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感謝しかない

今や認知症の診断において欠かすことのできない「長谷川スケール」を考案した長谷川和夫先生が亡くなられました。

ご自身も認知症を発症し、その経験をもとに書かれたのが、下の本です。

偉大なる発明

私の親も、長谷川先生とほぼ同じ時期に、認知症になりました。

ただ、私は一緒に生活していたわけではないため、まったく気づきませんでした。「どこもおかしなところはない、あるはずがない」と思っていたのですが、病院に行ってこの「長谷川スケール」をしたところ、完璧に認知症だと判明。

この診断法のものすごさを、親を目の前にしてまざまざと見せつけられました。

ただ、長谷川先生も私の親も、それによって人間性までが失われたわけではありません。ちょっと生活はしづらいかもしれませんが、心穏やかにしていれば生活そのものの大幅な減退はありません。

私の親は、「グループホーム」という、認知症の方が集合して生活する施設にいますが、どの方も穏やかです。

つい先日も

実はつい先日、私の家のそばにあるベンチに座っている高齢者がいました(3時間以上)。私は日頃の近所付き合いがほとんどないため、その高齢の方が近所に暮らす方なのかが分からず。

「どこにお住まいですか」→「……」

「お名前は?」→「なんでそんなことを言わなきゃいかんのだ!」

「もしかしたら」、ちょっとピンと来るところはありましたが決めつけてはいけません。なんのヒントも得られず途方に暮れていたら、近所の方が警察に通報してくれて、「迷いびと」で捜索願いが出ていた方だった事が分かりました。

ちょっと悪いことを言ってしまったかなぁと反省しました。ちょっとだけ声を荒らげられましたが危害を加えられるような風貌ではまったくなかったので、もう少し優しい言い方をしたほうが良かったのかもしれません。たぶん自分の家が分からずにどうしていいか分からなかったのだと思います。

共存の世界を

今後も認知症の方は街にどんどん増えます。その方のほとんどは、何かをしようとしても出来ずに「困っている」状態になりやすい気がします。

助け舟を出せるのは健常者である私たちです。

健常者の方は長谷川先生の著書を読んでください。そうすれば、認知症の方の心の中が、少し見えます。

読んだ私は、ただただ、こんな偉大なるものを開発したことに対し、「感謝」しかありません。

これだけすごい診断法、ぜひとも医療や介護の現場だけではなく、もっと広く使われてほしい。たとえば金融機関で銀行員が顧客に対して使ってみてもいいのではないか。認知症だと分かった顧客に対し、大切な金融財産を受け渡ししていいのか、真剣に考えてほしいので。

たとえば、学校でこれを子どもたちに実施してほしい。そして、「出来ない事はつらいことかもしれないが、生活自体が出来なくなるわけではない」ことを教え、共存の道を小さいうちから認知してほしい。今は核家族化が当たり前。だからこそ。

もう「蓋をする」時代ではないので。

そう思います。

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至ってごく普通のサラリーマンのつもりですが少し変わった体験もしています。