまりの夏」

          映画へGO!「市子」

          (※多少のネタバレあります) 杉咲花演じる、抱えきれないほどに重たく暗い過去を背負った主人公の女性。 本当に普通でささやかな幸せを手に入れられそうになったところで、それもするりと逃げていってしまう。。 彼女が何者であるかを描いたヒューマンドラマなのですが、時間を遡りながら、闇の奥に隠れた事実を少しづつ明らかにしていくミステリーのフレイバーもあり、とても見ごたえのある映画でありました。 まずとても感心したのは、撮影の巧みさでした。 説明がなんとも難しいのですが、映像の切り取り

          映画へGO!「市子」

          映画へGO!「ポトフ 美食家と料理人」

          (※多少のネタバレあります) タイトルからすると、料理を真ん中に置いたハートウォーミングなロマンチックコメディーみたいなありふれた感じが想像されて、遠慮しようかと思ったのですが、監督がトラン・アン・ユンであれば「大丈夫なはず・・」ということで鑑賞。 結果、観て良かった、見逃さなくて良かったと思える作品でした! ちょっとスノッブだけれども、フレッシュなセンスが溢れていて、平凡に陥らないラブロマンス・人生賛歌。ココロ震わされました。 自分自身が料理をよく作る方なので、長回しで

          映画へGO!「ポトフ 美食家と料理人」

          映画へGO!「枯葉」

          (※多少のネタバレあります) あらすじを文章にしてしまうと、こんな感じです。 辛く冴えない毎日を送っている中年男女が、ひょんなところで出会い、距離が近づき、でも一度は離れてしまうが、最後には結ばれていくというミニマルなラブストーリー。 つまりどうってことのない内容のはずなのですが、退屈な映画かというとそういうことでもなく、気づけば静かにスクリーンに引き込まれていくのでした。 その理由のひとつは、画面全体にデザインされ、思わずハッとさせられるカラフルな色彩感覚かもしれません

          映画へGO!「枯葉」

          映画へGO!「PERFECT DAYS」

          (※多少のネタバレあります) ほとんど何も起きない映画と言えばそうですね。 起きた最大の出来事でも、主人公の妹の娘が家出してきて、自分のアパートを訪ねてきたこと。 それでいて、日々起きるささやかな揺らぎや出会いが、観るもののココロを静かに震わせる、とてもエモーショナルな映画だと感じました。 東京・渋谷のトイレ清掃を仕事にしている平山さん(役所広司)は、毎日繰り返されるルーティンの中で淡々と自分の人生を生きています。 決まった時間に起床。台所で歯を磨き、家の前の自販機から缶

          映画へGO!「PERFECT DAYS」

          映画へGO!「正欲」

          (※多少のネタバレあります)  何を描いた映画かというと、人の「性癖」でした。 それも、SMや同性愛などのような、誰もが多かれ少なかれイメージできるものではなく、恐らくはもっともっと存在率が低そうなもの。 その「性癖」が独特過ぎるがゆえに生まれる出口が無さそうな苦悩、社会との軋轢や生きづらさ、一方で同じトライブの人を発見した時の高揚感だったり、あるいはそこから生まれるピュアな「愛」を描いています。 新垣結衣と礒村勇斗が、冴えない毎日を送りながらその独特の「性癖」を持ってい

          映画へGO!「正欲」

          映画へGO!「キリエのうた」

          (※多少のネタバレあります) ただ景色が映し出されているだけで号泣してしまい、涙が止まらなくなる映画体験をしたことが何度かあります。 例えばペドロ・アルモドバルの「All About My Mother」では、列車の旅でトンネルを抜けバルセロナの街に入っていく夜景のシーン。岩井俊二の「Love Letter」では、画面いっぱいに眩しいばかりに真っ白く拡がる雪のシーンとか。 どちらも私の人生のお気に入りムービーです。 私にとって岩井俊二さんは、単なるカメラで切り取られた視覚的

          映画へGO!「キリエのうた」

          映画へGO!「レオン(完全版)」

          (※多少のネタバレあります) FILMARKS主催のリバイバル上映プロジェクトということで、映画館に足を運び、観直してみました。 かつて鑑賞した時より、レオンとマチルダの恋愛的要素がだいぶ強まっている印象なのは、”完全版”だからでしょうか? 2023年今現在の時代観からすると、中年男性と少女との、親娘的感情の範疇を超えたやり取りは少し微妙な感じがしてしまいましたが・・でもやはりストレートな”愛”を描いた映画として、良い作品だと改めて思った次第です。 もちろん展開やストーリ

          映画へGO!「レオン(完全版)」

          映画へGO!「キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン」

          (※多少のネタバレあります) 上映3時間半の大作でしたが、多くの方が書いてある通りで、決してダレることのない、あっという間の圧倒的な映画体験でした。 さすがマーティン・スコセッシ監督。飽きさせないストーリーテリングと巧みな演出により、1920年代アメリカの、石油利権をめぐって先住民と欲深い白人がひしめき合う、マフィア的世界を描いた見事なエンターテイメントに仕上がってましたね。 ただ・・個人的にはもう少しヒューマンドラマ要素の掘り下げを期待していたので、そういう意味では、正

          映画へGO!「キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン」

          映画へGO!「愛にイナズマ」

          (※多少のネタバレあります) 不思議な構造の映画でした。 たくさんのチャプターに分かれていて、かつ前半と後半で舞台が大きく変わっていく中で、いくつかの太い主題が絡み合いながら進んでいく。 「嘘や建前で覆われた社会の歪み」「すべての人にとって、生きることは演ずること」「映画監督はなぜ映画を撮るのか?」「家族の崩壊と再生」「生きづらい社会でも立ち昇ってくる男女間の愛情」・・・などなど。 それがゆえに、全体を通じて現れてくる、突拍子の無いエピソードの数々と相まって、先の読めない

          映画へGO!「愛にイナズマ」

          映画へGO!「BAD LANDS / バッド・ランズ」

          (※多少のネタバレあります) 安藤サクラが決めてくれました。最初から最後まで、いちいち表情・所作、そしてファッションまでがカッコよいので、思わず見入ってしまいます。 こういうグレた感じの役もできるんだ!と芸達者ぶりを改めて確認です。 ディープ大阪・西成を舞台に、特殊詐欺に加担しながら生計を立てている安藤サクラと山田涼介は、訳ありの幼少期を過ごした血のつながっていない兄弟。 そんなギリギリの毎日の中で、ある衝撃的な出来事を通じて生まれた、億単位の金を手にできるかどうかの瀬戸際

          映画へGO!「BAD LANDS / バッド・ランズ」